20年前に造られたクルマとともに今も現役!82歳のオーナーの愛車はトヨタ・マークII グランデ レガリア(JZX100)

時代の移り変わりとともに、多くのユーザーに支持されるクルマも変わっていく。

現在であれば、ハイブリッドカーになるのだろうか。近い将来には、電気自動車に置き換わるかもしれない。そして過去に遡ると、ハイソカーブームという言葉の響きに懐かしさを感じる人もいるはずだ。

トヨタ・マークIIといえば、ハイソカーブームを牽引していた1台だろう。当時のボディカラーの定番は白だった。Google mapはもちろん、カーナビゲーションシステムが普及するはるか以前の話だ。知らない場所に出掛けるときは、地図を片手に目的地へ向かうしかなかった。そういった時代の移り変わりとともに、マークIIも、モデルチェンジを重ねてきた。今回は、そんなクルマと10年間寄り添い、ともに暮らすオーナーを紹介したい。

「このクルマは、1998年式トヨタ・マークII グランデ レガリア(JZX100)です。現在、私は82歳になります。トヨタディーラーの認定中古車として手に入れてから10年ほど経ちました」。

トヨタ・マークII(以下、マークII)は、もともとは「トヨタ・コロナ マークII」という名で1968年にデビューを果たした。正式にマークIIの車名となったのは、1984年にデビューした5代目からといわれる(その前から「マークII」と呼称されていた)。オーナーが所有する「グランデ」というグレード名は、マークIIを代表するもののひとつであり、実は3代目から設定されていた歴史ある名称だ。そして「レガリア」という名も、伝統的にマークIIの特別仕様車に与えられたものであった。

オーナーが所有するマークIIは、1996年にデビューした8代目にあたる。ボディサイズは全長×全幅×全高:4760x1755x1400mm。排気量2491cc、「1JZ-GE VVT-i型」と呼ばれる直列6気筒エンジンの最大出力は200馬力を誇る。VVT-i(Variable Valve Timing-intelligent system)とは、エンジンの吸気バルブの開閉時間を連続的もしくは最適に制御する連続可変バルブタイミング機構を意味するものである。なお、マークIIという車名は、オーナーが所有する次のモデルを最後に消滅し、2004年にフルモデルチェンジしたのを機に、現在に至るまでマークXという名で販売されている。

このマークIIを手に入れてから10年ほど経過しているとのことだが、逆算すると2008年頃だ。敢えて既にフルモデルチェンジを果たしていたマークXを選ばなかったのだろうか?

「マークIIを手に入れるまでは、新車で購入したトヨタ・チェイサー(GX71型)に15年ほど乗っていたんです。フロントフェンダーが低くなっているため、車幅がつかみやすく、運転が楽でしたね。スピードもよく出ましたが、トラブルが頻発し始めたのを機に、まだ4万キロしか走っていなかったこの個体を見つけて手に入れたんです。当時は既にチェイサーは絶版車になっていたので、兄弟車にあたるマークIIを選んだというのもありますね」。

オーナーが手に入れた8代目のマークIIは、5代目にあたる年代のチェイサーから、一気に3代も新しくなったことになる。それぞれの良さと、気になるところを挙げていただいた。

「ボディの見切りの良さを比較したとき、角張ったデザインを持つチェイサーの方が感覚はつかみやすかったですね。しかし、それ以外はマークIIの方が(当然ながら)優れていると思います。乗り心地も格段に良くなりましたし、リアシートも広い。長距離移動もマークIIの方が快適です。そして何より、故障しないので安心です。10年間所有して4万キロ、前オーナーが走った距離から通算すると7.2万キロほど乗っていますが、本当にトラブルフリーなんです。パールホワイト(正式名はホワイトパールマイカ)の上品なボディカラーもお気に入りです」。

これまでさまざまなクルマを乗り継いでこられたと思うが、オーナーの愛車遍歴を伺ってみた。

「最初のクルマは、父親が乗っていた1949年式のフォードだったと思います。日産・スカイラインも乗りましたし、BMW3シリーズ(カブリオレ)を所有していた時期もあります。1台のクルマを長く乗る方なので、愛車遍歴は少ない方かもしれないですね。現在は、マークIIの他に新車で手に入れたマツダ・ユーノスロードスター Vスペシャルを所有していますが、乗る頻度はマークIIの方が多いですね。とにかく壊れないし、維持費が掛からないという点においても、日本車に乗るのがベストだと思いますね。輸入車のデザインに惹かれることもありましたが、頻繁に故障するし、部品やメンテナンス代も高くてまいりましたから…」。

マツダ・ユーノスロードスター Vスペシャルは別の機会に取材をお願いすることにして、最後にこのマークIIと今後どのように接していきたいか伺ってみた。

「現在、私は82歳です。運転免許を書き換えるときに受講する運転講習では良い成績を収めている方だとはいえ、どんなに運転できるとしても、あと3年が限度でしょう。このマークIIと、もう1台所有しているユーノスロードスターが、私にとって最後の愛車になるかもしれません。いずれも、クルマを卒業するその日まで大切に乗り続けたいですね」。

オーナーのマークIIを改めて眺めてみた。よくよく考えてみたら、この個体は20年前に製造されたクルマなのだ。それを感じさせないほど内外装は美しいコンディションが保たれており、目立った傷も見当たらない。

今回、オーナーのご厚意でご自宅にお邪魔させていただいた。そこには、オーナーが集めたという蓄音機や、レコードプレーヤー・レコード盤・スピーカーなどが大切に保管されていた。しかも、コレクションの多くが「動体保存」である。コレクションのひとつであるレコードを再生していただくと、スピーカーからノイズ混じりの柔らかい音が聴こえてくる。愛車のマークIIのコンディションが良好な理由が分かったような気がした。

ひとつのモノと、長く丁寧に接する。万一、壊れてしまったら修理してまた使う。大切に扱うことで、機械もそれに応えてくれるのだろうか?愛車であるマークIIも、オーナーが運転を「卒業」するその日まで、きっと元気に走り続けるに違いない。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]