15年間乗り続けても浮気したいクルマが見当たらない!10台もの愛車を乗り継いだ男が惚れ込んだNBロードスター

バンパー中央のダクトを塞いだ先に丸目2灯のフォグランプを配置した思い切ったレイアウトに、左右のダクトはどこかフェラーリF360モデナを連想させるデザイン。
オーナーが「このバンパーをつけているのは、全国にもう1台しか見たことがない」と話すこちらのNBロードスターは、静岡県のK.G.Worksというプロショップがオリジナルエアロキットを装着し、デモカーとして2004年に制作した1台だという。

オーナーの山本さん(静岡県在住)は現在58才。これまで10台もの愛車を乗り継いできたが、もっとも長く所有し、デモカー当時の状態を15年にわたって維持し、乗り続けていることからも思い入れの深さがうかがえる。

山本さんの愛車遍歴を簡単に紹介すると、はじめての愛車は2ドアクーペのカリーナ。ハイソカーブームのなかで初代のクレスタを乗り継ぎ、続いてターセルへ。オートバイレースの運搬用も兼ねてハイエースも所有し、そこからマークⅡ、ランドクルーザーとここまでの愛車はすべてトヨタ車が続く。

仕事の関係でカナダとアメリカに移住してからは、現地でダッジ・キャラバンに乗り、日本に帰国してから、はじめてのオープンカーとしてNA型ロードスターを所有。再度海外へ赴任した際には、トヨタ・カムリソラーラのコンバーチブルを選び、次に帰国したときに手に入れたのが現在のNBロードスターとなる。

「NAロードスターでオープンカーの魅力を味わってからというもの、コンバーチブル、オープンと3台続けて屋根が開放できるクルマを乗り継いでいます」とは山本さん。

「とくにアメリカで乗っていたときの開放感がたまらなかったですね。サンルーフ付きのクルマとは、また違った感覚です」と話す。オープンカーのなかでも最初に乗ったNAロードスターは、新車発表当時に憧れを感じつつも、家庭環境ゆえに一度は諦めたクルマだった。

「NAロードスターが発売した当時は、子供がまだ小さくて2シーターが選べなかったんですよね。ところが海外から帰ってきたら、もう子供も十分手が離せるほどに成長していて」
「帰国直後は自分のクルマじゃなく、おふくろのクルマを借りて乗っていたんです。それで後部座席まで使う場面がどれくらい残っているんだろうと意識しつつ乗っていたら、後ろに人を乗せたのは半年で焼き肉屋に家族と行った2回だけでした(笑)。それならもう2シーターのクルマに乗ってもいいだろうと思い、ずっと欲しかったNAロードスターを買いました」。

そこからは、再びの海外赴任でNAロードスターを手放すことになるのだが、アメリカでもオープンカーに乗り続けた山本さんが、帰国後もう一度乗りたいと思ったのも同じNAロードスターだった。

「今まで自分で所有したクルマ、借りて試し乗りしたクルマも含めて、性能のいいスポーツカーは『クルマに自分が操ってもらっている』という感覚があったんですが、ロードスターは乗りづらさを感じる部分も含め『自分が操っている』という気持ちになれるんですよ。それが好きなところですね」。

そして、静岡県のロードスター専門店『アイスタイリング』を訪問し、NAロードスターを再度購入したいと相談。それは2006年のことだが、NA型は最終モデルでも販売から8年が経過しており、長期的に乗ることを前提にすると早い段階でメンテナンス費用がかさむことを指摘されてしまう。

「それだったら新しいほう(NB型)に乗ったほうがいいと言われ、そのときにアイスタイリングに入庫していたのがこのクルマだったんです。その2年前、2004年にK.G.Worksがデモカーとして製作し、NC型が発売されたことで役目を終え、買い手を探しているような状態でした」

一般的なロードスターとは一線を画す、特徴的なエアロパーツが気に入ったこと、かつてNAロードスターオーナーだったからこそ、NBロードスターに乗り換えて違いを感じてみたかったという理由から、購入にあたってほとんど即決のような選び方だったという。

「実際に乗ってみたらNAからNBまで10年間の進化をしっかり感じましたね。とくにボディ剛性が上がっていることがよくわかって、NAよりも自分が操ったとおりに動いてくれるような感覚でした」と当時の感触を振りかえってくれた。

エクステリアは、購入当時からほとんどそのままを維持しているが、15年間連れ添うなかで数々のトラブルも経験してきたという。

「センターダクトがないデザインのエアロなので、そこから風が入らなくて最初の3年間はオーバーヒートに悩まされましたね。ただ、このルックスが好きで選んでいるので、外見を変えたくない。そこでバンパーの下から導風できる仕組みを作って解決しました」

シートは、2シーター車向けを中心にアフターパーツを提供しているエスケレート製のタイプNというモデル。ヘッドレスト付きのバケットシートのようなスタイルは、大人の雰囲気とスポーティさを兼ね備えていて、ファブリックをアルカンターラに張り替えることで高級感も醸し出す。

シートのアルカンターラに雰囲気を合わせ、ダッシュボードにはワインレッドカラーの植毛塗装が施されている。これらは車両のメンテナンスを依頼しているアイスタイリングの工場長の趣味とのことだ。

3年前、走行距離が18万キロになったタイミングでエンジンをまるっと交換。神戸の老舗ロードスターショップ「タックイン99」の手によって、ピストンのオーバーサイズ化やクランクシャフトのバランス取りが行われたチューンドエンジンを搭載している。

「当時はチューニングする気もぜんぜんなかったんですが、アイスタイリングさんに『こんなエンジンの在庫があるけどどう?』と言われて、ちょっと予算はかさんだけど思い切りました」と山本さん。

「どこから踏んでいってもキレイに回る」と全回転域でトルクアップを体感でき、10年以上乗った愛車を新たな感覚で楽しめるようになり、大正解の選択だったそうだ。

愛車遍歴を聞いてのとおり、かつては同じクルマに3年以上乗り続けることはまれだったという山本さんだが、こちらのNBロードスターは所有してから15年を数えている。

「今でも新車のニュースを見る機会はあるけど、このロードスターに乗ってからはあまり記憶に留まらなくなりましたね。浮気するクルマが見当たらないので、これからもずっと乗り続けるつもりです」と山本さん。

これからもメンテナンスを欠かすことなく、走行20万キロを超えたら足回りのリフレッシュを施し、もう一度購入当時の感覚を味わうのが楽しみと嬉しそうに語ってくれた。
これからもロードスターともに、元気に走り続け、ミーティングやツーリングを楽しむ山本さんの笑顔は輝き続けるだろう。

(⽂: 長谷川実路 / 撮影: 市 健治)

[ガズー編集部]

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