平成生まれのオーナーが乗るポルシェ911

ポルシェといえば、言わずと知れたドイツが誇るスポーツカーメーカー。60年以上にわたってスポーツカーを作り続け、数々の印象的なモデルを世に送り出してきた。その代表的なモデルが911。唯一無二のリアエンジン&リアタイヤ駆動(RR方式)のパッケージを持ち、現行の991型まで7代にわたって作り続けられているポルシェの代名詞的存在だ。

今回紹介するポルシェオーナー、上野太朗さんの愛車は1998年式の911(996型)。現行モデルの2世代前にあたる5代目だが、911シリーズの中古は決して安くはなく、おいそれと手が出せる代物ではない。しかし、上野さんは平成生まれの25歳。どうしてもポルシェに乗りたくて、清水の舞台から飛び降りてしまった勇気あふれる若者なのだ。

クルマ好きの父親の影響で、クルマ三昧の環境で育った上野さん。初めて買ってもらったミニカーはポルシェ356のスピードスター、その次はポルシェ911ターボと、幼少の頃からポルシェ漬け。いつかは乗りたい憧れのクルマとして、頭の中にインプットされていったが、直接のきっかけになったのは職場の先輩の911(930型)に乗った時。

「あらためてすごいクルマと思いました。911の魅力はどう考えても有利とは思えないRR方式を一貫して採用し続け、今ではそれを正当化していること。911を手に入れて学んでみたいと強く思いました」

いろいろなポルシェを見てまわってようやく見つけたのが今の996型。日々の固定費を下げる努力と並行しつつ、勤務先(株式会社ACJマガジンズ※AUTOCAR DIGITALというweb媒体を運営している)に企画書を提出。「社会人1年目、ポルシェを買う」という連載記事をスタートさせた。

「996型を選んだのは手に入れやすい価格だから。会社に企画書を出したのはポルシェに乗るための口実づくり(笑)。企画が通り、最後は編集長のひと押しで購入が決まりました。オレンジの前後マーカーのクラシカルな雰囲気や、ルーフからリアフェンダーに沿って膨らむボディラインもお気に入りです」

さまざまな要素が現実的な選択肢になる中で、譲れなかったのがグレード選び。996型にはターボや4WDのカレラ4Sなど、さまざまな特徴を持ったモデルが存在するが、ベースグレードのカレラ(6MT)を選択。この理由は非常にシンプルで「911を学ぶには素のカレラが最適だと考えたから」。

平日はボディカバーをかけているが、週末になるとボディカバーを外して出動。長短距離問わずドライブに出かけ、意のままに操れるよう日々訓練している。ちなみに6MTを選んだのは「マニュアルの方が自分で運転している感覚が強いから。どこかに移動するためではなく、ポルシェに乗るために運転しています」。購入して約半年だが、すでに4500km走行。日々感じた911の印象やトピックスなどを連載記事で発信し続け、AUTOCAR DIGITALの連載はすでに30回を数えている。

「911を学べたかですか? 実のところまだ全然分かっていません。RR方式はクセがあるので、限界を知るためにもサーキットに行ってみたいと思っています」

上野さんは仕事柄、いろいろなクルマ業界の人たちと話しをすることが多いが、ポルシェでレース経験のある年配の方から聞くのが「ポルシェに乗ると次はフェラーリに行く人が多い」ということ。

「ポルシェでもすごいのに、まだその先があるのかと。それは一体どんな世界なのかと思います。でも、今は愛車の911に満足しています。新旧911に乗り996型の歴史と進化を学びたいと思っていますが、そう感じたのはこのクルマが初めてですね」

自動車メーカーとしてのポルシェの長い歴史には、大いに敬意を表するが、その魅力を伝えてきたのは多くのポルシェオーナーたちである。20代の上野さんのポルシェライフはまだ始まったばかりだ。

(フリーライター:ゴリ奥野)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road