スカイラインGT-R(BNR32) 中学生で一目惚れし、整備士になって迎え入れた愛車への愛情

20代の相澤さんが乗る日産スカイラインGT-R(BNR32)は、彼より年上の平成2年式。中学生の時に一目惚れしたGT-Rを手に入れ、楽しく長く乗り続けるために、整備士になり、当時のカスタム情報を調べるなど着々と準備し実行してきた。そんな愛車とのカーライフとは。

「中学2年生のとき、学校の帰り道にガンメタのスカイラインが綺麗な音を奏でながら颯爽と駆け抜けていったんです。そのときに『なんてカッコいいクルマなんだろう』と、ひと目惚れしてしまいました」と、自身の愛車である日産・スカイラインGT-R(BNR32)を見ながら優しく微笑んだ相澤朋宏さん。

相澤少年はまだ14才、すぐにでもスカイラインを運転してみたかった、『大人になったら絶対に乗るぞ!!』という夢を持ち、どういうクルマなのかを調べる日々。
「古いクルマだから修理が大変だろうな、ということは子供ながらに分かっていました。だから、どこが壊れやすいとか、どういう対策をすればいいとか、そういう情報を徹底的に調べはじめました」

「本屋でカーセンサーという中古車情報誌が100円で売られていて、安かったし学生の僕でも気軽に買えたからよく読んだりしていました。免許も持っていないのに中古車価格を調べていたんです(笑)。僕が中学生くらいのときは80万円から100万円くらいで売られていたから『バイト代を貯めればいけちゃうな〜』なんて思っていたんですが…高校生になった頃には200万円から300万円くらいするようになったんですよ。え!? 3倍の値段!? なんで!?って感じでした(笑)」

それでも諦めることなく、良い状態の個体に乗りたいと考えていた相澤さんは、高校卒業と同時にスカイラインに乗りたいという思いをグッと堪えて、中古車ショップで整備士として働き始めたという。
「整備士になったのは、スカイラインに乗った時に自分で整備しなければと思ったからです。状態を常に見ながら、長い間乗り続けるには自分で管理しないといけないって考えました」

そんな相澤さんに転機が訪れたのは、整備士として働き始めて8ヶ月後のこと。仕事が終わってインターネットオークションを何気なく見ていたら1台のスカイラインが目に止まったという。
走行距離12万1000km で修復歴なしの1990年式。
急いで出品者に問い合わせ、次の日になんとか両親を説得してショップに向かったという。ちなみに、ご両親を連れていったのには理由がある。すこぶる良い個体だった場合、その場で契約しないと他の人の手に渡ってしまう可能性があると先読みしたものの、19才の相澤青年ではローンを組むことができないため、親に同行してもらったのだ。
そして、その勘は的中することとなる。

ディーラーで整備が行われ、整備記録簿には今までのメンテナンスが事細かにすべて記されている個体。ワンオーナーで車庫保管なうえに、晴れている日にしか乗っていなかったため、ボディは年式を感じさせないほど綺麗だった。実家付近のクルマ屋さんが出品していたため、ご両親を連れて行きやすかったのもラッキーだったと話してくれた。

「変な話、運命だとしか思えないんですよ。ショップの人に『10分前にインターネットにアップして5分も経たないうちに、君からすぐに連絡があった』と言われたんです。僕がオークションを見るのがあと10分遅かったら他の人が買っていたかもしれないし、逆に10分早く見ていたら今日も良い個体はなかったなとパソコンの電源を切ったかもしれません。6年間片思いした甲斐がありました」
そんな古いクルマを買ってどうするんだ!!と苦言を呈するご両親を尻目に契約書に印鑑を押し、見えない磁力に引き寄せられるかのように出会った1人と1台は結ばれることとなった。

こうして伴侶となったスカイラインは、やっぱり、いや想像以上に素敵なクルマだったという。
最新式の電子制御は付いていないけれど、そのぶん一挙一動にダイレクトに反応しているのが伝わってくる感覚やボディの剛性感など、まさに感無量だったとニコリ。
いっぽうで、ドライブシャフトやブーツへの負担を配慮してコーナーの曲がり方を工夫したり、不必要にスピードを出さないようにしたりと、いかにクルマに無理をさせないように走らせるかは常に考えているそうだ。

懐かしい雰囲気が漂う車内で唯一、メーターだけは新しめのデジタル式を装着しているのも、水温や電圧の数値を常にチェックして、車両に異常を感じたらすぐに停車できるように備えているからだという。
積雪量の多い青森でも気にせずに乗り回していることもあり、走行距離は17万7000kmに達しているそうだが「乗らないで壊れるよりは乗って壊れた方がいい!」と、清々しく笑う顔が印象的だ。

そして、相澤さんが惚れ込んでいるのは走りの性能だけではない。
「せっかくノーマルで購入したから、遠目からはノーマルに見えるというか、GT-Rそのままの良さを活かしつつカスタムしています。あとは、販売当時に流行っていたパーツやアイテムを取り入れるようにしています。自分がその当時に乗っていたらこういう感じにしただろうな〜みたいな」

東名パワード製フロントリップスポイラーは、復活を望むユーザーの声に応えて2019年に再販されたアイテム。ほとんどノーマルのスポイラーと見た目は変わらないが、ノーズが伸びたことでバンパーとスポイラーが一直線になり、車両のバランスが取れたという。東名パワード製といえば、テールレンズカバーもお気に入りポイント。

最後に『今後乗り続けるとなると維持が大変なのでは?』と問いかけてみたが、それは無粋だった。
「どんな状態になっても、1番好きなクルマだから苦ではないんですよ。ずっと大好きです」
そんな相澤さんの熱烈なプロポーズを受けて、スカイラインが少し照れ笑いした気がした。

取材協力:旧弘前偕行社

(文:矢田部明子 / 撮影:平野 陽)

[GAZOO編集部]