エスティマハイブリッドという“理想の1台”にたどり着いたプロスノーボーダーが放つ次の一手

  • トヨタのエスティマ ハイブリッド

2021-2022シーズンは各地のゲレンデで積雪に恵まれ、ウィンタースポーツを楽しむ人にとっては天国のような状態になっている。今回我々が訪れたのは、新潟県湯沢町にある神立スノーリゾート。ここで、プロスノーボーダーの石川敦士選手にお会いした。

石川さんはTOYOTA BIG AIR、NISSAN X-TRAIL JAM、SLOPESTYLEなど、さまざまな大会で活躍。2019年から2021年12月までは中国オリンピック協会育成プロジェクトのスノーボードヘッドコーチを努めた。

また、スノーモービルを使って一般のスノーボーダーではとても入れないような未開の場所を探索し、撮影などを行っている。この日も神立のバックカントリーで撮影をさせていただいた。

スノーボーダーが選ぶクルマといえば、真っ先に頭に浮かぶのは荷物がたくさん積める4WD車。ところが石川さんの愛車歴を見ると、トヨタ サイノス、トヨタ マークII、日産 キャラバン、トヨタ プリウスなど、2WD車が多い。
しかもサイノスはコンパクトなクーペだし、プリウス(30系)はルーフが大きく傾斜したハッチバックだ。荷物をたくさん積んで……というイメージからは程遠い。

「サイノスはじいちゃんから、マークIIはおやじから譲り受けたものでした。ゲレンデには1人あるいは2人で行くことが多いから後部座席やルーフボックスを使えば荷物は案外たくさん積めます。ゲレンデまでの道も圧雪されているので、スタッドレスタイヤさえ履いていれば意外と困ることはありません」

雪のシーズンは1年の1/4。そこに合わせたクルマ選びをするよりも、残り3/4の季節のことを考えたほうが満足度は高い。石川さんはそう考えてあえて2WDを選んでいた。プリウスはその最たるものだったという。

「プリウスに乗っていた時、最優先したのは燃費です。僕は全国のゲレンデとアドバイザリー契約をしていて、スノーボードパークを企画・デザイン・設計するという仕事もやっています。そのため、シーズン前でも自宅のある千葉から各地にクルマを走らせます。これまでもっとも多い時は冬のシーズンだけで6万km近く走ったことがありました。だから燃費はとても重要な性能です」

  • トヨタのエスティマ ハイブリッド
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まだプロになる前は、2WDでも困ることはなかった。最悪、大雪で2WDでは走れないという状況になったら、その日はゲレンデに行くのを諦めればいい。

しかしプロとしての活動が始まり、全国のゲレンデを行き来するようになると、どんな状況でもゲレンデに向かわなければならないし、約束の時間に遅れることもできない。
実際、プリウスに乗っていた時は前を走るクルマが深い雪の中で停止したことで自分も停止しなければならなくなり、圧雪されていない雪の中から動けなくなった経験が何度かあったという。

このようなリスクを避けるため、プリウスの後は4WDを選ぶようになった。乗ってきたクルマは日産 セレナ、トヨタ ノアだ。

「ミニバンを選んできたのは、サッカーをやっている息子の送り迎えを考えたからです。また、僕は冬になるとほとんど自宅に戻らず、板を4〜5枚、ブーツ数足、数個のトラベルバッグを積んで全国を旅しています。やっぱり何も気にせずに荷物を積めるクルマのほうが楽だとわかりました。板は中積みしたほうが安心ですしね」

セレナ、ノアはどちらも便利なクルマだったが、悪条件の中を長距離走る石川さんだからこその不満点もあった。そのひとつが背の高いモデルなので横風の影響を受けやすいこと。かつてのハイト系ミニバンに比べると改善されているとはいえ、地吹雪などでハンドルを取られることもあった。
また、背が高くてたくさんの荷物が積めることは便利だが、跳ね上げ式の3列目シートが干渉して荷物が積みづらいと感じることもあったという。

「そんな話を友人にしたら『それならエスティマがいいよ』と勧められました。その友人はかつてエスティマに乗っていたことがあって、僕が感じている不満をすべて解消してくれると言うのです」

