ゲームの主人公に憧れ18才で手に入れたスープラ(JZA80)を、17年かけて自分好みにカスタム
18才でスープラ RZ-S(JZA80)のオーナーとなり、人生初の愛車を17年に渡って手塩にかけて維持しながら乗り続けてきたという樋口智紀さん(35才)。
その深いスープラ愛が生まれた原点を振り返ると10才のころまで遡るという。すなわち、樋口さんは25年来の生粋のスープラファンでもあるのだ。
「最初にスープラを知ったのは、スーパーファミコンの『ゼロヨンチャンプRR』をやったときです。そのとき自分はクルマに興味がなかったんですが、親父に買ってもらってプレイしたらとても面白くて、作中で最初に乗ることになるスープラが大好きになってから、将来絶対に欲しいと思うようになりました」
『ゼロヨンチャンプRR』といえば、主人公が赤いボディのJZA80型のスープラRZでのゼロヨン体験をキッカケに、免許を取得してゼロヨンの世界へ没頭していく物語が描かれたゲーム作品である。
余談ではあるが、本編のゼロヨンシーン以外にもカスタムのための費用を捻出するための仕事として用意された多種多様なミニゲームが存在し、そういった寄り道要素の作り込みの高さから、続編が登場しなくなった現在でもファンを擁する名作として知られている。
そんな『ゼロヨンチャンプRR』をキッカケにスープラへの憧れを持ち始め、その様子は樋口さんの両親はもちろん、祖父にまで熱意が伝わるほどだったという。
「それもまだ小学生のころだったんですが、自分が『スープラが欲しい!』と事あるたびに言っていたら、祖父が『じゃあ、将来国立の大学にストレートで入学できたら買ってあげる』と、条件を出してくれたんです。
そう言われたのを目標に勉強を頑張って、有言実行というと変かもしれませんが、無事に大学へ進学することができ、約束通りに憧れのスープラを手に入れる夢が叶いました」
樋口さんが小学6年生になった頃には現在もシリーズが続いている『グランツーリスモ』の1作目が登場。
「中学生のころはまわりがジャンプなどの雑誌を読んでいるなかで、自分だけはチューニング雑誌のOPTIONを読むような生活でした(笑)」と当時を振り返る。
もちろん、ゲームや雑誌にはスープラ以外にも多種多様な国産スポーツカーや外車が登場するが、他のクルマには一切目移りせずに18才まで興味は“スープラひとすじ”。
しかも、それが進学のためのモチベーションにもなっていたというから、樋口さんにとってスープラがどれだけ魅力的で特別な存在のクルマだったのかがわかる。
スープラという存在を知ってから8年。念願叶って手に入れたのは、ツインターボの3L直列6気筒2JZ-GTEエンジンとゲトラグ製6速マニュアルミッションを搭載した平成9年型のRZ-Sグレード。
ボディカラーは『ゼロヨンチャンプRR』のメインカーは赤だったのに対し、樋口さんは黒をチョイスしたとのこと。
「納車されたのが免許を取得する少し前のタイミングだったので、仮免が取れた時点で父を横に乗せて練習したのが、スープラでの初めての運転でした。
通っていた教習所で乗っていたクルマはブルーバードシルフィだったので、最初に感じたのは太いトルク感でしたね。坂道発進がとてもラクだなと(笑)。それに、スープラはインテリアの雰囲気が普通のクルマとは全然違うこともあって、運転席に座った瞬間からテンションの上がるクルマだったのを覚えています」
17年間所有してきた樋口さんのスープラには様々なカスタムが加えられているが、ノーマル状態だったスープラで最初に交換したのはホイールだったという。
「シンプルでカッコいいデザイン、それにサーキットのイメージが強いボルクレーシングのTE37を買いました。そのときは学生だったので中古品の白いホイールでしたね」
現在は同じTE37のなかでも、ボディカラーとおなじ黒いカラーリングの限定モデルであるTOKYO TIME ATTACKへ変更した。
その後しばらくはマフラーやエアクリーナーを交換するなどライトな給排気チューンを行う程度だったが、最初に大きなカスタムを施したのは購入から5年目にあたる2010年。
「塗装を中心にヤレが目立ってきて、ルーフなどにウォータースポットができたりしていたこともあって、オールペンでリフレッシュするのにあわせて、モール類を新品にして、エアロパーツも組みました」
選んだエアロパーツは、自身も熱狂的なJZA80スープラオーナーとして知られるレーシングドライバーの織戸学選手が手掛けるブランドのRIDOX製。
「カッコいいと思って目標にしたのが織戸選手のスープラでした。ずっと見てきたOPTIONやVIDEO OPTIONにも登場してきた馴染みのある選手ですし、ご自身もスープラ好きで、GT選手権でもスープラに乗っていた時期もありましたよね。
免許を取る前から『好きなレーサーが自分の好きなクルマに乗っている』という思い入れもあって、スープラオーナーになるころには織戸選手への憧れがありました」
さらに5年後、ディフューザーを中心としたオプションパーツを追加し、フロントフェンダーも交換するアップデートを実行。
「スープラの丸みのあるリヤフェンダーに対して、フロント側がナローなデザインなのが気になっていたので、フロントフェンダーもちょうどいいワイド感のある『RIDOX』を選びました。リヤフェンダーもワイドにするか悩んだんですが、装着するためにボディ側をカットする必要があるため踏みとどまりました」と樋口さん。
他方で、定番らしさを避けGTウイングではなく、純正よりも少し大型のTRD製ウイングを装着し、ミラーはクラフトスクエアのGTタイプを選ぶことでオリジナリティをアップ。
ローダウンしていても保安基準に適合させるため、車高調にはアラゴスタ製のロベルタカップを使用。
一般的なエアサスはスプリングの代わりにエアバッグを用いるが、こちらはフルタップ式車高調の上部に装着されたリフターで全長を動かす仕組みで、車高調の性能を維持しつつ車高調整ができるのが特徴なシステムだ。
「車体は25年落ちになりますが、いまは休日にドライブするときに乗る程度に控えているのと、エンジンもほとんどノーマル状態なこともあって、大きなトラブルらしいトラブルは経験してないですね」と樋口さん。
18才で手に入れた相棒のスープラに、一生乗り続けていくことが目標だという樋口さんにとって、愛車のカスタムも含め日常のメンテナンスからすべてを信頼して一任している新潟県新潟市のプロショップ『プロモート』の存在も大きな支えとなっているという。
「とにかく、大きな事故もなく無事にこのスープラに乗り続けたいというのが一番の願いですね。ボディのヘタリも気になるけど、そういった部分を維持していくことも考えながら大事に乗っていきたいです」
いまでもチェックを続けている織戸選手が、ユーチューブチャンネルにて構想を発表している“新作RIDOXエアロ”が気になっているという近況についても話してくれた。
いずれ樋口さんのスープラにボディのリフレッシュのタイミングがやってくるときには、新作RIDOXエアロを身にまとった新たな姿に生まれ変わっているに違いない。
そして“初めての愛車”の所有歴も、さらに伸び続けていくことだろう。
取材協力:長谷川屋
(⽂:長谷川実路 / 撮影:岩島浩樹)
[GAZOO編集部]
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