物心ついたときから魅了されていた人生の相棒、トヨタ・スープラ

1990年代という日本のスポーツカー黄金期において、欠かせない存在がJZA80型のトヨタ・スープラだろう。日産・スカイラインGT-Rやマツダ・RX-7といった各メーカーの個性を主張させたスポーツカーと比較すると、スープラはグラマラスなアピアランスが際立ち、ターボ車では他のスポーツカーと比較してもっとも大きなトルクを発生させていた。8,000回転まで回るスカイラインGT-RのRB26エンジンとは異なり、2JZは排気量の大きさを活かした特性だ。丈夫なエンジンゆえ1,000馬力オーバーの出力にも耐え、トヨタ車のみならず様々なクルマにエンジンスワップが行われる名機と言える存在となっている。

さらに日本で販売される国産車として初めて6速のマニュアルトランスミッションを搭載しているのも大きなポイントだ。ドイツのゲトラグ社と共同開発されたこのミッションもかなり丈夫なもので、チューニングベースとしての素養を持ち併せていた結果が現在のスープラの人気を後押ししているのかもしれない。

JZA80型のスープラは、発売から20年近く経とうとしている現在も輝きを失わず若い世代の人たちを魅了している。映画「ワイルド・スピード」では、ポール・ウォーカーが演じる主人公のブライアンがスープラを駆り熱いレースを繰り広げているのは多くの人も目にしたことだろう。そして自身もスープラを所有していたことは有名な話だ。

このスープラを所有しているオーナーもスープラに魅了されてしまった一人だ。オーナーは25歳の青年で、物心ついたときからJZA80型スープラが大好きだったという。よくある話だが、父親もクルマ好きだそうで、過去にはGZ10型のソアラやAE101型のレビン、T200型のセリカを所有していたそうだ。JZA80型のスープラが発売されたときはオーナーが誕生した時期であり、さすがに購入を断念。それを息子である彼が叶えた形となった。

グランツーリスモのようなレースゲームでも必ずこのスープラを選択し、愛用していたというから、彼のスープラに対する熱量が並大抵ではないことは容易に想像できるだろう。

このスープラは平成9年式のRZ-Sで、オーナーの好みにより、あえてエアロパーツのメーカーを統一せずにチョイスしつつも一体感を出している外装が目を引く。これは、エアロパーツを同一メーカーで統一している個体が多いため、その中でも個性を主張させるためだ。フロントバンパーはDo-Luck製、サイドステップはヴェイルサイド製で、リアスポイラーはTRD風を選択している。

さらに特徴的なのがオールペイントが施されたボディだ。これは板金塗装工であるオーナー自らが調合し、全塗装したものだ。色味を配合する「レシピ」はオーナーしか知り得ない門外不出のもので、この世に二つとないオリジナルのボディカラーを纏っている。夜間においてはワインレッドの放つ艶や妖しさが印象的で、ピンクパールが混ざっているという点がポイントだ。

ホイールは深リムで、以前から欲しかったというSSR製のPROFESSOR SP1を装着。その隙間から黄色に塗装されたセルシオ用のブレーキキャリパーが顔を覗かせている。車高調整式のサスペンションはテイン製をチョイス。ギリギリまで下げられた車高がこのクルマの魅力をさらに引き立てている。

Instagramで見るような海外のカッコ良いスープラに憧れるというのがなんとも最近の若者らしいところ。フロントサイドマーカーランプを取り付けたのも海外仕様のクルマを参考にしているという。追加メーターはワイルド・スピードのようなスポコンを意識したピンクに光るZ.S.S製のものだ。

18歳の時からスープラに乗り始め、一度盗難されて愛車を失ってしまうこともあったが、それでも新たなスープラを手に入れ、このクルマは所有してから4年ほど経過しており、つきあい方も年齢を重ねるとともに変わりつつある。以前は速く走ることを楽しんでいたが、現在ではカッコ良くカスタマイズする方向へとシフトしているそうだ。

物心ついた時から大好きなスープラという存在は、言葉にすれば人生の相棒という表現が相応しいのではないだろうか。18歳までは単純に憧れであった存在が、共に時を刻む相棒へと変わり人生を歩んでいく…。これまでスープラのない人生など考えられなったはずだし、これからもそうであるに違いない。まだ序章に過ぎないこの歩みは、これからどこへ向かうのだろうか。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]