走りの系譜を継ぐAE111で全国を巡るオーナー。年間2万kmを積み重ねるその目的とは?

1980年代に爆発的なブームとなっていた「ビックリマンチョコ」。当時小学生だった30代、40代には懐かしいワードだが、そのブームの火付け役となっていたのがキラキラと輝くオリジナルシール。そんなビックリマンチョコのシール集めに通じる遊びを、愛車AE111カローラレビンとともに楽しんでいるのが花房 亮さんだ。

花房さんがハマっているのは“峠ステッカー”のコレクション。近年クルマファンを中心に広がりをみせているムーブメントで、日本全国の峠をめぐりながらそこでしか手に入れることのできないステッカーやオリジナルグッズを集めていくというものだ。
「元々は地元から近い正丸峠(埼玉県)にある奥村茶屋でシーズン毎に販売されるシリアルナンバー入りの限定ステッカーを集めていたのですが、それが『ジャパン峠プロジェクト』として全国規模に拡大されることになって、それなら全部集めてやろう!となったわけです。毎年プロジェクトに参加する峠(ステッカー)は増えていて、2017年には19枚だったものが2021年には66枚になりました。今回参加した『ディーズガレージオータムフェスティバル2021』では、66枚すべてを集めた証となるフルコンプリートステッカーをもらうのと、全国から集まって同じ趣味を持つ仲間たちに会うのが目的だったんです」と、花房さんは全国制覇者だけが獲得できるステッカーを披露してくれた。

そんな趣味の峠ステッカー集めから通勤までをすべてこなし、平均年間走行距離は2万kmにもなるという花房さんの愛車トヨタ・カローラレビン(AE111)は、13年前に中古で購入してから乗り続けているものだ。

ここで簡単にAE111の概要を振り返っておくと、そのデビューは1995年。TE27から続くカローラレビンシリーズの7代目で、2000年の販売終了をもって、シリーズ27年の歴史に幕を下ろすことになった最終モデルでもある。
AE110系カローラベースのコンパクトなクーペボディは、前モデルのAE101に比べて70kgも軽量となり、スポーツグレードのBZ系に搭載される自然吸気の1.6ℓDOHC20バルブ4A-GEエンジンも、4連スロットルの大口径化や、燃焼室形状の見直しなどにより最高出力が160psから165psへと向上している。
花房さんのBZ-Rグレードは1997年のマイナーチェンジで設定された後期モデルで、フロントに走行中のキャンバー変化を抑える構造をもつスーパーストラットサスペンションを採用するほか、当時最先端だった6速マニュアルミッションを搭載しているのが特徴だ。

数ある選択肢の中から走りの血統を持つAE111を選ぶというのは、さぞや深いこだわりや思い入れがあってのことかと思って質問をぶつけてみたが、花房さんの返答は意外なものだった。「じつは元々クルマにはまるで興味がなかったんですよ。実家には父親が仕事に使うクルマがあるだけで、子供のころにクルマでどこかに連れて行ってもらったこともないので、もっぱら興味の対象は鉄道だったんです」というのだ。聞けばいわゆる“撮り鉄”というジャンルの鉄道マニアで、子供のころからカメラを持って鉄道写真を撮るのが楽しみだったという。
「クルマの免許を取ったのも、おもな目的は鉄道写真を撮るための移動手段としてでした。だから動きさえすればなんでもよかったのですが、なぜか父がAE101カローラセダンのAT車を買ってくれたんです。いちおう免許はマニュアルを取ったのですけど、教習中からマニュアルシフト車の面倒な操作に嫌気が差していたので、オートマはありがたいと思って2、3年乗っていました」

そんな花房さんのクルマへの興味を一変させたのが、コミックスやアニメを通じて触れた『頭文字D』の主人公藤原拓海が操るハチロクのカッコよさだった。
「鉄道も古い車両が好きだったので、拓海のハチロクに惹かれたのかもしれませんね。実は、最初はハチロクはマンガの世界の架空のクルマだと思っていたのですが、友達から実在するって聞いて一気に欲しくなりました」
花房さんはそれから実際にハチロクを探したというが、すでに手の出せる価格ではないことと、古いクルマは維持するのが大変という友人からのアドバイスもあって断念。そんな時にたまたま中古車点でめぐり逢ったのが、このAE111だった。
「第一印象はスポーツカーらしいスタイルがカッコいいなと思いました。決め手となったのは憧れていたAE86と同じカローラレビンだということ。拓海が乗るのはトレノのほうでしたが、最初の愛車がAE101カローラだったので、愛着のあるカローラのほうがよかったんです」

購入したときは走行距離6万kmだった花房さんのAE111レビンは、13年経って27万6000kmに達しているというが、これまでに大きなトラブルはなかったのかが気になるところだ。
「走行距離が伸びてきてオイル下がりの症状が出てきたのでエンジンのオーバーホールはしましたが、それ以外は通常メンテだけでトラブルはなかったですね。サスペンションは好みでスポーツタイプのアフターパーツに交換していますが、現在装着しているのは2セット目になります。そのほかチューニングとしてはホイール&タイヤとマフラー、純正バンパーに追加するタイプのエアロというところです。とくにスーパーストラット車は部品の調達が年々大変ですが、AE111も稀少なクルマになってきていますから、今後も長く維持していきたいと思っています」と花房さんは締めくくってくれた。

聞けば峠ステッカーのコレクションをしている人の中にはステッカーの販売店を目的地として巡っている人も少なくないというが、花房さんのこだわりは必ずその峠を走ってみることだという。
「峠を攻めるわけではなく自分のペースで走りながら、気に入って風景があれば写真に収めています。もちろんその途中では、鉄道の写真を撮るのも楽しみなんですよ」

AE111は、花房さんの多彩な趣味を満喫するためのかけがえのない相棒のようだ。

取材協力:ディーズガレージ

(文: 川崎英俊 / 撮影: 金子信敏)

[ガズー編集部]

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