充実のカーライフと人の縁を運ぶ、幸せの黄色いマツダ・ポーターバン (KBAA33型)

一口に「旧車でカーライフ」と言っても、楽しみ方はさまざまだ。

例えば、フルオリジナルを維持しながらコンディションを保ち、コンクールデレガンスにエントリーする。あるいは、現代技術を盛り込んだレストモッドを施し、日常でも気軽に乗れる仕様にするのも楽しい。

今回は、こだわりのモディファイを施し、さまざまなイベントに参加しながら普段の足としても使っているという、アクティブな旧車オーナーを紹介したい。オーナーは現在49歳の男性、愛車は1974年式のマツダ・ポーターバン(以下、ポーターバン)。1968年から1989年まで生産されたマツダ・ポーターのバンタイプだ。排気量は360cc、2サイクルエンジン特有の排気音が愛らしい。特徴的なレモンイエローのボディカラーは、オーナーが塗り替えたものなのだろうか?

「このボディカラーは、前オーナーによるものですね。元の色はブルーかもしれません。何度も塗り替えられているので、ところどころにペパーミントグリーンや赤の塗装が残っているんです。オールペンの資金が貯まったら、きちんと錆もとってあげたいなと思っています」。

オーナーの個体はこれだけのコンディションを保っていながら、実は露天駐車というから驚きだ。ゆくゆくはオールペンを考えながらも「錆も気になるけど、あるならあったで、アジになるかも」と、大らか。そんなオーナーが、クルマ好きになった原点とは?

「旧車には、今までまったく興味がありませんでした。どちらかといえば改造車が好きでしたね。グラチャン仕様全盛期の人間ですから、歴代の愛車は一切、ノーマルで乗っていません」。

てっきりレトロ好きなのかと思い込んでしまっていた。愛車遍歴も多彩で、日産・スカイライン ジャパンを最初の愛車に、日産・ラルゴ、スバル・レガシィ ツーリングワゴン、レオーネ、マツダ・デミオを乗り継ぎ、現在はポーターバンとともに、ダイハツ・ミラジーノとの2台体制だという。

「維持できるならホットロッドも乗ってみたいですし、クルマの年代にはこだわりません。最初に乗ったスカイラインはグラチャン仕様でしたし、ラルゴは以前勤めていた職場の社用車を譲ってもらい、オーディオを中心にモディファイしました。レガシィは当時流行っていたアメリカンなメッキパーツを取り付け、GT(グレード)の足回りを移植していました。デミオは3台乗り継ぎましたね。これは、私の弟がマツダのディーラーマンだったつながりが関係しています。ちなみに、通勤用で所有しているダイハツ・ミラジーノはかなりモディファイしてありますし、これでオフ会にも参加していますよ」。

トレンドや車種に合ったモディファイを楽しみながら、カーライフを送ってきたオーナー。そこで、モディファイの一貫したこだわりがあるのかどうかを尋ねてみた。

「クルマを買ったら必ず車高を低くします。低さは私にとってロマンですから(笑)。でも、エアロパーツは付けません。ボディラインが変わるのは好みではないんです」。

どことなく陽気で、アメリカンなムードを醸し出しているこの個体との出会いを伺った。

「ネットで偶然見つけて、ほぼ即決しました。バンパー・ミラー・後部座席もない。しかも、船舶用のガソリンタンクが車内に放置してあったんです。クルマに詳しい友人に、エンジンの掛かり具合やコンディションをチェックしてもらったところ、すこぶる快調だということが購入の決め手となりました。さっそく同僚たちに手伝ってもらい、ノーマルパーツをかき集めてレストアを開始しました」。

大掛かりなレストアとともに、さまざまなモディファイも施されている。

「スピードメーターと水温計が壊れていたので、とりあえずはタコメーター・水温計・電圧計の追加メーターを取り付けました。ホイールは、リアをツライチに近づけたくて、ショップに頼んで『鉄ちん加工』しています。チャンバーはワンオフですね。前のオーナーによって膨張室が高回転用になっていたのですが、360ccには必要ないと判断し、鉄製の低中速重視の仕様に変更しました。オーディオは、コーラの『当たり缶』を加工して防音処理をしています。シフトロッドはマツダ・シャンテ用です。ローに入れると前のめりになるため、シフトロッドをシャンテ用に移植しています。ステアリングはグラント製のものを装着しています」。

オーナーの愛車はSNSでも映える。特にインスタグラムでは、限定公開ながら世界各国のフォロワー800人以上を抱えている。

「インスタグラムをはじめてから、クルマ関係の仲間が劇的に増えました。海外からもフォローがあるので、翻訳ソフトを駆使してコメントをやりとりしています。海外では360ccという規格は珍しいようですね」。

インスタグラムのフォロワーは、ポーターバン関係に限るのだろうか?

「このポーターバンだけなら数十人の仲間がいますし、もう一台のミラジーノでもコミュニティを運営しているため、特に軽自動車の仲間が多いです。仕事以外はクルマ中心の生活になっていますね。毎年楽しみにしている沖縄旅行も、現地の仲間に会うための1日は、必ず確保するようにしています」。

そんな充実したカーライフを送るオーナー。今後、愛車とどう接していきたいかを伺った。

「本当に動かなくなるまで乗り倒すと思います。もう、ポーターバンは簡単に手放せない存在になっていますね。自分だけのクルマではないということです。同僚の持っていたパーツがたくさん付いていますし、担当メカニックには好きなように弄ってもらっているので、もはや私と彼の愛車のようなものです。ひとまずエンジンとミッションはもう1基ずつ用意してありますし、腕利きのショップとの縁もあるので心強いです」。

最後に、旧車を手に入れたい人、旧車オーナーへ向けた思いを伺った。

「例えば、屋根付きガレージの有無で旧車に乗らないのは、もったいないと思います。我が家はガレージもなく野ざらしですが、錆が出ても旧車ならそれもアジになってしまうものです。大抵はどうにかなるので、あきらめないでほしいなと思っています」。

多くの仲間に囲まれ、ポーターバンとともに充実したカーライフを送るオーナーを羨ましく感じた。そして、オーナーの個体は人の縁を運ぶ、まさに「幸せの黄色いポーターバン」なのかもしれない。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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