イベント会場でも盗難防止のタイヤ&ハンドルロックをするワケとは!? 22才のオーナーがGT-Rを所有する苦労と覚悟
新旧スポーツカーからミニバンや軽自動車まで、自由参加型の駐車場ミーティングということで、さまざまなクルマが集まった『ディーズガレージオータムフェスティバル2021』。
そんななかにあって、盗難防止のタイヤロックをかけ、室内にはハンドルロックも取り付ける徹底防御ぶりのBNR32スカイラインGT-Rを発見!
確かに、クルマ好きのSNSの間では盗難被害にあったオーナーの呼びかけを見ない日はないという悲しい現状もある。
しかし、いくら一般車と比べて高価なスポーツカーが多く集まるイベントだからといって、こんな場所で堂々と盗難事件が発生するわけが…と疑問に感じていたところ、近くにオーナーさんの姿が。
というわけで、愛車を撮影させていただきつつ、なぜイベント会場でもこれほどまでの対策をされているのか? 質問を投げかけてみた。
オーナーのKouheiさん(22才)からは開口一番「本当にこんな場所で盗難されるとは思ってないですよ(笑)」との返答が。
「本当に盗まれるのは、イベントから帰ってからなんです。こういう大勢のクルマが集まるイベントって、盗難する犯人の側にとっては下見をするのに絶好のポイントでもあるんです。帰り道を追いかければ自宅の駐車場の位置まで分かってしまいますからね。そのために、わざとイベント中にもロックをかけて『このクルマとオーナーは盗難対策をいつもやっている(盗む側にとって)面倒くさいクルマだぞ』ということを見せつけているんです」とKouheiさん。
Kouheiさんの場合は、こういった場だけのパフォーマンスではなく、普段スーパーなどで買い物をする際にも、クルマを降りて目を離すタイミングがあるなら必ず盗難対策グッズをつける習慣をつけている。
パンテーラのカーセキュリティシステムも導入した上で、いまでは逆に「ロックを付けることに慣れすぎて、付けていないと不安になるほど」という境地にまで至っているとのこと。
さらに、なぜKouheiさんがここまで盗難防止に力を注ぐようになったのかを聞くと、このGT-Rを購入した経緯が大きく影響していた。
「仕事を始めて1年くらい、19才のころまでは全然クルマに興味がない人間だったんです」とKouheiさん。当時乗っていたクルマは、通勤や日常の足に便利ならそれで十分という考えで買ったスズキのワゴンRだったという。
しかし、仲良くなった職場の同僚が外車好きで、話を聞いているうちに自分もBMWやベンツといった高級外車のセダンに乗りたいと思い始めたのが、Kouheiさんがクルマに興味を持ち始めた一番最初のキッカケだったとか。
「最初は外車からだったんですけど、クルマに興味を持って色々と調べていくうちに、国産車にもすごいスポーツカーがたくさんあることを知りました。FD3SとかAE86とかスープラとか。中でも自分が一番興味を持ったのはJTCCのようなグループA車両で、当時の映像を見てからはBNR32が欲しいと思うようになりました」
それでこのGT-Rを手に入れたのか! と思いきや、最初に購入したのはスバル・BRZだったとKouheiさん。
「R32は中古価格も高くなっていたし、いきなりスポーツカーに乗るにしてもなるべく新しい年式のほうが安心だと思ったので」と中古車を購入し、念願の国産スポーツカーデビューを果たした。
そのときKouheiさんはまだ20才になってすぐのころ。GT-Rはいずれ機を見て購入するときがやってくれば…と思っていたが、想像を超える中古車市場の急激な高騰がその計画を狂わせたという。
「1年間くらいネットの中古車販売サイトを見ながら、自分で価格や在庫の推移のデータを付けていたんです。そうしたら在庫の数も減っていくし、価格も上がっていく一方で…。待っていたらいつまで経っても買えなくなると思って、半年前にBRZを手放してこのGT-Rを買いました」
自分が稼げるようになってからじゃ遅い! とBRZの下取りを頭金に入れたとはいえ、GT-Rを購入するにあたってはほとんどの費用がローンといった状況。
そして、手に入れてからも自分の予想通りGT-Rの価格は上がっていくことを考えれば、盗難されるには格好の標的となってしまう。Kouheiさんが盗難防止にここまでこだわる理由には、こういった経緯があったのだ。
そうしてGT-Rに乗り始めたKouheiさんは、このGT-Rを新車発売当時の標準状態へ戻すことを第一に考えているそうだ。
「日産がハコスカ以来の16年ぶりのGT-Rとして作ったクルマだということも、他のスポーツカーよりもBNR32に強く惹かれたポイントだったんです。だからこそ、その当時にどういうクルマだったのかを味わってみたくて、できる範囲でノーマルへ戻していく作業を進めている最中です」
まず手始めに、購入時は社外品に換装されていたステアリング、シフトノブ、マフラーを純正パーツへ交換。
いずれカセット式の純正オーディオデッキをインストールするためのスペースを確保しているというこだわりようだ。
履いているホイールも、もちろんBNR32純正の16インチ。サスペンションもノーマル状態の乗り心地を味わうために、純正ショックを購入してオーバーホール中だという。現在は車高調が入ってノーマルと比べ車高が落とし気味だが、純正ショック導入後にはノーマルへ戻ることになる。
こちらは購入時からノーマルだったというRB26DETTエンジン。23万km走行済みの車体だが、しっかり試乗してから購入したこともあり現在も調子がいい状態をキープできているそう。
そしてKouheiさんにとってはアフターパーツメーカー製のタワーバーも、できればせめてニスモ製に交換したいと思っているんだとか。
BNR32の生産最終年となる平成6年式の個体を手に入れることができ、エクステリアの状態も良好だが、旧車ゆえに修理が必要な部分も多かったり、保険料などで維持費がかさむこともあって「自分と同じようなことを考えてる20代の人がいても、絶対におすすめはできないですね(笑)」と話すKouheiさん。
「とにかくクルマが好きで好きでしょうがなくて、パチンコもしなければお酒も飲まない。クルマのためだけに生活できるような覚悟がなければ、普通に86やBRZに乗っているほうが苦労しなくていいと思いますよ。それを考えれば、盗難防止のために自分が普段からやっていることも当然だと思っています」
こうした思いを伺ってから、あらためて完全防備状態のGT-Rの姿を見ると、それは盗難防止の意味だけではなく、若くしてGT-Rオーナーとなった責任感、そして覚悟の現れをひしひしと感じるのであった。
(⽂: 長谷川実路 / 撮影: 市 健治)
[ガズー編集部]
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