人生初の愛車はV12エンジンを搭載するトヨタ・センチュリー!憧れの存在と暮らす20歳のオーナーの情熱とは?
トヨタ・センチュリー(以下、センチュリー)といえば、エレガントな雰囲気と重厚なオーラをまとう、トヨタ車の中でも特別な存在である。皇室をはじめ、政府要人の公用車として使用されるなど、日本車におけるショーファードリブンの代表格といえるだろう。センチュリーは、トヨタの創業者・豊田佐吉の生誕“1世紀”を記念して、1967年に初代モデルが発表された。2代目にあたるGZG50型は、1997年から2017年まで生産された。このクルマのボディサイズは全長×全幅×全高:5270x1890x1475mm。排気量4996cc、搭載されるV型12気筒DOHCエンジンは、センチュリー専用に開発されたのだという。2017年10月、東京モーターショーで新型(プロトタイプ)が公開されたことで、次期モデルの存在がほぼ確実なものとなった。
今回、心底惚れ込んだクルマのオーナーになる夢を、何と10代で叶えたというオーナーを取材した。彼は、幼少の頃から憧れだったトヨタ・センチュリーと暮らしているという。
オーナーのセンチュリーは2006年式。つまり、2017年まで生産されていた「GZG50型」だ。しかも、18歳で免許を取得した直後に、このセンチュリーを購入したというから驚きだ。この日の待ち合わせ場所は、センチュリーにふさわしく赤坂迎賓館前とした。オーナーは取材日に合わせて、ボディコーティングを施してくれたという。美しく磨き上げられたセンチュリーを眺めながら、まずは愛車の気に入っているポイントを伺った。
「まず、自分の愛車がV12エンジンであることに誇りを持っています。それから、このクルマのフォルムが好きですし、乗り心地も気に入っています。このクルマを運転しているときが一番落ち着きますね。本来、センチュリーの役割はショーファードリブンなのかもしれませんが、現在の住まいから仙台まで片道数百キロドライブしても快適そのものでした。運転していてもまったく疲れない点はさすがだなと思います。ただ、燃費はそれなりです(笑)。リッター5キロと聞いていましたが、実際はリッター3キロくらいかもしれません」。
走りにも品格が表れるのがトヨタ・センチュリーなのだ。「専用エンジン」という贅沢さは、そのクルマのアイデンティティーともいえるだろう。オーナーがこのクルマに惚れ込むきっかけは、何だったのだろうか。
「幼い頃からセンチュリーが好きでした。最初に見たのはテレビの映像だったと思います。要人を乗せる役割を担っていたセンチュリーにオーラを感じ、なぜか惹かれたんです。免許を取得したら必ず手に入れると、中学生の頃には決意を固めていました」。
オーナーの愛車は黒塗りのボディにフェンダーミラー。インテリアは革シートという仕様であり、オリジナルを保持している外観だ。オドメーターは21万キロを刻んでいる。
「地元からほど近いショップでこのクルマを見つけました。そこは公用車も扱っている中古車販売店でした。購入当初は17万キロだったので、現在までに4万キロほど走っていることになります。過走行に思われるかもしれませんが、在庫車には37万キロの個体もあったので、まだまだ少ない方かもしれないですね。当時、センチュリーは店頭に3台並んでいて、中でも目を引いたのが現在の愛車でした。希望していた条件である『黒ボディ・フェンダーミラー・革シート』だったんです。このクルマを購入するにあたり、ローンを組みました。当時は未成年でしたが、既に社会人だったので、ローンの審査も通りました」。
10代でローンを組んでしまう潔さに驚いた。オーナーの日頃の努力はもちろんのこと、審査や親の同意などのハードルをクリアできたのは「本気で欲しいという情熱」があったからこそだろう。
「『契約済』の貼り紙を見たときはうれしかったですね。納車までの1ヶ月間は楽しみでしかたがなくて、仕事が終わるとほぼ毎日店に立ち寄っていました。店頭にないと心配になってしまって、後で整備工場に入っていると聞いて安心したり(笑)」。
と声をはずませるオーナー。愛車がやってくるまでのワクワク・ソワソワとしたあの時間は、どんなに歳月が流れても愛おしい記憶となるはずだ。
「実際に購入するまで乗ったこともなかったので、初めて運転したときの感覚は、乗り心地や静粛性も含めて異次元レベルでしたね。憧れが現実になったんだと幸せを噛み締めました。実際に乗り始めて感じた変化は、とにかく周囲からの視線がすごいんです。すれ違いざま、交差点、信号待ちなどで感じますね。友人の家へ乗っていくと、親御さんも見に来ますし(笑)。日本国内専用車だけに、外国人には珍しいクルマと映るようです」。
