愛車との出会いは14歳、20代なのに日産 レパードを愛車にした理由とは?

映画などに登場したクルマ達が大きな人気を集めることは少なくない。1980年代なら「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場し、タイムマシンとして改造されたデロリアン・DMC-12や、「ワイルド・スピード」で主役のポール・ウォーカーが演じるブライアンの愛車であった日産・スカイラインGT-Rなどがあるだろう。

特定の車種ではないが、映画007シリーズでは1964年にボンドカーとしてアストンマーチン・DB5を採用している。以来、数多くの作品でアストンマーチンがボンドカーとして登場したことにより、世界中の人達の憧れの的となっている。

こういった例は数多くあり、エンターテインメントとクルマが切っても切り離せない密接な間柄であることをうかがい知ることができる。クルマは作品を彩る道具に過ぎないのかもしれない。しかし、劇中で重要な役回りを果たし、作品とクルマのイメージが一致してしまうこともある。

これまで、映画やドラマの登場人物に憧憬を抱き、姿形や言動を真似してみたり、同じものを身に着けたりしたという経験がある人もいるのではないのだろうか。そうすることで、作品のワンシーンに自分を重ねることができるのだ。

今回紹介する日産・レパードのオーナーも、そんな時間を自身のクルマとともに過ごしている1人だ。

このレパードのオーナーは27歳の青年。なぜ愛車として昭和63年式のレパードを選んだのか、そこには小学生の頃から抱いてきた憧れがあった。レパードとの出会いは10歳まで遡る。「あぶない刑事シリーズの映画『またまたあぶない刑事』で、タカこと舘ひろしと、ユージこと柴田恭兵が乗っていたゴールドのレパードを見て、そのときから自分もこのクルマに乗るぞと思っていました」と語る。幼少の頃からの夢を叶えたオーナーであるが、実際に所有に至るまでのアクションにもレパードへの熱い想いが感じられる。

「14歳の頃にインターネットでレパードのオフ会が開催されるという情報を知り、近所だったこともあり見に行ってもいいですか?というメールを送りました」。中学生ながらクルマのオフ会に行くという行動力も凄まじいのだが、そこで現在の愛車との出会いも果たしていたのも驚きだ。

「このレパードは所有してまだ8年目なのですが、出会ってからは13年ぐらいになります。中学生のときに運転席に座らせてもらって撮った写真もあるのですが、実はまったく同じ個体なんです」。実際にオーナーがレパードを所有するのは大学1年生のとき。前オーナーが他のレパードに乗り換えることを考えていて、そのタイミングで譲ってもらったのだそうだ。

意外なことに、クルマ好きになったモデルはレパードではないという。「2歳ぐらいのときに父親もクルマ好きであったこともあって、テレビで全盛期のグループAを見ていました。そのときからR32型のスカイライン GT-Rがカッコイイと思っていました。今でも余裕があれば所有したいクルマの1台です」。クルマ好きに多く共通するポイントとして、父親もクルマ好きであったという要素があるが、例に漏れずオーナーもそれに当てはまる。1980年代から1990年代にかけての日産車が好きだというのもこの原体験があるからなのかもしれない。

実際に憧れのレパードを手にしてからはどのような変化があったのだろうか?「元々クルマは好きでしたが、意味もなく運転するということはあまりありませんでした。しかし、レパードを手にしてからは毎週意味もなく横浜へ行くということが増えました。そうすることであぶない刑事の世界に入り込めるんです」。レパードに乗るときはできるだけきちんとした格好で乗ることを心がけていて、ハーフパンツやサンダルで乗ることはしないそうだ。劇中のタカ&ユージのファッションを意識しているだけでなく、イメージを壊さないように配慮していることは間違いなさそうだ。

現在は、あぶない刑事の劇用車と見間違えるほどの装いとなっているこのレパードだが、手に入れた当初はボディカラーも異なっていた。グレードは前期型の中では最上級の3.0アルティマグランドセレクションという希少なグレードで、ボディカラーはパールホワイトのツートンを纏っていた。内装もレッド、外装はエアロパーツを装着し、さらに社外製のホイールを履いており、現在とはまったく異なる姿であったことが想像できる。

現在の姿へ変貌したのは2013年のこと、ゴールドのツートンへオールペンを施した上に、部品取り車から茶色の内装を総移植したのだ。これによって憧れの原点である、あぶない刑事に登場したレパードと同じ装いとなったのだ。細かい話になるが、またまたあぶない刑事に登場したレパードもパールホワイトからゴールドへ塗り替えられた個体なのだそうだ。劇中にエンジンルームを開けるシーンがあり、それが確認できる。自身がレパードに魅了されるキッカケとなった作品と、それほど細部にいたるまで同じ仕様であることはオーナーも誇らしく思っているに違いない。取り付けられているアンテナももちろん、あぶない刑事に登場したレパードと同じものだ。

加えてオーナーの足回りへの拘りも半端ではない。急発進時のリアの沈み込みや、車高を忠実に再現するためにダウンサスを5回も仕様変更し、試行錯誤を重ねてきた。セミトレーリングアーム式サスペンション特有の沈み込み方は、車高調整式に変えてしまうと劇中の雰囲気が再現できないため、車高の調整はバネの変更だけにとどめているという。オーナーによると、あぶない刑事の劇用車では重りを積んで車高を下げていたそうだ。

2016年1月に映画「さらば あぶない刑事」が公開されたこともあり、オーナーが所有する個体が雑誌に取り上げられたり、プラモデルのパッケージになるなど、レパードが大きく注目された年だった。レパードオーナー同士の交流も活発に行われ、13年前にメールでのみやり取りをしたレパードオーナーと偶然対面をするといった驚きの一幕もあったそうだ。

「クルマは乗ってなんぼだと思っているので、このレパードとは肩肘張らずに日常の相棒として接していきたいです。走行距離が増えることも気にしないし、雨であっても気負いせず乗るようなスタイルです。一番心配しているのは部品に関することですが、可能な限り乗っていきたいです。たとえ動かなくなったとしても、ナンバーを切ってでも手元に置いておくと思います」。譲り受けたときは16万キロだった走行距離は、オドメーターが20万キロを超えたところで一周し、さらに距離を刻んでいる。いつになってもオーナーのそばには、レパードの存在があり続けるのだろう。

クルマ好きであり、なおかつあぶない刑事の大ファンであることから生まれた、このクルマと人との関係性は、ファッションやライフスタイルも重要なものとして位置づけられている。単にクルマを劇用車に仕上げるだけではなく、オーナーも当時のタカ&ユージを想起させるファッションを身に纏うことで、初めてあぶない刑事の世界観を表現できるのだ。このようなクルマの楽しみ方もあったのかと実感するとともに、オーナーのクルマやあぶない刑事などに捧げる熱量について、ただただリスペクトしかない。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]