ソーラーオレンジという名のボディカラーに一目惚れ!トヨタ・86 GT Solar Orange Limited High Performance Package(ZN6型)
街中を走っているクルマを見たとき、おそらくは日本のどの地域でもモノトーン系のボディカラーが多いのではないだろうか?
最近では、鮮やかなボディカラーに塗られたクルマを見掛ける機会も増えてきたが、その大半はまだまだ白・黒・シルバー系統が多いように思う。その反面、特定の色やボディカラーに思い入れがある人にとっては「ボディカラーが購入の決め手」になることもあるようだ。
今回は、まさに自身のパーソナルカラーを体現したようなボディカラーに惚れ込み、購入に至ったというオーナーを紹介したい。
「このクルマはトヨタ・86 GT“Solar Orange Limited High Performance Package”(ZN6型)です。2016年11月に発表され、2017年1月までの期間限定で受注していた特別仕様車なんです。購入の決め手は『ソーラーオレンジ』という名前のボディカラーでした」。
トヨタ・86(以下、86)は、2012年にトヨタとスバル(発売当時は富士重工業)が「直感ハンドリングFR」をコンセプトに共同開発したことで誕生したスポーツカーだ。トヨタが販売するモデルは、いまだに絶大な人気を誇るハチロク(AE86型)の血統を感じさせる「86」と名付けられ、スバルで販売するモデルには「BRZ」の名が与えられた。この86とBRZは、エンブレムの相違だけでなく、クルマのデザインも異なっている(この違いをわずかと感じるか、まったく異なると解釈するかは人それぞれだろう)。
86のボディサイズは、全長×全幅×全高:4240x1775x1320mm。「FA20型」と呼ばれる排気量1998cc、水平対向4気筒直噴DOHCエンジンが搭載され、最大出力は207馬力(AT車は200馬力)を誇る。発売以来、何度かの仕様変更が行われ、2016年には初めてのマイナーチェンジが実施された。その際、外観の仕様変更やボディ剛性の強化、エンジンやサスペンションの改良などが施され、オーナーが所有する“Solar Orange Limited High Performance Package”は、この仕様に準じて「期間限定販売」で設定された特別仕様車(オプション装着車)となる。
まずは、オーナーがソーラーオレンジの86を選んだ理由を伺ってみた。
「もともと86には興味があったんですが、私には2人の子どもがいるので、スポーツカーのような趣味性の高いクルマではなく、『オレンジパールクリスタルシャイン』という名のオレンジ色のアクア(AT車)に乗っていました。あるとき、ふとマツダのディーラーでロードスター(ND型)が目に入り、試乗させてもらったんです。このとき、初めてMT車を運転する楽しさを実感しました。しかし、2シーターのクルマを家族用として所有するわけにもいかず、マツダ・アクセラ(MT車)を買い足したんです。その後、オレンジ色のボディカラーを纏った、この“86 Solar Orange Limited”が期間限定で発売されると知り、何とか妻に頼み込み、アクアの替わりにこの86(MT車)を購入したんです」。
オーナーは「オレンジ色」に思い入れがあるようだが、そのきっかけとは何だったのだろうか?
「あれは高校生のときの体育祭でした。クラスごとに色分けされるんですが、『私が在籍していた組の色がオレンジ』だったんです。以来、オレンジ色が持つ優しさとエネルギッシュさの絶妙なバランスに魅力を感じるようになり、この色が私にとってパーソナルカラーとなりました。現在、35歳になるのですが、私にとって原点でもある『エネルギッシュに優しく生きる』ことを表現できる色だと思っています」。
オーナーが愛用するスニーカーや腕時計もオレンジが差し色として使われており、この“Solar Orange Limited”も、まるでオーナーのために仕立てられたクルマのようだ。ということは、気に入っている点もボディカラーなのだろうか?
「はい。『ソーラーオレンジ』のボディカラーですね。内装の差し色にさりげなくこの色が使われている点も、とても気に入っています。シートやステアリングなどのステッチや、ダッシュボードの86ロゴの刺繍までオレンジなんです。せっかくなので、エアコンの吹き出し口のリングやチャイルドシートも、オレンジ色があしらわれているものを選びました。私のクルマはオプションの“High Performance Package”を装着しているので、リアスポイラーやBrembo製のブレーキ、SACHS製アブソーバー、このモデル専用のアルミホイールなどが組み込まれています。足元からBrembo製のキャリパーが顔を覗かせているのって、クルマ好きとしては単純にカッコイイなと思いますね(笑)」。
以前から気になっていたという86を手に入れたことで、何か変化はあったのだろうか?
「この86を手に入れたことで、私がクルマ好きだということが分かったんでしょうね。職場でクルマ好きの同僚から話しかけられるようになりました。それから、いつもガソリンを給油しているガソリンスタンドの店員さんもこの86が気になるようで『僕に洗車させてください』ってアピールしてきます(笑)。実は、カーシェアリングのクルマとして登録していまして、さまざまな人たちがこのクルマに興味を示して借りてくれるんです。20代の若い人たちも楽しんでくれていますよ。いずれも、この86を所有していなかったら体験できなかったことばかりです。『クルマがコミュニケーションツールになること』に気づいたのは、86のお陰だと思いますね」。
86は名実ともにスポーツカーだが、実用性についてはどうだろうか?
「現在は、アクセラからマツダ・デミオ(AT車)に乗り替えたので、家族でロングドライブに出掛けたり、荷物が多い場合はこちらを使います。短距離の移動であれば86を使うこともありますよ。86はスポーツカーでありながら、子どもが小さいうちは家族で移動することもできます。それに、乗りやすさと運転する楽しさを両立させている点も素晴らしいと思いますね。低速で6速までシフトアップして燃費走行にも対応できるような柔軟性も持ち合わせつつ、スポーツカー本来の俊敏な走りにも応えてくれるんです。ホンダのディーラーで、発売されたばかりのシビックタイプRにも試乗してみましたが、こちらはかなり『とがっているな』という印象でしたから」。
最後に、この86と今後どのように接していきたいと思っているのか聞いてみた。
「現在、6歳になる息子がいるんですが、86に乗せてあげると喜ぶんです。息子には『将来、運転免許を取得したらドライブさせてやるぞ』って話しています。一説によると、この“Solar Orange Limited”は140台くらいしか造られなかったそうです。もしそれが本当なら、86の中でも稀少なクルマですし、いずれ息子に乗り継いでもらうためにも、こまめにメンテナンスして大切に乗り続けたいですね」。
2018平昌冬季オリンピック開会式において、日本選手団が入場行進の際に身につけていた公式ウェアの色は、赤に近い色合いの鮮やかなオレンジだった。これはアシックス社製のもので「サンライズレッド」と名付けられているという。奇しくも、オーナーの愛車のボディカラーである「ソーラーオレンジ」に近い色合いだ。開会式会場の白いステージに、「サンライズレッド」が映えていたように思う。
「ソーラーオレンジ」の86が街中を走るだけで、街がエネルギッシュに、そして華やかになるようだ。2020年東京オリンピック開催まであと2年。モノトーン系のボディカラーばかりではなく、この86の「ソーラーオレンジ」のような色合いを持つボディカラーのクルマが増えることで、日本の風景がガラリと変わるかもしれない。
【撮影地:品川埠頭周辺(東京都品川区)、臨海エリア周辺(東京都江東区)】
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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