日産バネットラルゴ 旧車として大事にされながら、現役でファミリーカーとして頑張り中
1991年式の日産・バネットラルゴ(KUGNC22)。時代ごとの特徴が感じられる旧車が大好きだという整備士さんに、大好きな旧車として、そしてファミリーカーとして迎えられた。オーナーさんの豊富な車の知識により整備は万全で、今日も元気に家族の送り迎えに大活躍中だ。家族の一員である、バネットラルゴをご紹介する。
オーナーさんの、山口輝男さんは、懐かしい時代の空気が感じられる旧車をこよなく愛するクルマ好きのひとりだ。現在でこそファミリーカーといえばミニバンが主役になっているが、ひと昔前の1990年代までは大人数で快適に移動できてレジャーの荷物も積みこめるワンボックスが王道であり憧れの存在だった。バネットラルゴはそんな時代に一世を風靡した高級志向のワンボックスカーである。
このバネットラルゴ スーパーサルーンと山口さんの出会いは3年ほど前。整備士として働いている山口さんが、車検のために陸運支局を訪れた際に、同じく整備士をしている同級生が車検に持ち込んできたのがこのクルマだったのだ。興味を持って話を聞くと、ワンオーナー車で走行距離も3万6000kmと少なかった。雪国で使用されているだけに若干のサビは発生していたものの、今後出会える可能性は低いと考え「手放す際には連絡してほしい」と頼んでおいたという。
「ちょうど車検が切れた2020年に、オーナーが手放すという連絡をもらったので格安で購入しちゃいました。パワステの高圧パイプがダメで、部品も製廃になっていたのが手放した原因だったようですが、思ったよりも簡単に修理することができたのはラッキーでしたね」
古いクルマを趣味としている知識はもちろん、整備士としてのスキルもあったため、難なく修復することができたというわけだ。
青森で季節を問わず乗るためには4WDであることは重要なポイント。バネットラルゴは運転席のスイッチ操作でセンターデフロックが切り替えられる4WDシステムを採用しており、雪深いエリアに行っても高年式モデルに引けを取らないほど快適で安心のドライブを実現してくれるという。
また、この型のバネットラルゴには1800cターボや2000ccのガソリンエンジン仕様もあるが、山口さんの愛車は2000ccディーゼルターボのLD20T・IIエンジンを搭載したモデルで、トルクフルな走りも魅力のひとつだ。
ちなみにバネットラルゴの4WDは2WDモデルとは異なりラダーフレーム仕様となっている。サイドシルよりも下にフレームが位置するため、装飾用のサイドステップでフレームが隠されているのが特徴。モノコックではなくフレーム車というタフさもまた、興味を惹かれる見どころとなったようだ。
山口さんは元来、カスタマイズ好きだというが、このバネットラルゴに関してはノーマルのままキレイに乗り続けていこうと考えているという。
「ディーゼルの4WDは雪国では重宝するクルマなんですよ。他にも何台かクルマを所有していますが、普段乗りから通勤、ミーティングやイベントなどでも活用できるのは手放せない理由ですね。もちろん自分でも色々直していけるというのも、乗り続けていこうと思える理由なんですけどね」
他に所有しているクルマは車高が低いいうこともあり、このラルゴは年間を通してフル活用できる貴重な存在なのである。
唯一の変更点はホイールとタイヤの変更のみ。夏タイヤ用にはハマー・H3の純正16インチをセットし、若干のインチアップを行なっている。ちなみにスタッドレス用では日産・テラノ(R50)純正の16インチを履かせているという。豪華な社外ホイールではなくあえて他車種の純正ホイールを流用するあたりは、ノーマルイメージを崩さないように心がける山口さんのセンスが発揮されているところだろう。
また旧車好きが高じて、青森県黒石市で行われる旧車ミーティングを手伝っていたこともあるという。
「クルマって時代ごとの特徴があるじゃないですか。デザインであったり装備であったり、現在とはまったく違った考え方から生まれた時代の証なんですよね。そんな懐かしい時代を感じさせるクルマがやっぱり好きですし、実際に今乗っていてもぜんぜん不自由しないんですよ」
直線基調のインテリアデザインは、90年代の日産車独特な雰囲気が味わえるポイント。4WDであることに加え、エンジンがシート下に配置されるキャブオーバーであることから、アイポイントが高く視界が広いのも利点。この実用性の高さもまたイジらずに乗り続けていこうと思える理由なのだとか。
インテリアで唯一手を加えたのがステアリング。当時のムードを持ちながら、シックなイメージに合うナルディ・ガラ4のウッドタイプは、センターパッドを取り外すことで若干のスポーティな印象を狙っているという。
また、ATシフターの前には純正の保冷/保温庫も搭載。もちろん現在も稼働するためドライブなどでも重宝しているという。こうしたアイテムが搭載されているのも、昭和〜平成初期のレジャービークルならではといえるだろう。
ちなみに山口さんのバネットラルゴには装着されていないが、当時のディーラーオプションではTVも選択できた。この時代のTVといえばブラウン管が主流だったものの、車載用には5インチの液晶TVを採用していたのも画期的な装備だったと言えるだろう。
ロッドアンテナも今は見かけなくなってしまった装備のひとつ。背の高いワンボックス車のため伸縮タイプではなく回転させて立ち上げる形状を採用しているのもバネットラルゴの特徴だ。
4WDモデルはラゲッジ部分がかさ上げされるため荷物の積載量は期待できない。とはいってもそれほど多くの荷物を積載しないだけに、必要にして十分なキャパシティを備えているのだとか。
後席はセカンドシートが回転してラウンジレイアウトも可能。このシートアレンジもレジャービークルとして車内で快適に過ごすための工夫というわけ。当時のファミリーはこんな空間でキャンプなどのレジャーを楽しんでいたのかな?と想像が膨らむ。
フロントマスクは異形4灯ヘッドライトにクリスタルフィニッシャーを組み合わせる90年代日産の王道スタイル。
この特徴的な顔つきとともに山口さんが購入を決意した理由のひとつのが、当時ものの2桁ナンバーが付いていた点。旧車好きとしてはこのバネットラルゴに新しいナンバーを取り付けるのではなく、当時からのそのままの雰囲気が味わえるナンバープレートもこだわりたいポイントなのである。
このバネットラルゴ以外にも、唯一新車で購入したというマーチカブリオレ(K11)をはじめ、9台ほどのクルマを所有しているという山口さん。
中でも思い入れが深いのは810ブルーバードで、1050円で手にいれた車体をコツコツと仕上げて現在の仕様を作り上げているという。ちなみにこのブルーバードでイベントに参加した際に、同型のプラモデルが8000円で売られていたのを見て「愛車の8倍の値段!?」と驚愕したものの、もちろん入手してしまったなんていう裏話も。
ノーマルをキープする理由のひとつが「小学生の娘さんの部活の送り迎えにも活用しているから」とのこと。このほかにも、娘さんが生まれた際の記念に購入したというクラウンワゴン(GS130)も所有しているけれど、大人数を乗せられるという面ではバネットラルゴの方が便利なのだとか。
「実用性でいえば新しいミニバンの方が便利かもしれないのはわかっているんですよ。でも古いクルマに魅力を感じてしまう性分なので、いまどきのミニバンには手を出せないかな」
そう語る山口さんにとって、バネットラルゴは趣味と家族サービスを両立できる最適解なのだ。
取材協力:旧弘前偕行社
(⽂: 渡辺大輔 撮影: 金子信敏)
[GAZOO編集部]
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