エスティマの3列目シートは床下格納式。しかもハイト系ミニバンよりも全高が低い分、横風の影響は少ないと言われた。

元オーナーである友人の言葉を信じ、買い替え時は迷わずエスティマを選ぶことに。前述の通り、石川さんにとって燃費性能は何よりも重要視するもの。だからガソリンモデルではなくハイブリッドにした。

「エスティマハイブリッドは中古車で探しました。その際、絶対条件にしたのがヒッチメンバー付きであること。撮影でスノーモービルを使う際はトレーラーに載せて運びます。そのためヒッチメンバーは僕にとってマストな装備なのです」

しばらく探すと、2015年式で走行距離4万kmのエスティマハイブリッドが見つかった。

「友人が言っていたように、エスティマハイブリッドはラゲッジも使いやすいし、横風で煽られることも少ないので運転がすごく楽ですね。デザインも僕は最終型よりもひとつ前の顔のほうが好きなので、この年式がすごく気に入っています。E-Fourも雪の中で安心感がありますよ」

2019年初頭に手に入れたエスティマハイブリッドの走行距離は13万kmを超えた。
年間6万km近く走っていた頃に比べたらゆっくりしたペースですねと冗談半分で聞いてみたら、「2020年と2021年は中国に行っていたのであまり乗れてないんですよ」と返ってきた。3年間で9万kmという数字の半分以上は、最初の1年で稼いだ距離だという。
なるほど。やはり現在でもハイペースで走っているということだ。

今年に入り日本に戻ってきたので、エスティマハイブリッドの走行距離はまた飛躍的に延びていくだろう。石川さんのクルマの使い方だと買い替え時に下取ってもらうのは難しいので、もうこれ以上は無理というところまで走って乗り潰すことになる。

「そこが僕の悩みなんです。やっぱりある程度の額で下取ってもらって次のクルマの頭金にしたほうが楽ですからね。だからこれからは走行距離が延びる前に買い替えたほうがいいのかなとも思っています」

エスティマハイブリッドという理想のクルマにたどり着いた石川さん。しかし2019年で生産終了となったため、これから先もエスティマを選び続けることは難しい。新たなサイクルでクルマを乗り継いでいくとしたらどんなモデルにするつもりなのだろう。

「実は……スポーティなデザインが僕好みだったので、新しいランドクルーザー300のGRスポーツをオーダーしたんですよ。ただ、いつ納車されるかがまったく読めないのでどうしようかと悩んでいます。今考えているのは、ランクルが納車されるまでの間、ハイラックスに乗ろうかなと。ハイラックスならある程度距離を走っても下取りが期待できると思うんですよね」

ただ、ハイラックスは1ナンバーになるので高速料金が割増になる。距離を走る石川さんにとってこれは死活問題。クルマの買い替えサイクルをスイッチするのに、悩みはつきない。

石川さんにとってロングドライブは日常の一コマ。そこでGAZOO読者のためにロングドライブを快適に楽しむコツを聞いてみた。

「高速道路では片手でハンドルを持ってゆったり運転している人も多いと思いますが、僕は必ず両手でハンドルを持って、左右のおしりに均等に体重がかかるような姿勢を意識しています。左右どちらかにだけ体重がかかり続けると身体のバランスが崩れます。これはアスリートにとって死活問題だし、普通の人でもバランスが悪いと疲れやすくなります」

「あとはいわゆる“正しいドライビングポジション”で運転すること。シートをかなり前に出して姿勢も伸ばすから、寝そべり気味で運転している人だと最初は窮屈に感じるかもしれません。でも結局正しい姿勢で運転することが一番疲れないんですよ」

もうひとつ大切なのは、こまめに休憩をとること。そして眠くなったら無理せずに仮眠をすること。そのためには余裕を持ったスケジュールを組んで、のんびりドライブを楽しむべきだという。

話を聞いていると、石川さんが教えてくれたことはすべて運転の“基本中の基本”だ。トップアスリートは基本を大切にする。これはどのスポーツにも言えることだ。世界を股にかけて活躍する石川さんだからこそ、運転も“基本”に忠実なことが最善であるとわかっているのだろう。

(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/柳田由人 編集/vehiclenaviMAGAZINE編集部)

[GAZOO編集部]

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