10代でこのクルマを手に入れたことで、オーナーの「成人式にセンチュリーで出席する」という夢も叶った。
「友人に頼み込んで、センチュリーを運転してもらい、私は後部座席に座って会場に向かいました。特別な日に後部座席に乗って走るのが憧れだったので、良い記念になりました」。
さらに「オフ会」へ参加したことで、クルマ好きの輪が広がったそうだ。
「オフ会は一度行ったらハマってしまいました。クラウン コンフォートからセダン、ロールスロイスまで、さまざまなクルマがいて楽しいんです。オーナーさんも、私と同世代からご高齢の方まで幅広いです。センチュリーも何台かいますが、並べてみると年式やオプションの違い・個性が分かるので興味深いです。オーナーだからこそ分かる部分ってありますよね」。
異車種交流の魅力は、クルマ好きを前提に、世代を超えて交流できるところにある。「クルマが好きな人が好き」なオーナーが集まっているからだ。そういう場だからこそ、同車種の交流もより一層深くなる。
さて、オーナーの個体は一見、オリジナルの外観を保っているようだが、実際のところ、モディファイは施されているのだろうか。
「このセンチュリーは後期モデルになります。さらに後期モデルの中でも前・後期型があるのですが、私のクルマは前期型です。センチュリーのオーナーさんでなければ気がつかないかもしれませんが、エンブレムを後期型仕様にしています。前期型は、鳳凰の周囲の色は白なんですが、友人にお願いして黒く塗ってもらい、後期仕様っぽく仕上げてあります。ヘッドライトも、購入した時点で後期型に装着されているポリカーボネート製のHID純正ライトに交換されていました。ステアリングは、インターネットオークションで見つけたセルシオ(20系前期型用)のものを流用しています。エアバッグの形状が同じなので、センチュリーにも取り付け可能でした。シフトノブは、木目の色合いや模様がしっくりする物が見つからず、何度も交換しました。そして、3回目にしてようやく納得できる雰囲気になり、ほっとしました。室内のルームランプをLEDに交換していますが、質感のある黄色をチョイス、タイヤは、奮発してブリヂストンのレグノを履かせています。さりげなくモディファイしつつも、なるべくオリジナルの外観を保つことに細心の注意をはらっています」。
あちこちに手を加えたくなる「モディファイ熱」は、もう1台所有しているスバル・サンバーに注がれているという。こだわりがちりばめられているオーナーのセンチュリーだが、あえてもっともこだわっているポイントを伺ってみた。
「このスタイルを維持することですね。しっかりとした造りなので故障は少ないです。メンテナンスは、購入したショップやディーラーに持ち込んでいますが、購入直後のプラグ交換と、経年劣化による電装系トラブル以外の故障は経験したことがありません。ただ、劣化した部品はこまめに交換しています。純正部品は今のところストックがあるようで一安心です」。
これほどセンチュリーを溺愛するオーナーだけに、新型の存在は気になるのか伺ってみた。
「オーナーとしては、正直言って新型センチュリーの存在はかなり気になります。他の高級セダンがモデルチェンジをしても、どんなスタイルか想像がつきますが、センチュリーの場合は20年ぶりのフルモデルチェンジとなるので、見た目以上にガラリと変わっていると思うんです。それだけに、実車を見るのが今から楽しみです」。
最後に、今後このセンチュリーとどう接していきたいかを伺った。
「大げさかもしれませんが、生涯乗り続けたいという思いがあります。将来、家族ができたら、ファミリーカーとして乗れたらいいなと思います。それと、若い人にはもっとクルマに乗って欲しいです。同じ趣味の仲間がたくさんできれば楽しいですよね。オフ会ではぜひ、気軽に声を掛けてもらいたいです。リアトランクのアンテナが目印です。よろしくお願いします!」。
「若者のクルマ離れ」と言われて久しいが、こだわりと情熱にあふれたオーナーのような若者は少なくないはずだ。「念願のクルマが手に入る幸せは、何物にも代え難い」。そんな価値観を愛する若者たちは、確実に存在している。
新国立競技場の改修工事が急ピッチで行われている建物の横を、センチュリーが走り抜けていく。2020年東京オリンピックまであと2年だ。新しい時代の幕開けを、若きオーナーは溺愛する12気筒エンジンを搭載するセンチュリーと迎え、その記憶を後世に伝えていく使命を担っているのかもしれない。
【撮影地:赤坂迎賓館前(東京都新宿区)、新国立競技場周辺(東京都新宿区/渋谷区)】
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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