当時の本物パーツで作り上げたスカイライン “R31マニア”のGTS-R
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日産・スカイラインGTS-R
趣味は人生に彩りを添えてくれるものだとはよく言われるが、その方向性や楽しみ方は人それぞれだ。いわゆる動きモノとされるだけでも鉄道、飛行機、自転車など、その対象は様々だし、そのなかでもさらにジャンルが細分化されている。
もちろんクルマを趣味としている人たちもそれはまったく同様で、栃木県で開催された『クラシックカーヘリテイジカーミーティングTTCM2023』に1987年式の日産・スカイラインGTS-Rで参加していた松原さんを生物分類風に表すとすれば『クルマ趣味目 絶版旧車科 単一車種属 収集種』といったぐあいだろうか…。
松原さんがその魅力の沼にドップリとはまり込んでいるのが、日産を代表するスポーツカーであるスカイラインシリーズの7代目であるR31系。通称「7th(セブンス)スカイライン」と呼ばれるモデルだ。
デビューしたのは1985年だが、発売初期は4ドアモデルのみのラインアップとなっていたのが大きな特徴のひとつ。前モデルで奪われてしまった2000ccクラス販売台数トップの座をトヨタ・マークⅡから奪還すべく、当時ブームとなっていたハイソカー的な要素も積極的に取り入れられ、日産車では初となるカードエントリーシステムなどの豪華装備も採用されていた。
そして、1986年に追加された待望の2ドアスポーツクーペがGTSシリーズであり、1987年に800台限定販売されたのがグループAレース参戦用のホモロゲーションモデル、GTS-R。
搭載されている2000cc直列6気筒DOHCターボのRB20DETエンジンは、ステンレス製の等長エキゾーストマニホールドやタービン、インタークーラーなど専用パーツにより、ベース車の180psから210psにパワーアップされている。
伝統の丸形4灯テールの上部に掲げられた、Rを赤で強調したステッカーエンブレムが高性能の証だ。
そんなシリーズ最強の限定モデルGTS-Rだけでもクルマ好きにとっては垂涎の存在だが、このほかにも部品取り車を含めてR31系ばかりを複数所有しており、そのコレクションの中には1000台限定の2ドアスポーツクーペGTSツインカム24VターボNISMOも所有されているというから筋金入りである。
となれば、やはり気になるのはR31スカイラインを好きになったキッカケだろう。
「なんといってもR31スカイラインの魅力は、直線基調の角張ったボディのデザインなんですよね。最初のキッカケは2ドアスポーツクーペのGTSシリーズが発売されたというテレビCMを見て、速度に応じて作動するGTオートスポイラーに一目惚れだったのですが、当時友人が乗っていたR31の4ドアと比べて『2ドアになってこんなにカッコ良くなったのか!?』と驚いたわけです。そうして免許取得後に、最初の愛車として真っ赤な2ドアGTSを購入しました。以降乗り継いできたR31系は合計17台で、NAとターボ、2ドア、4ドア、5ドアのほぼすべてのモデルに乗りました。GTS-Rもこれが2台目で、2006年に中古で購入しました」と語ってくれた松原さん。R31系スカイラインに限らずとも、ここまで特定の車種にこだわって乗り継いでいる人はそうはいないのではないだろうか。
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日産・スカイラインGTS-R
そして、そんな貴重なGTS-Rに、松原さんはさらなるカスタマイズを施しているという。
見ての通りグループAに参戦したレーシングマシンをイメージさせる外観だが、カラーリングやグラフィック類を再現したレプリカではなく、外装の多くの部分に“本物”が装着されているのが注目すべきポイントと言えるだろう。
「トランクとドアミラーはグループAマシン、ボンネットはJSSマシンが装着していたものです。これらはかつて雑誌の企画などで放出されたもので、それぞれ別のオーナーが所有していたのですが、紆余曲折を経てすべて集めることができました。エクステリアはそれらの装着に合わせて、オールペイントとモール類などの交換でレストアしています」とのこと。
なるほど確かにトランクはフック固定タイプでクイックチャージの給油口付きだし、ボンネットがボディ色と異なっているのもカラーリングやステッカー類まで当時のまま使っているからと聞けば納得だ。
走りを感じるブラック基調のインテリアも、年月を感じさせない良好なコンディションとなっている。スピードメーターはインパルの260km/hタイプに変更され、追加メーターも当時物と思われる機械式のブースト計が装着されている。
リクライニングタイプのシートのほか、東名製の当時物ステアリングなど懐かしいアイテムのオンパレード。貴重な当時の純正オプション品であるADthreeマットガードも装着されているし、インパル製のホイールもセンターキャップにSKYLINEのロゴが入っているものはかなり珍しいものだそうで、長年乗り続けてきたオーナーならではの燻し銀なパーツチョイスが随所に見受けられるのだ。
「現在はブーストアップ仕様で、変更しているのはマフラーくらいです。400ps以上は出るグループAマシン用のタービンも持っていて、以前は装着していたこともあったのですが扱いやすさを重視してノーマルに戻しています。R31はノーマルの“どっかんターボ”的なフィーリングも魅力のひとつなんですよね」と松原さんは補足する。
35年以上も前のクルマなだけにトラブルなども気になるところだが、そこはさすがに国産車。これまでに大きなトラブルなどは経験していないようだ。
「最近やったのはエアコンの修理ですね。純正のR12冷媒は維持費も高いので、今年レトロキットでR134a冷媒タイプに変更しました。そのほかでは古いクルマは電装系のトラブルがつきものなので、一応ハーネス類も一通りはストックしています。このGTS-Rを普段の足としているわけではありませんが、運転もしやすいし遊びクルマとしてはなんの不都合もないですよ」
さて、ここまででも松原さんのR31への思い込みは十分に感じられたと思うが、取材中に「実はこんなものも…」と、スマホに収められていた画像で披露してくれたのが赤いカラーリングのR31だった。その正体はリコーニッサンスカイラインGTS-Rという本物のグループAレースマシン。聞けばそれ以外にも自宅の押し入れにはお宝物のグループAパーツなどを多数秘蔵しているとのこと。機会があれば、次回はぜひそうしたコレクションの数々もぜひ拝見させていただきたい!
取材協力:クラシックカーヘリテイジカーミーティングTTCM2023
(文:川崎英俊 / 撮影:平野 陽)
[GAZOO編集部]
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