アウトドア好きが「乗りたい」1台を!ダムドが軽自動車のエアロキットを提案する理由
『東京オートサロン2022』では、昨今ブームとなっているアウトドアを楽しむカーライフをコンセプトとしたモデルやカスタムカーが数多く出展され注目を集めていた。
エアロパーツやドレスアップカスタムをメインとする老舗エアロメーカー『ダムド』も、スズキ・ジムニーをはじめとする軽自動車をベースとしたコンプリートカーを展示しつつ、ごらんのとおりアウトドア感満点のブースを展開していた。
「ドライバーが愛車をもっと愛せる様に、その時代のライフスタイルに合わせたカスタマイズパーツをデザイン・製作し『乗りたい!』と思えるクルマを一台でも多く世の中に増やすこと」を企業理念として掲げるダムド。
そんな"カスタム屋さん”が、なぜ今アウトドアカーライフ向けアイテムを世に送り出すのか? そこに至るまでのルーツや今後への想いを、代表の面高翔五さん(35才)に伺った。
「根本にあるのは、クルマに興味がない人たちや、現状自分のライフスタイルにおいてクルマが必要だと感じていない人たちに対して、クルマを使う楽しみ方を提案し、わかりやすく伝えていくことでクルマに興味を持って乗ってくれるユーザーを増やしたい、そのキッカケのひとつを作りたいという想いです」
「その方法のひとつとして、キャンプ好きの僕自身や友人たちの実体験から、アウトドア好きでクルマが欲しい20代後半から30代の人たちが買いやすい軽自動車をベースに、アウトドアに似合うカスタムを提案したらどうかと考えました」
今回、ダムドがブースを構えていたのはオートサロン会場に併催されていた『TOKYO OUTDOOR SHOW』。
当然ながら来場者にはアウトドアは好きだがクルマにはあまり興味がないオーナーも多く、ダムドはその言葉どおり、アウトドアにマッチする軽自動車ボディキットをクルマ好き以外のオーナーに向けてアプローチしていたのだ。
「キャンプを始めてテントなどのギアを買い揃えるようになったサークルの後輩の影響で、僕も2013年くらいからアウトドアに興味を持つようになりました。みんな働き始めて少し経ってお金にも少し余裕ができてきたくらいの時期で、新鮮でカッコいいなーと思って自分でも道具をどんどん揃え始めるようになったんです」
「ただ、後輩達は都内に住んでいてクルマを持っていなかったので、僕がクルマを出してみんなの荷物を載せに行ったりしていました。そうこうしているうちに後輩がチェロキーを買い、他にも釣りとかキャンプとかサーフィンとかアウトドアを楽しむためにクルマを買っているなという人が周りに増えてきたんです」
20代後半から30代で都内に住んでいると、普通のライフスタイルならクルマは必要ないけれど、アウトドア派の人たちは趣味のためにクルマを購入していると気づいた面高さんは、「どんなクルマならみんなが欲しいと思うのか?」という点に思考を巡らせるようになる。
実は面高さんには以前、ご自身の愛車の紹介記事を取材させていただいたことがある。この愛車が新たな提案への糸口ともなっているようだ。
「僕はクラシックカーの117クーペに乗っていて、みんな『カッコいいね』とは言ってくれるけれど、不便だしメンテナンスや維持も大変なので実際にクラシックカーを買うのはハードルが高いんですよね。そして、アウトドア系で人気のクルマといえばランクルとかですが、予算を考えると手が出ないので後輩のように中古車を買うわけです。でも、よく壊れるからと1年くらいで手放してしまう…」
「そういう姿を見ていて、現行車でクラシックテイストを取り入れたアウトドア用のクルマというのがあったら、みんなが欲しいと思ってくれるんじゃないかなと」
そうして、『中身は最新で見た目はレトロというネオクラシック』というイメージを実際に具現化したのが、現行ジムニーのボディキット"little D."だったという。
そこで気になるのが、アウトドア向けのボディキットの車種展開が、なぜジムニーをはじめタフトやハスラーといった軽自動車ベースなのか、という点だ。
