【世界の愛車紹介ドバイ編】今は亡き友人の思い出とともにドバイを走り続けるEK9シビック

ハロルド・ブリトスさんは、アラブ首長国連邦(UAE)に住む43歳の建築家だ。UAEのチューニングカーの世界ではかなり名の知れたベテランドライバーであり、10年以上にわたって日本車のチューニングカー、特にホンダ車に恋焦がれてきた。彼にとって最初の日本車は、2013年に購入したホンダ・S2000だった。

それ以来、ハロルドさんは高性能かつチューニングに最適なVTECエンジンのとりこになり、最近さらに3台のホンダ車を手に入れた。大きな改造とカスタマイズを施したホンダ・S2000、サーキット走行を見据えてチューニングされたEG型シビック、そしてEK9型シビックだ。EGシビックとEK9シビックに関しては、ポテンシャルアップを目論んで、エンジンをインテグラタイプRなどに搭載されているNA2リッターエンジンのK20Aに換装されている。なぜホンダ車、そして古いクルマが好きなのかというと、「外観と、市場に出ているパーツの多さが魅力だから」だという。

なかでもEK9はハロルドさんにとって思い入れのあるマシンだ。少し前に亡くなった親友が所有してチューニングしていたもので、ハロルドさんの心に特に残る1台だという。この白いシビックに乗ることで、友人の思い出を心に留めておくことができるのだという。最近は、主に週末のドライブやサーキット走行、そして地元のオーナーズミーティングに出かけたりするそうだ。

ハロルドさんが最近の市販車よりも日本の90年代パフォーマンスカーを好む理由は、外観とパフォーマンス、そしてチューニングやスタイリングに使えるパーツの多さにあるという。「シビックEK9はFFマシンとしては歴史上最もハンドリングの良い車のひとつであり、コースに出たときに快適なフィーリングをもたらしてくれる」とハロルドさん。

チューニングポイントは多数。サスペンションとフロントブレーキ、エキゾーストシステムはSpoon社製だ。エクステリアはSpoonのホイール、サイドミラー、ルーフスポイラーを使用したシンプルなもの。コックピットにはブリッド製のスポーツシートや補強バーなどきりがない。

換装されているK20Aエンジンには、アメリカのエンジンパーツメーカーであるブライアンクロワー社製のカムシャフト、バルブスプリング、バルブスプリングリテーナーが組み込まれ、ECUはHONDATA社製のKPro ECUに書き換えられている。

ハロルドさんによれば、こうしたパーツ交換はショップではなく、彼自身や友人の手を借りてのDIYで行ったそうだ。場所も自宅マンションの地下駐車場を使うという。実は、このK20Aエンジン換装作業もDIY。友人に協力をお願いしてエンジンジャッキを持ってきてもらい、あとはハンドツールでコツコツとパーツを組み込んでいったという。さすがにUAEでもエンジン換装をDIY作業できるユーザーは少ないそうだが、自宅駐車場でクルマを自分でいじるクルマ好きは当たり前のように見ることができるそうだ。

多くの愛車を所有するハロルドさんだが、このEK9シビックだけは手放す予定はないそうだ。亡くなった友人の思い出とともに、ハロルドさんは大事にカスタマイズし、そしてドバイの街に軽快なVTECサウンドを轟かせながら走り続けてゆくことだろう。

Photo:Thishan Dissanayake
Text:Zlatko Mulabegovic
翻訳:小藤茜

[ガズー編集部]