「STOP! 我流ドライビングポジション#4」車庫入れ編 正しいドライビングポジションで車庫入れは上手くなるのか?
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車庫入れ、上手にできていますか? 正しいドライビングポジションで車庫入れは上手くなるのか? ここではその因果関係を見ていきます。また、先進の自動車庫入れ「アドバンストパーク」はかなり優れていると言われています。そこからテクニックを学んでみましょう。
監修:三浦健光(レーシングドライバー/レクサス公認インストラクター)
「クルマの運転が上手」と思っている人は、自分自身の運転に問題がある意識を持ったことが少ない人が多いようです。運転が楽しいし、他の人とドラテクを比較したこともないため「自分の運転の問題点」に気づきようがないのです。特にドライビングポジションについては最たるものです。
そして、運転が苦手な人は、運転自体を極力避け、何故苦手なのか気づくことができません。
正しいドライビングポジションをとることは、クルマを思ったように操作ができるようになることの近道であり、運転が上手下手関わらず貴方の運転を変えます。ここでは車庫入れを例にとって、なぜ苦手なのか、そしてどうすれば克服できるのか。良いドライビングポジションはそんなとき、どんな手助けをしてくれるのかを見て行きましょう。
上手いと思っている人も、自分は本当に車庫入れが上手なの? と一歩引いて考えるにもいい機会かもしれません。
ノウハウは必要さらに自分のブレない感覚も大切に
クルマの運転は、多くがノウハウのかたまりといってもいいかもしれません。
では教習所で教えてくれる車庫入れのノウハウとは、どんなものだったでしょうか?
STEP1:後輪の内側タイヤを車庫枠の角に近づけバック
STEP2:角を通過したらステアリングを入れたい方向に思い切り切って、外側ミラーでクルマの後端が外側のクルマに当たらないように確認しながらバック
STEP3:クルマが見えなくなったら、ステアリングをまっすぐに戻しながら枠に合わせる
STEP4:バックして枠内に入れて完了
このノウハウは、非常によくできたやり方で完璧な方法です。この方法がマスターできれば、簡単に車庫入れすることができます。しかしこの中にノウハウではないドライバーとしての「感覚」が必要な部分が、各STEP内にあります。列挙してみましょう。
1 後輪の内側タイヤを車庫枠の角に近づける
2 外側ミラーで後端が外側のクルマに当たらないか確認する
3 ステアリングをまっすぐに戻しながら車体をまっすぐにして枠に合わせる
4 ステアリングを固定し、バックして枠内に入れる
これら4つの項目は、たとえノウハウを知っていても実は簡単にはできない部分です。例えば車体を枠に対してまっすぐにすることも、実際にはまっすぐになっておらず途中で微修正をする方も多く見受けられます。このあたりの「感覚」こそが、運転する人それぞれが「車両感覚」としてマスターしなければならないポイントなのです。
そこで、ここでも鈴木さんが運転して、ドライビングポジションと車庫入れの関係を検証していきます。
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鈴木さんの車庫入れテスト風景。自分なりの感覚で難なく駐車可能。しかし、正しいドライビングポジションの方がやりやすかったとのことでした。
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鈴木さんの車庫入れの様子を室内から見ます。左が自己流のドライビングポジションで、右が修正後のドライビングポジションの様子。自己流ではステアリングを切るのに終始上体が動いてしまっています。
鈴木さんの車庫入れ映像
日常クルマを運転している鈴木さんに、正しいドライビングポジションと自己流で何度か車庫入れをトライしてもらいました。その結果、「正しいドライビングポジションの方がやりやすかった」とのコメントをいただきました。それはなぜでしょうか。
どうして車庫入れが苦手なのか? を考えるときに、2つのポイントがあります。
- ノウハウを体得できていないこと
- 車両感覚が備わっていないこと
車両感覚とは、運転席から自分の車の幅や後ろの長さ、先端の位置、切ったらどれだけ曲がるということの感覚を持っている、ということです。
勘違いしやすいのですが、それらの距離を正確に知っていることではありません。
自分の感覚の中で「ここまでがギリギリ」と割り切って決められるか、ということです。その長さには当然個人差がありますが、それは大きな問題ではありません。
皆さんも、自分の車庫入れの状況を思い出して見てください。一番難しいのは、「ここかな? もうちょっといけるかな?」という、どこまで下がれるか、どこまで前にいけるかの、あやふやな状態の中での限界の見極めです。実は自分の中では正確には分からないので、それを少しずつ詰めているだけにすぎません。クルマがぶつからないのはラッキーでしかなく、たとえ実際には大きな隙間があったとしても、それを探る手だてはないのです。
むしろそんな勘に頼るよりも、余裕を持って「もうここまで」と決めたほうがストレスは少なくなります。
頭が動かない正しいドライビングポジションの真価
車庫入れにも正しいドライビングポジションをおすすめしたい理由は、「ブレない車両感覚を決めるため」です。「ブレない」とは視点が固定されることであり、常に固定された適正な視点から周囲を見渡すことを指します。結果としてステアリングを切るときも、視点は動きません。
視点が低すぎると、駐車場での「もうちょっと、いけるんじゃないか」という曖昧な感覚は増えます。そのため、上体を起こして前を見たり、後ろを見たりを繰り返すしながら車庫入れすることになります。また視点が前すぎると、左右を見るのに大きく首を動かしたりする必要があり、全体を掴みにくい感覚のまま操作することになります。
ステアリングの操作についても、特に駐車場での切り方は誰もが素早くしたい感覚があり、自己流のドライビングポジションではさらに肩が浮きます。固定された駐車枠に対して、視点は常に動いている状態となってしまいます。正しいドライビングポジションだと、ブレない姿勢を常に保てるため、スムーズな車庫入れを実現しやすくなります。
三浦さんはこんな言い方もしています。
「私は、駐車の方程式なんて役に立たないと思っています。大事なことは、自分がどういう操作をして車を動かし、車がどう動いているのか? を把握することです。そのために正しいドライビングポジションが大事なのです。正しいドライビングポジションで運転を重ねて『車の動き』を掌握できるようになれば、ノウハウすらも必要なくなるのです。新しいクルマに乗り換えたとしても、車庫入れの不安もなくなると思います」
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正しいドライビングポジションで車庫入れを体験した鈴木さん。自己流に比べて、とてもやりやすかったとの感想でした。
最新技術は車庫入れを助けてくれる?