「例えばFJクルーザーやハイエースなどをベースにカスタムするとなると、400万500万、600万円とどんどん費用が膨らんでしまい、20〜30代の人たちは手を出しにくいですよね」
「でも、軽自動車ならボディキットを装着してホイールやタイヤを換えても300万円以下におさまるので、そうなると比較対象がコンパクトカーになるじゃないですか。そうすると、ノーマルでコンパクトカーに乗るよりも自分らしくカスタムした軽自動車を選んだほうがいいよね、っていう選択肢ができるかなと」
「実際、クルマ好きの感覚とは少し違って、クルマに興味のない今時の若い人にとって最近の軽自動車は広くて走行性能も十分だし、市場の4〜5割の市民権を持っている普通のクルマなんですよね」
こうして完成したコンプリートカーを会場に展示したダムドだが、圧巻だったのはまるで山の中のキャンプ場をイメージしたかのようなセットが施されたブースの世界観だ。
「アウトドア向けキットのプロモーションをするときに意識しているのは、クルマそのものだけを提案するのではなく『こういう風にしたら楽しいよな』と妄想しやすいように可視化することです。そこから先は自分でアレンジしていくと思うんですが、最初は少しヒントを見せてその後ろに繋がるストーリーまで描けないと、なかなかクルマを買うところまで踏ん切りがつかなかったりすると思うので」
「そのためにブースのデザインも、フラワーアレンジメントで世界観を作ってもらったり、キャンプ用品メーカーさんに協力していただいて市販のキャンプグッズで演出したり。このイラストも『この人の絵はこのクルマに合う』と僕自身が妄想して、車種ごとに違うイラストレーターさんに依頼して描いていただいたんですよ」
そんなダムドこだわりのブースで今回展示されていたのは、ジムニー、タフト、ハスラーの3台。
「今回展示したジムニーのリトルDは、ボンネットカバーとグリル、前後バンパー&フェンダーパネル、タイヤ&ホイールを交換して、ボディサイドにステッカーを施工しています。タイヤはオープンカントリーのコンセプトタイヤで、通常のホワイトレターよりも少し黄ばみがかって使い込んだ演出がされているのがポイントですね。車内にはチェック柄のレトロなシートカバーも装着しています」
「ジムニーでスタートしたリトルDですが、お客さんと話しているなかで『タフトで4ドアのリトルDを作っちゃおうよ』と(笑)。今後はブランド化していろんなシリーズでやってみようと思っていて、エブリィ用も夏頃の発売を目指して現在開発中です」
そして『アウトドアに欠かせないカラビナのように、あなたと大切な場所をつなぐ』という想いをこめて名付けられた『CARABINA』というボディキットを纏ったハスラーは、キャンプをイメージしやすいルーフテント仕様で展示されていた。
最後に、今後のアウトドアカーライフ向け企画について伺った。
「ダムドは見た目の部分は40年やっていますが、これからはキャンプ向けのボディキットを作っていく中でギア系も手掛けてみたいと思っています。例えば、このルーフラックは弊社のオリジナル商品です。ウッドパネルに使っているのは天然木材で、劣化もしますがそれも含めて味や質感を楽しんで欲しいと思っています。今後は重いものを積む時に便利なラダー(はしご)など、アウトドアカーライフをお手伝いできるようなパーツも作れたらいいなと」
ご自身の趣味と経験を生かし、アウトドア向けギアという新たな領域へと踏み出すダムド。その発信源である面高さんはこうも語る。
「まずはクルマに関わるファーストステップになればいいなと。それをキッカケに、お客さんが将来的にいいクルマを買って、カスタムして、とステップアップしてもらえたらと思っています」
面高さんを突き動かしているのは「クルマに興味を持って乗ってくれるユーザーを増やしたい」という熱い想い。そして、そのために日々前進し続ける、それこそがいまも昔も変わらないダムドの姿勢なのだ。
取材協力:ダムド https://www.damd.co.jp/
(文:西本尚恵/撮影:土屋勇人)
[GAZOO編集部]
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