多忙なビジネスマンのデジタルデトックスを支えるトヨタ RAV 4オフロードパッケージ
神奈川県と静岡県の県境にある、川の源流域。あいにくの雨模様だが、若松成樹さん(45歳)は岩陰に向かってルアーを投げては、より良いポイントを求めてどんどん川を登っていく。
渓流釣りと言うとイワナやヤマメなど警戒心の強い魚との根比べ。1カ所でじっと魚がかかるのを待つイメージがあったが、若松さんは数回ルアーを投げてヒットしなければ、すぐに次のポイントに移動。クルマを停めた場所からはすでにかなりの距離を進んでいる。
「僕は短気な性格なので1カ所でじっとしているのが苦手なんですよ。だからルアーを使ってポンポンとポイントを変えていくのが性に合っています」
少し下流の駐車場に停めてあるのは昨年10月に発売された現行型トヨタ RAV4の特別仕様車であるオフロードパッケージだ。RAV4の中でもタフな仕様であるアドベンチャーをベースに最低地上高を10mmアップし、ブリッジ型のルーフレールやオールテレインタイヤを装着したオフロード仕様。
若松さんはこのクルマに、12年間乗り続けた4代目オデッセイから乗り換えた。
「オデッセイを買った時はまだ子どもが小さかったので、普段使いを考えると3列シートのミニバンが便利だろうと考えました。一方で、走りの面では重心が低いステーションワゴンも捨てがたい。オデッセイならミニバンとワゴン、両方のメリットを享受できると考えたのです」
12年の月日が流れると子どもたちも大きくなり、さすがに乗り始めた頃ほど一緒に出かけることもなくなった。次に乗るクルマは何にしようと家族で話し合う時、若松さんは思い切ってある提案をする。
「『家族4人でクルマに乗る機会が減ったから趣味の釣りを楽しむためのクルマを選びたい。一番欲しいのは……ジムニーなのだけれど』と自分の希望を正直に話しました。でも結果は想像通りです。『減ったとはいえ4人で出かけることもある。その時に全員で乗れないでしょう!』『ジムニーだと荷物がたくさんある時に困る!』と大反対されました」
自分の趣味を押し通したい父親と、そんなことは関係ない3人による家族会議、若松さんにとってはかなりの修羅場だったはず。でも反対する奥様やお子さんたちの気持ちも十分すぎるほどわかる。
軽自動車ながらFRベースの4WDでボンネットがかなり長いジムニーは、軽ハイトワゴンなどと比べると室内空間はかなり狭い。父親の趣味など関係ない3人にとっては、わがままを押し通されるのは迷惑以外の何者でもなかったはずだ。
仕方なく若松さんは再び買い換えるクルマの検討に入る。だが、最高の趣味グルマを手に入れるという夢を絶たれてしまい、いまいち自分の中でモチベーションを上げられなかったのだろうか。なかなか候補を検討できずに時間だけが過ぎていった。
「それで、今回はトヨタのディーラーで働く幼馴染に相談しておすすめのクルマに乗ろうと思ったんです」
若松さんは幼馴染に連絡し、趣味グルマが欲しかったが家族から反対されたことをありのままに話した。すると「ちょうどピッタリのモデルが出たばかりだ」と教えられた。それがRAV4のオフロードパッケージだった。
「実は標準モデルのRAV4はWEBサイトを見ていたのですが、そこまで欲しいとは思わなかったんです。でもオフロードパッケージはカタログを見て『これはカッコいい!』と思いました。ごついタイヤやマットな感じで塗装されたスキッドプレートやエンブレムが迫力あるなと。そこからはとんとん拍子で話が進みましたね」
契約をしたのは2020年11月で、納車されたのは2021年4月。この5カ月間はかなり待ち遠しかったに違いない。ところが「ちょうど仕事が激務で、すっかり忘れていました」と笑う。
若松さんはSTARBOARDというSUP&ウインドサーフィンのブランドで営業の仕事をしている。近年SUPは人気が高まっているが、コロナ禍でブームに拍車がかかり、文字通り猫の手も借りたいほどの忙しさに。
週末は会社から支給された日産 NV350キャラバンにSUPをたくさん積み、全国各地で行われる試乗会の会場を回っている。若松さんの休みは必然的に平日になるが、取引先などは動いているのでスマートフォンが鳴り止まない。実際、インタビューの最中も何度も電話がかかってきていた。