クルマの周囲を確認できる車載カメラが搭載されたクルマが増えています。そのカメラによる、自動駐車はカーライフにとって非常に便利なものです。
というのも、自分で決めた車両感覚に対して、大きな気づきを与えてくれます。ここまでと思っていたところに、まだまだ余裕があったということを感じた方は少なくないでしょう。
将来の完全自動化された世界は別として、それまでは、自分の責任で運転する以上、直接目で見るということを大前提にした車庫入れを心がけることは必要です。「まだいける」というよりも「危ないかもしれない」という感覚で運転することは基本となります。
最近では、今回のヤリスクロスなどにも装備(一部グレード)されている、自動駐車の機能を持つクルマが増えています。ヤリスやヤリスクロスに採用されているアドバンストパークは、とてもスムーズで車庫入れが苦手でない筆者でも使ってみたいなと思いました。
もはや、車庫入れの苦手な人はこの装備に頼ってもいいというレベルになっています。そしてもう一つ重要なことは、この機能によって、車庫入れを学ぶというが可能ということです。
自動駐車は、あらかじめ設定する駐車位置の座標に向かってクルマを動かす仕組みなのです。アドバンストパークは、これまでの技術に加えて画像認識と制御技術が進んでいます。また人間とは桁の違う精細センサーによる車両感覚を持ち、さらにはブレーキ制御を併せることでより安全で簡単な車庫入れが可能となっています。
アドバンストパークによる車庫入れ
操作は5つだけ。
1 入れたい駐車スペースの前辺りで止まる
2 自動駐車のボタンを押す
3 モニター映像から止めたい場所を指定する
4 周囲の安全を確認しブレーキを緩める
5 指示に従いギヤを後退か前進に切り変える(繰り返し)
様々な細かい調整は不要で、この間ドライバーは周囲を確認し問題があればブレーキを踏むという作業を行うだけ。
ここから車庫入れに学べることは、いくつかあります。
- クルマと駐車スペースの位置関係に対してステアリングを切る量
- どれだけ前に進み、どのタイミングでどれだけ切り返すのか
- バックミラーの駐車スペースの見え方
こうした機能を日常利用しながらも動きのポイントを見て行くことで、どの時はどれだけ切ったか、ということが体得することができます。
アドバンストパークの作法を、新たな自分のお手本として取り込むことができます。また、自分なりの車両感覚もより洗練させることができます。そんな機能を積極的に利用していただくことを、是非ともおすすめしておきます。
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アドバンストパークを体験した城戸さん。操作の簡単さとスムーズさにびっくり。
城戸さんによるアドバンストパーク体験
ドライビングポジションは安全運転の要です
今回のシリーズで、正しいドライビングポジションの目的は、「確実に止まれること」とお伝えしました。確実に止まるためには、お尻をシートにしっかり押し付けた、正しいドライビングポジションを取らなければならないことはご理解いただけたかと思います。
また、シートから肩が離れないステアリング操作は、視線をぶらしません。また、緊急回避では、レーシングカーのシートでない限り、人の体は大きく動いてしまいます。速やかに正しいドライビングポジションに戻れるのは正しいドライビングポジションです。正しい操作のために正しいドライビングポジションが要になります。
三浦さんは言います。
「今回の企画“STOP! 正しいドライビングポジションであなたの運転は劇的に進化する!”を通じて学んでいただきたいことは『何をどうすればうまく行く』というようなハウツーではありません。感じて、学んで欲しいのは『車にどういう操作をしているのか、そしてどう車が反応しているのかを把握すること』です。つまり「意識を持って車を動かすこと」が結果として安全、安心、快適な運転をつくり出すということなのです。それが『安全意識』につながります。どうしても運転指南的な企画では、ハウツーに寄りがちです。しかし、それでは目指す根幹に辿りつけません。
これを機会に、ぜひとも安全運転の観点から自分のドライビングの弱点を考え、ドライビングポジションにあるのではないかと疑ってみていたければ幸いです。正しいドライビングポジションを得ることで、もっと見えてくる世界というのは、必ずあると確信しています」
監修・アドバイザー三浦健光
NASCAR Euro Series・レーシングドライバー、レクサス公認インストラクター。BMW Driving Experience公認インストラクター、CORNES認定インストラクター など
全米含むNASCAR史上アジア人初の表彰台獲得など現役レーシングドライバーでありながら、自動車メーカーの多様なインストラクション業務を行う。そして、自動車マーケティング会社を経営する実業家でもある。
[ガズー編集部]
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