『本物』が実在しないからこそやりがいがある!? R34 GT-Rの4ドア仕様を創る
迫力のあるリヤフェンダーの形状に加え、フロントにはGT-Rのエンブレム。ボンネットを開けるとそこにはRB26DETTエンジンが鎮座する。
「カッコいいR34GT-Rですね」とつい言いそうになってしまうところだが、よく見るとボディの中央部にBピラーが存在し、ドアは片側に2枚ある。
そう、石原ケンゴさん(46才)の愛車はGT-Rとして知られるBNR34ではなく、4WDモデルとして販売されたセダンモデルの日産・スカイライン(ENR34)をベースにオリジナルモディファイを加えて製作された『4ドア仕様のR34GT-R』なのだ。
R34の前モデルだったR33には『スカイラインGT-Rオーテックバージョン40thアニバーサリー』という4ドアのGT-Rというべきモデルが公式で販売されていた。
またR32にも、NAではあるもののRB26エンジンを搭載し、アテーサET-Sなどを装備した『スカイラインオーテックバージョン』というモデルが存在した。
つまり、RB26エンジンを搭載した“第二世代”と呼ばれるGT-Rにおいて、唯一“4ドアのGT-R”が販売されなかったのがR34という車種なのである。
石原さんいわく、この1台にはすでに車体や改造費を合計すると1000万円以上の費用をかけてきたというが、なぜそこまでして『4ドア仕様のR34GT-R』を製作して乗りたいと思うようになったのか?
それはこのR34のカスタムを担当した兵庫県加古川市のメンテナンスショップ『APMファクトリー』との出会いを遡る必要がある。
「中学のころからクルマやバイクに興味があって、16才でバイクの免許を取ってから18才になるまで2~3台の中型を乗り回していたバイク小僧でした」と当時を振り返る石原さん。
18才で待望の普通免許を取得すると、姉からS13シルビアのATモデルを譲ってもらい、それが人生初の愛車となったという。
「だけど、すぐに車検の時期がやってきたので、そこで一気にS14シルビアの新車を買って乗り換えました」
S13シルビアは自然吸気のCA18エンジンを積むATだったこともあり、速さを求めてバイク小僧として育った身としては、マニュアルで、より排気量の大きいターボモデルのSR20DETエンジンを搭載した新型モデルに興味を持ったのは必然と言えるだろう。
そうしてS14シルビアになったのは石原さんがまだ10代のころ。DE30スカイラインに乗った友人の横乗りで見に行ったゼロヨンに衝撃を受けたことが、その後の石原さんのカーライフの方向性に大きな影響を与えることとなる。
「そこから自分もゼロヨンにハマっていって、チューニングを考えたときに日産のクルマに強いお店だと知り合いから聞いて訪れたのがAPMでした。もうそこからはローンも含め全部をクルマにつぎ込むような生活でしたね」と石原さん。
S14シルビアをベースにゼロヨンでの速さを求めてタービンを交換し、エンジンは2.1Lへ排気量アップ。最終的には3基のエンジンと、2基のミッションをブローするほどまでにのめり込んでいったという。
「最後は車体のほうがダメになっちゃったので、APMで製作されたS14シルビアに乗り換えました」と、そこからもとどまることを知らず、石原さんのカスタム熱はさらにヒートアップ。
「もうSRエンジンには限界を感じて、同じ金額のチューニング費用でより効率良く馬力が出せるならと、GT-Rに搭載されていたRB26DETTエンジンに載せ換えることにしました。タービンもT78というビッグシングル仕様でしたね」
エンジン載せ換え後は公認車検も取得して、数年間相棒として乗り続けたこともあり、RB26DETTの良さも味わうことができたという石原さんは、次第にGT-Rに興味を持ち始めることとなる。
「26才のときに、APMがENR34ベースで4ドアのGT-R仕様を作ったんです。それがめちゃくちゃカッコよくて。いつかBNR34にも本物の4ドアのモデルが出るかもしれないと期待していたんですが、結局販売はされなかったんですよね」
直列6気筒エンジンがアイデンティティでもあった第2世代最後のR34に代わって、V型エンジンを搭載したV35スカイラインが登場した当時、『GT-Rの歴史はR34で終わりかもしれない』と感じた人は少なくなかったはずだ。
そして、そのひとりだった石原さんも「もうGT-Rが発売されないのならば」と一念発起し、APMファクトリーにGT-R仕様のR34セダンの製作を依頼したという。これがおよそ15年前、石原さんが32才となった年だった。
製作にあたり必要となった車体は、ベースとなる4ドアのENR34型スカイラインに加えて、再現のためにパーツのドナーとなるBNR34型スカイラインGT-Rの2台。エンジン、ミッションはもちろんダッシュボードやメーター類、足まわりの部品もGT-Rの本物を使っているという。
また、配線はトラブルのもとにならないように、全体をBNR34用に交換したのち、ウインドウなどを動かすドアスイッチのみにENR34用を残すようにしてあるそうだ。
ほぼ無加工で流用装着できるパーツも多いが、もっとも高い障壁となるのが2ドアと4ドアで異なる全長や、後部ドアが関わる部分の再現だったという。
リヤフェンダーはBNR34の純正フェンダーをカットして溶接でつなぎ、後部ドアからの立ち上がりやプレスラインを違和感なく4ドアとして再現している。
再現度の高さは内装も抜かりなく、特にリヤシートはGT-Rの内装に使われている素材を用意し、業者に依頼して張り替えが行われている。セダンボディのトランクスルーを犠牲とするカタチとなったが、GT-R仕様とするには割り切っている部分だ。
ENR34に乗り始めるころにはゼロヨンからもすっかり遠ざかっていたというが、RB26を搭載したからにはパワーチューンへのこだわりは捨てられず、オーバーサイズ鍛造ピストンで2.7Lに排気量アップをはかり、タービンもニスモ製に変更することで、低中回転トルクを重視した扱いやすい仕上がりとなっている。
いっぽう外装は10年以上にわたってホイールを変更する程度のノーマルの状態で乗っていた石原さんだったが、昨年にリメイクを実施したという。
変更部分はおもにフロントで、バンパーをAPMファクトリーオリジナルのR34用に交換。フェンダーは伝説のコンプリートカー『NISMO R34GT-R Z-tune』のものへ変更した。さらに前後18インチだったボルクレーシングTE37のホイールも19インチへサイズアップしている。
取材中には、「これからも世界から石油がなくなる日が来るまで乗り続けたい」と愛車のENR34への思い入れの強さを話してくれた石原さん。
ルーフやトランクのカーボン化、R35GT-Rのテールランプ移植、そして過去に味わったような強烈なビッグタービン仕様など、このR34でやりたいメニューもまだ数多く残っているそうだ。
メーカーの手によって実現されなかった4ドア仕様のR34GT-Rを想像しながら作るという『if』の世界を具現化するカスタムは、とても奥深くやりがいのある作業に違いない。石原さんがここまで1台の愛車に惚れ込み、情熱を費やし続けることができるのは、“『本物』が存在しない“からこそなのかもしれない。
取材協力:大蔵海岸公園
(⽂: 長谷川実路/ 撮影: 稲田浩章)
[GAZOO編集部]
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