若き頃から憧れだったNSXを購入したオーナーが、どうしてもやりたかった『あるカスタム』と、その理由とは?
日本を代表するスポーツカーとして、老若男女問わず幅広く車名を知られているホンダNSX。
この夏、国内30台、世界350台をもって残念ながら販売終了となった第2世代のNC1が話題となったが、ここで紹介するのは第1世代モデルのNA1。全国から自慢のマシンが集まった『ディーズガレージオータムフェスティバル』のなかでも、一際存在感を発揮していた鮮やかなレッドのボディは、まるで新車かと思うほどのコンディション!!
さっそくオーナーの宗二郎さんから、愛車へのこだわりやこれほどのコンディションで維持し続けていく苦労などを伺ってみることにした。
宗二郎さんがNSXオーナーになるまでの物語の始まりは、今から約30年前に遡ることになる。
「大学生のときに、たまたま通りかかった駐車場に止まっていたNSXを見たのがキッカケでした。当時はすでに免許を持っていてFD3S型のRX-7に乗っていたのですが、まるで戦闘機のようなNSXのスタイルにひと目惚れしてしまい『いつかは欲しい』と心に誓ったんですよね」
約30年前ということは第1世代NSXがデビューしたばかり。というわけで宗二郎さんがひと目ぼれしたNSXとはどんなクルマだったのかを、ここで改めて振り返ってみたい。
1983年からの第2期F1参戦に合わせて「世界に通用するホンダのフラッグシップ」として企画された、NA1型の第1世代NSXがデビューしたのは1989年。
ホンダ初のミッドシップスポーツカーで、市販車では世界初となる軽量・高剛性なオールアルミ製モノコックボディを採用し、シート後方に横置き搭載されるエンジンは自然吸気にもかかわらず最高出力280ps(AT仕様は265ps)を発揮する3ℓV6DOHC VTECのC30A型が搭載された。
1997年のマイナーチェンジではMT仕様車のエンジンが3.2ℓ(C32B型)に排気量アップされNA2型となり、トランスミッションも6速化。2001年には固定式ヘッドライトやフェンダー、サイドスカートなど、エクステリアを中心としたマイナーチェンジが施され空力と安全性がさらに向上した。
そんなNSXは世界で評価を得ていたが、欧米での排ガス規制強化などを理由に2005年で生産終了となってしまった。
若き日に見た憧れのクルマをいつか欲しいと思う……ここまではよくある話だが、ほとんどの人が様々な理由でその夢をかなえられないのが現実。しかし宗二郎さんは念願のNSXを手に入れる準備からはじめ、ついに8年前にNA1(AT仕様)を愛車として迎え入れることになった。
「ミニバンなどに乗っていた時期もあったのですが、改めてスポーツカーに乗れる状況になってきたのでNSXを探すことにしたんです。そのための第一歩としてまず実行したのが、家を買うことでした。もちろんNSXをしっかり保管できるガレージがメインです。ガレージのレイアウトや大きさももちろんですが、騒音なども考慮して将来的にも隣家が建たないような土地探しから徹底的にこだわりました」
NSXを買うために家を買う、こんな予想外の展開はこれまで聞いたことのない驚きのエピソードといえるだろう。
もちろんそんな宗二郎さんだから、納得できるNSXに出会うまでの情熱もハンパではない。
「当時は今よりもタマは豊富な状況でしたけど、とにかくこだわったのはキレイな状態であることでした。このNSXは栃木県の販売店で購入した修復歴なしのワンオーナー車でしたが、お店の担当者にお願いをして前のオーナーに合わせてもらい、使い方や保管していた車庫の状況などを直接詳しく確認させてもらいました。コンディションももちろんですが、最終的に決め手になったのは『圭オフィス』のエアロパーツでしたね」
聞けば宗二郎さんはビデオマガジンを通じてそのキャラクターにはまったという根っからの土屋圭市ファン。長年の憧れだったNSXに加え、そんな土屋圭市氏がプロデュースしたレアなエアロパーツ装着車だったというのは、まさに運命的な出会いだったといえるだろう。
「じつは購入してから8年間でこれまで一度も雨に濡らしたことはありませんでしたが、今回のイベントには土屋さんが参加されるということで、雨の中を走ってきました」と教えてくれた宗二郎さん。
「NSXはミーティングやイベント参加がメインですが、平均走行距離は1年間に1000kmくらい。少ないときは約200kmというときもありました。コンディションを維持するために欠かさず行っているのは、洗車後に必ず走行することです。これはどんなにしっかり拭き取っても残ってしまうエア通路の水分を飛ばすためで、この作業を怠ると車内が湿気で傷んでしまうんです。年間200kmというときは、ほとんどが洗車後の走行だったと思いますよ(笑)」
購入してから変更したパーツや手を加えた部分を尋ねてみたら「これです」と披露してくれたのがインパクト抜群のシザースドア。
「子供のころのミニカー集めから始まったクルマへの興味のなかで、自分なりのスーパーカーの定義が“赤"、“リトラクタブルライト"、“シザースドア"なので、日本が誇る本物のスーパーカーとするためにドアをカスタムしました」
それ以外に手を加えた部分はカーナビの変更とセキュリティシステムの追加くらいだというから、宗二郎さんのこだわりが強く現れているポイントだと言えるだろうし、共感するというスーパーカーブーム世代も多いのではないだろうか。
聞けば聞くほどこだわりと愛にあふれた宗二郎さんのNSXライフ。最後に今後の予定や目標について伺ってみることにした。
「ひと言でいうなら、いかにキレイにNSXを残していくかがコンセプトですね。しかしそれなりに古いクルマではあるので、維持していくのはやはり大変です。これまで経験したトラブルとしては、ブレーキフルードやクーラントの漏れ、セルモーターの故障やライト類の球切れですが、どれも予兆なくいきなり壊れるのが厄介ですね。
しかし20年前に最初に見たときからNSXへの気持ちは変わりません。前オーナーの思いも受け継ぎながら、これからも大切にしていきたいと考えています」と締めくくってくれた。今後も各地のイベントで、変わらぬ勇姿を披露してくれることだろう!
ところで宗二郎さん、イベントのラストを飾るドレスアップコンテストで土屋圭市特別賞を受賞し、オリジナルグッズを直接本人から受け取ってニッコリ。初の雨天走行までして駆けつけた苦労が報われことだろう。
取材協力:ディーズガレージ
(⽂: 川崎英俊 / 撮影: 金子信敏)
[ガズー編集部]
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