「最愛の恋人であり、親友」。2018年式ポルシェ・911カレラ4S(991.2型)を愛でる女性オーナーの情熱
クルマが好きな女性は「クルマ好き女子」となどと呼ばれることがある。しかし、今回登場するポルシェ・911カレラ4S(991.2型、以下カレラ4S)のオーナーは「クルマ好き女子」と括るには、あまりにも「男前」過ぎるかもしれない。愛車へのこだわりだけでなく、ポルシェそのものへの熱い想いが伝わってくるからだ。
彼女のパートナー、カレラ4Sは2018年式。991型のなかでも後期型にあたる。ボディサイズは全長×全幅×全高:4499×1852×1298mm。駆動方式は4WD。搭載される排気量2981cc、水平対向6気筒DOHCエンジンは最高出力420馬力を誇る。オーナーのカレラ4Sは、新車で購入してからわずか9ヶ月で走行距離1万キロを超えた。普段、愛車へはどのように接しているのだろうか。
「ほぼ毎日乗っていますね。このクルマは必ず綺麗にしてから乗らないとダメだというポリシーがあるので、洗車はこまめに行っています」
オーナーはこれまで928GTS、カイエンS、911の996型カレラ4Sなどを乗り継ぐ、「生粋のポルシェ・フリーク」だ。近年、急速に右ハンドル仕様が増えつつある911において、彼女のカレラ4Sはあえて左ハンドルをチョイスしたという。さらに、漆黒のボディカラーと真紅の内装の組み合わせが目を惹く。聞けば、ボディカラーはいつも「メタリックの黒」と決めているのだとか。
「黒が好きですね。以前乗っていた928GTSも、白から全塗装しました。特に黒と紫・赤・ゴールドのいずれかと組み合わせた配色が好きなんです。今回は、その中から赤い内装を選びました」
20インチのホイールも、オプションでボディと同色にペイント。これで足元がグッと引き締まった印象だ。さらに、通常の走行モードに加え、登り坂や減速時に素早くシフトダウンして加速体勢に入るモードを加えた「スポーツクロノパッケージ」が選択されている。
「911の次期モデルと噂される『992型(仮称)』には、プラグインハイブリッド仕様が導入されるといわれています。ガソリンだけで走る911に乗るのはこの991型モデルが最後かもしれないので、心残りのないように思いきり贅沢をしました。ジェットブラックメタリックという名のボディカラー、ブラック/ボルドーレッドの内装、LEDヘッドライト、パワーステアリング・プラス、スポーツクロノパッケージ、ボディと同色のホイール、スポーツエキゾースト、電動ガラスサンルーフ、シートベンチレーション機能などのオプションを選んでいます。トランスミッションはPDK(ポルシェ ドッペルクップルング)を選択しました」
そして、「同乗者」であるピンク色の子ブタは、1971年のル・マン24時間レースのマシン「917/20」に施されたカラーリング「ピンク・ピッグ」をイメージしたぬいぐるみだ(今年のル・マンにも、このカラーリングを再現した911RSRが出走した)。こんなところにもさりげなく、オーナーのポルシェ・フリーク度の高さが伺えるが、よほどポルシェに精通した人でない限り、彼女がそこまでの想いを持ってこの子ブタを乗せていることには気がつかないかもしれない。そんなオーナーが、カレラ4Sでもっとも気に入っている部分は?
