ドライバーの救世主!鈴鹿サーキットで働く女性レスキュー

サーキットで事故を起こしたドライバー、ライダーを救出するレスキュースタッフ。病院への搬送や応急処置だけでなく、車両に関するアクシデントにもすばやく対応します。今回は、ドライバーの命を守るレスキュースタッフとして、鈴鹿サーキットで日々奮闘する直井彩夏さんにお話を伺いました。

プロフィール
直井 ​彩夏(なおい あやか)

三重県鈴鹿市にあるレジャー施設、鈴鹿サーキットに勤務。大学卒業後に救命救急士の資格(※)を取得し、平成24年に鈴鹿サーキットの運営元である株式会社モビリティランドへ入社。リゾート事業部での勤務を経てモータースポーツ部へ移動し、現在はレスキュースタッフとしてサーキットでの安全管理や負傷者の対応などを行っている。​​

※救命救急士​
病院へ搬送する際に傷病者に対して救急救命処置を施し、​
救命率を向上させることを目的とした国家資格。​
救命救急士国家試験合格者のうち、女性は全体の1割程度。

―現在の仕事内容について教えてください。

鈴鹿サーキット内にあるメディカルセンターで、レスキュースタッフをしています。走行中に負傷した方の病院への搬送や応急処置のほか、故障した車両の撤去やスポーツ走行に来るお客様の受入などを行っています。
普段はコース内のスタート地点付近にいるのですが、レースが開催されるときは医師​や看護師の方と一緒にメディカルセンターで待機し、負傷者の対応に集中しています。

医療設備が整ったメディカルセンター。清潔な空間を保つため、器具の消毒・管理も徹底しています。

―レスキュースタッフになったきっかけはなんですか?

​​もともと運動をするのが好きだったので、大学の体育学部に進学しました。最初は体育教員になろうと思っていましたが、スポーツ医療を学ぶうちに救命の仕事に興味を持って、救命救急士の道に進もうと決めたんです。
病院や消防署ではなくサーキットに就職したのは、幅広い業務を経験できると思ったから。実際、入社1年目はホテルのフロントにいましたし、メディカルセンターの担当になった今でも、車両回収や先導走行といった業務があるので、自分自身にとっても貴重な経験になっていると思います。

現場での対応だけでなく、外部の病院と連絡を取り合うことも大切なお仕事です。

―レース中に出動する頻度はどれくらいですか?

頻度はレースごとに違うのですが、転倒が多い二輪のレースでは1日に10~20件くらいですね。大きなレースだと事故の件数も多くなるので、外部の病院に応援を頼んで20名くらいの医師に待機していただきます。それほど規模が大きくなければ医師と看護師の5名くらいで対応しますが、負傷者が多いときは対応するのが精一杯ですね。

すばやい判断が必要なメディカルセンターでは、スムーズな対応をするために医師や看護師の方々としっかり連携をとっています。

―入社当初と比べて成長できたことは?

実をいうと、入社した頃はモータースポーツやクルマの知識がほとんどなかったんです。現場での実践を重ねながら少しずつ知識をつけて、4年目に入った今ではモータースポーツがとても身近なものになりました。
医療分野は私の専門ですが、サーキットのことに関してはベテランボランティアさんの方が詳しかったりするので、とにかくお客様やまわりの方々に迷惑をかけないように必死でしたね・・・。今は環境にも慣れてきて、自分の仕事に対して見直したい部分も見えてくるようになりました。オイル漏れや白煙などの車両異変に対応したり、特殊車両の免許を取ったりと、自分でできることも増えてきて。事故対応をするときも、どうすればスムーズに救助できるか、どの搬送先が患者さんにとってベストなのかを常に意識して、先のことを考えながら動くようになりました。

現場で働くのは直井さん以外全員男性ですが、プライベートのことや他愛ない話で笑いあえる和やかな雰囲気です。

―女性だからできること、よかったことはありますか。

現場スタッフの中で私だけが女性なので、ちょっと目立つのかもしれないですね。常連のお客様と顔見知りになって、声をかけていただくこともたまにあります。中には“メディカルセンターの常連さん”というくらい頻繁にお怪我をされる方もいるんですけど、「怪我が治ったから次のレースに出てくるよ!」と声をかけていただけたりすると、すごく嬉しくなりますね。

顔見知りのお客様から先導走行の指名を受けることもあるそう。「運転スキルはまだまだですが、練習のチャンスにもなるのでありがたいです」と直井さん。

―休日の過ごし方を教えてください。

最近はよくクルマで旅行に出かけています。目標は47都道府県全制覇!北海道では友達とレンタカーを借りて、交代で運転しながら3日かけて一周しました。かなりの弾丸旅行でしたけど、とにかく一周したい!という気持ちが強くて。(笑)
普段乗っているクルマはホンダのフィット。オレンジのカラーとデザインがお気に入りです。体を動かすことも好きなので、友達と登山に行ったりサーフィンをしたり、冬はスノーボードをしたりもします。デートでも一緒にスポーツやアウトドアを楽しめる人がいいですね。

学生時代はバスケットボールや空手もしていたという直井さん。休日の過ごし方もとってもアクティブ!

―今後の目標を教えてください。

先輩方に比べると、クルマの知識や特殊車両の運転スキルも未熟ですし、お客様にご迷惑をかけてしまうこともあります。
コースアウトや事故などで自走不能になった車両を回収するために、入社してから小型移動式クレーンや玉掛け(※)の技能講習を受けて、免許も取得させていただきました。まだまだ一人前ではないかもしれませんが、今後はそういった機械の操作でも役に立てたらいいなと思っています。
皆様に安心して走行していただけるよう、これからもっと現場を経験して、レスキュースタッフとしてのスキルを磨いていきたいです。

※玉掛け​
クレーンなどのフックに荷物を掛ける作業のこと。
荷物やワイヤーなどを掛ける場合はもちろん、外す場合も玉掛け作業に含まれる。

取材中の凛とした雰囲気や、救急車でコースを走る直井さんの姿には、現場で働く責任感や頼もしさが感じられました。どんな場面にも対応できるレスキュースタッフをめざして、これからも多くのドライバー・ライダーの安全を守っていってほしいですね。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road