ちなみにNV350キャラバンは社用車だが、若松さんがみずから選んだそう。荷物をたくさん積める1BOXといえば、ハイエースとNV350キャラバンが2大巨頭。若松さんはなぜNV350キャラバンを選んだのか。
「仕事ではものすごい距離を走るので、燃料代が安いディーゼル車が絶対条件になります。ところが当時はハイエースのワイドボディ×ハイルーフで4WDだとディーゼルの設定がなかったんですよ。あと、ハイエースの4WDはフルタイム式になりますが、NV350はパートタイム式です。僕の使い方だと高速道路は2WDで走って、試乗会で砂浜に入る時は4WDに切り替えるほうが好都合なのです」
クルマに詳しくない人、クルマは好きだけれど1BOXに興味がない人だとどちらも同じように見えるかもしれないが、プロはそれぞれの目線でベストな道具を選んでいるのがおもしろい。
さて、4月に納車されたばかりのRAV4だが、若松さんは2カ所ほど手を加えている。ひとつは車高を1.5インチリフトアップ。釣りで山奥を走る時やSUPで砂浜を走る際に少しでも最低地上高を確保しておきたいという実用面を考えてのカスタムだ。これは車検にパスできる範囲で構造変更が必要なかったので、納車前にディーラーで作業してもらうことができた。
もう一つはトヨタエンブレム。特別装備の「OFFROAD ADVENTURE」「RAV4」というエンブレムはガンメタリックカラーなのに、トヨタエンブレムは普通のシルバーメッキだったことに違和感を覚え、フロントはラッピングで、リアは周囲をマスキングしてスプレーで塗装した。この作業は空いた時間に自分で行っている。
「スプレーは失敗したら剥がせるタイプのものだったので、新車でも躊躇なく行うことができました。このラッピングと塗装で表情にしまりが出たと感じています」
納車から数カ月。本業が忙しいのでまだ数えるほどしかRAV4で釣りに行けていない。それでも山の中に入っていくと、タイトなコーナーもダイナミックトルクベクタリングAWDの効果で気持ちよくクリアできることを実感している。
最低地上高は少し上げただけだが、山奥の未舗装路のわずかなスペースでUターンするときなどの安心感が高いそうだ。今後はSUPを積んで海にも行く予定。そんな時も最低地上高の高さが効いてくるだろうと話す。
若松さんの話を聞いていると、納車されてからわずかだが早くもタフな道具としてRAV4を使い倒していることが伝わってくる。ハードに使えばその分キズなどがついてしまうリスクも上がるし、砂浜を走れば塩もつく。まっさらな新車をそのように使うことに抵抗はないのか。
「趣味の道具というのは手に入れたら好きなことを楽しむために躊躇せずに使わないと。林道を走って泥だらけになったり、小枝で擦ってボディにキズが入ったりしても仕方ないと割り切っています。一方で、僕は自分の道具が汚い状態のままなのは許せないたちで。思い切り遊んだ後はしっかり手入れをして、次もまた気持ちよく使えるようにしておく。SUPもクルマも、これは変わらないですね」
本降りの雨の中でも気にせず山の中に入り、ルアーを投げながら魚との知恵比べに興じる。若松さんにとって釣りを楽しんでいるのはどんな時間なのだろう。
「僕はオンタイムの多くを潮風の中で過ごしています。渓流はその真逆の場所で、釣りを楽しみながらマイナスイオンを浴びていると気持ちがリセットされる感じがあります。あとはクルマを駐車して山の奥まで入っていくと、携帯の電波が届かなくて電話が鳴らないのも心地いいですね」
申し訳ない気持ちで電話を無視するのではなく、電波をキャッチできないのだから仕方ないと考え、趣味に没頭する。家族と過ごす休日でも仕事の電話が頻繁にかかってくる若松さんにとって、わずかな時間でもデジタルデトックスすることで、心のバランスを保つ。
まだ付き合いは短いが、RAV4はこれから若松さんにとってなくてはならない存在になっていくだろう。
(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/柳田由人)
[ガズー編集部]
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