「エンジンを掛けた瞬間の排気音ですね。そのためにオプションのスポーツエキゾーストを選んだようなものです。あの瞬間に湧き上がる高揚感がたまりませんね。もともと『エンジンを掛ける動作』が好きなんです。納車されてから9ヶ月経った今でも、エンジンを掛けるたびにゾクゾクしています」
まさにポルシェに精通した人が選び抜いたこだわりのカレラ4Sだ。オプションのチョイスからも「本当にポルシェ・911が好きな人が乗っている」クルマであるとわかる。彼女がここまでポルシェを愛するようになった原体験を伺った。
「小学生の頃はスーパーカーブームの真只中でしたが、弟とともに『ポルシェ一筋』でした。当時はレースモデルに憧れていて、弟は934を、私は935がお気に入りだったんです。大学生になった頃、たまたま知り合った友人が928に乗っていて、そこで初めてそのクルマの存在を知りました。それまで、ポルシェの市販モデルといえば911しか知らなかった私は、見た目の美しさやラグジュアリー感も備えた乗り味にすっかり魅了され、その後、中古の928GTSを手に入れました。中古車だったのは、手に入れる時点で絶版モデルだったからです。この個体はとにかく故障が多くて、とうとう『部品取り車』が必要な状況になってしまい、まさに断腸の思いで手放しました。後に996型カレラ4Sを迎えたのは、『928ロス』を埋めるためでもありました」
オーナーのポルシェ・フリークを不動のものとした928GTSだが、彼女の「人生を変えた1台」はまた別にあるという。
「別の友人が乗っていた911ターボ(964型)の強烈な加速に衝撃を受けました。その人のドライビングテクニックが相当なものだったので、964型ターボの性能を知ることができたと思います。『ポルシェに乗るならそれなりの技術を』と言うお父様の命令で、レーサーのプライベートレッスンを受けながら練習をしたそうなので、限界を引き出す走りをしつつも、スムーズ&ジェントルな運転で安心できるんですよね。本当に運転が上手な人で、弟もその友人が操るクルマに同乗させてもらい、とうとう930型の911ターボを購入してしまいました」
愛するポルシェに囲まれて過ごしてきたカーライフを経て今、カレラ4Sを選んだ理由は?
「試乗や代車で乗る機会があり、エンジンのレスポンスの良さはもちろん、928GTSのラグジュアリー感を兼ね備えていて、911も928も好きという気持ちを満たしてくれています。そして、スポーツも街乗りも楽しめて、年齢を重ねても一緒に居られるのがカレラ4Sを選んだ理由です」
さらに突っ込んで尋ねてみたくなった。オーナーにとって「ポルシェ」という存在とは?
「取り憑かれたら最後、くらいの『魔力』があるクルマですね。ポルシェが好きなクルマ好きは、『人生最後の1台も必ずポルシェ』と言わしめる魔力を持った存在です(笑)」
あらためて、ポルシェというクルマの奥深さを感じる。モデルを重ねていくごとに間口は広がっているが、マニアやディープなファンの需要も満たす魅力が確実にある。オーナーはこう続ける。
「まもなく発売になる992型の存在を知りつつも、敢えて991型を選びました。992型は初めてPHEVが投入されるといわれているモデルだからです。私は、内燃機関が好きなんです。確かに、環境に配慮した方向性は良いと思いますが、この先クルマとしての魅力を感じなくなるのでは…というある種の怖さがあります。クルマとは、速さや快適さだけではなく、エモーショナルな部分を必ず持っていると思ってきました。そのため、メーカーには『長く愛されるいいモノ』をもっと大切にしてほしいですね。例えば、古いクルマに課税するような行為は理解できないんです。環境重視の方向性は大切ですが、エモーショナルさを享受できる選択肢は失いたくありません。環境にいいことは、もちろんみんなにとっていいことではあるけれど、他で気をつければいい部分もあります。なぜ、みんな同じ方向に向かせようとするのかが納得がいかないですね」
最後に「決意表明」として、今後愛車とどう接していきたいかを伺った。
「今までもずっとそうでしたが『最愛の恋人であり親友』です。今後、どんなクルマに乗り換えてもそう答えると思います。誰にも見せない顔を、愛車には見せています。辛いことがあったときには、車内で好きな音楽を聴いて癒されたこともたびたびあります。うれしいときも、悲しいときも共有していける大切な存在です」
ポルシェはもちろん、クルマへの深い愛情は、多くのクルマ好きの共感を呼ぶことだろう。そして何より、これほど優雅でビビットな存在感を放つカレラ4Sを颯爽と乗りこなすオーナーの撮影風景を眺めていると、まるで映画のワンシーンを撮っているのではないかと錯覚してしまったほどだ。
オーナーは単なる見栄やミーハーな気持ちでポルシェに乗っているわけではない。よほどのポルシェ・フリークでない限り、彼女のクルマに対する想いに圧倒されてしまうに違いない。それほどの情熱を秘めている。
ペーパードライバーや男性が運転するクルマの助手席に座るだけでなく、彼女のように颯爽とスポーツカーを乗りこなす女性がもっと増えてくれたら、日本の路上がもっと華やかになるに違いない。そう思えてならないのだ。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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