「117 は僕のタイムマシン」若きエアロクリエイターを魅了するジウジアーロの名作(PA95)

20代や30代の若者世代にとって1960~70年代のクラシックカーは、青春時代の懐かしさや当時の憧れを抱える中高年世代の方とはまた違った価値を持つのかもしれない。そう思わせてくれたのが、20代で購入したいすゞ117クーペに魅了され、9年間乗り続ける神奈川県在住の面高翔五さん(34才)だ。

「僕は昭和のノスタルジックなものに対して憧れがあるし、あの頃の日本に生きてみたかった。117クーぺは、ちょっとだけその時代に足をつっこませてくれる、僕にとってのタイムマシンです」

そう語る面高さんが、小さい頃から大好きで何度も見返している映画が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。当然、作中でタイムマシンとして活躍したデロリアンも大好きだっただけでなく、父親が自動車関連の仕事をしていたこともあって小さなころからクルマ好きだったそうだ。

「当時、家に父親のカルマンギアが置いてあって、それに乗りたくて18才の誕生日にすぐに免許をとりました。それから2年くらいカルマンギアに乗った後は会社のクルマを乗り継いでいたんですが、初めて自分で貯めた給料で買ったクルマがこの117クーペです。きっかけは実家にあった雑誌『ノスタルジックヒーロー』。この表紙が117クーペで、めちゃくちゃカッコよく見えたんです。調べたら手が出ない金額でもないし、このクルマなら専門店もあるし乗れるかなと思いました」
そうして当時25才だった面高さんは、イスズスポーツで購入したこの117クーペのオーナーとなる。

いすゞの117クーペといえば、デザインをイタリアの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロが手がけ、当時の若者の憧れの一台でもあった1970年代の名車だ。

117クーペは3回のマイナーチェンジを行っていて、希少なハンドメイドボディと言われた前期、量産型に変わった中期、そして丸ライトから角目の変更が特徴的な後期に分かれる。

面高さんの117クーペは1975年製の中期型で、グレードはXT。排気量1817ccのシングルキャブレター・直列4気筒SOHCエンジンを搭載、最高出力は130馬力を発生する。
ちなみに購入時は年式やグレードへのこだわりはまったくなく「丸目とモスグリーンのカラーリングを見て『これだ!』と決めました」と直感で気に入った車両をセレクトしたのだという。
クラシックカーだけに、メンテナンスや維持が大変なのかと思いきや、「基本は買った当時の状態のまま、9年間晴れの日は毎日通勤車として乗っています。ヒューズの交換やプラグがカブったりとか細かいことはあるけれど、これまで大きな故障とかは今のところないですね。毎日乗ってあげているからというのもあるんでしょうが、日本車はすごい(笑)」と購入当初から好コンディションを維持し続けているというから驚きだ。

その日常メンテナンス自体はオーナーご自身が行っているが、実はたまに彼の父親がいじることもあるんだとか。
「カブり気味になったときのプラグの掃除の仕方など、旧車ならではの手入れについては父から教わることもあり助かってますね。ただ、ヘッドライトは元のハロゲンがお気に入りだったんですけど、気づいたら父の手でLEDになっていました(笑)」というエピソードも。

ちなみに、このクルマの購入時も、選びに行く際は旧車をよく知る父親と一緒にお店に足を運んだとのこと。新車とはちがった117クーペという旧車ならではの、親子の繋がり&コミュニケーションと言えるかもしれない。

そして毎日乗っているとなると、乗り心地や性能が気になるところ。
「キビキビ走るようなクルマではないので乗り心地的にはふわふわした感じです。当時は高級だったんだなーと思わせてくれますね。自分はのんびり音楽を聴きながら、窓全開にして海岸線を走るのが好きなので、そんな自分の性格にすごく合っていると思ってます。ちょっと踏むだけで回転数もあがるから飛ばしてないのに走らせている気分になれるし、自分と歩幅があっているというか。全体的に気持ちいいんです」と、面高さんにはとてもマッチしていて満足している様子だ。
そんな面高さんがこの117クーペで特に気に入っているのは、なんといっても名匠ジウジアーロのデザインによる造形美。
「ルーフからトランクにかけての落とし込み具合の綺麗な造形美がわかる後ろ斜め45度からの眺めが特に好きです。ぼくは小さな頃からデロリアンがすごい好きだったというのもあるし、Bピラーからテールの落とし込みとかが映画を通してカッコイイって刷り込まれている。そしてデロリアンや117クーペなど、僕がカッコいいと思うクルマは、ほとんどがジウジアーロがデザインを手がけたものだったんですよ」とその流麗なラインの美しさに惚れ込んでいる。
だからこそ、外装については手を加えずに、ホイールを含めて購入時の状態を維持し続けているという。

ちなみにボディカラーは前オーナーにより全塗装されていて、「おそらく純正色の『エメラルドグリーン』だと思うんですが、光の反射で色の映え方が全然違うんです」とお気に入りのポイント。

また、綺麗な状態のまま維持されている内装は、メーター周りがカスタムされているようだが、「購入時からこうだったので詳しくはわかりませんが、デザインに惹かれて買ったクルマなので、あまり気にしていないんですよね」と、マニアックなこだわりを持たずに自然体で愛車の個性を受け止めている。

そしてそんな面高さん、実はエアロパーツやドレスアップカスタムをメインとする『ダムド』の2代目社長。お店の看板娘の役割を果たしている117クーペは、様々な方向からその仕事にも貢献しているという。

「父から会社を引き継いで3年が経ちますが、 “エモさ"やネオクラシックというテーマをかなり意識して商品を制作しています。というのも、僕のクルマを見て『かっこいいね』『乗りたいね』っていってくれる人は多いけれど、環境が整っていて所持しやすい僕とは違って、旧車にはなかなか手を出しにくいのが現状だと思うんです。なので、メンテナンスフリーな最新のクルマにクラシックの良さを落とし込むことで、そういうクラシックデザインが好きな方に維持しやすく見た目も気に入って乗っていただけるようなものを作りだしたいと考えています」

さらに「僕ら世代がクルマに憧れる年頃だった90年代や2000年代は、買いたいと思える現行スポーツカーがほとんどなかったんです。でもそんな僕らの年代にも今と昔の良さが生かされたカッコいいクルマを、ライトに楽しんでもらいたいというところもありますね」とも。
面高さんの会社が概念として掲げているコンセプトに、「ドライバーが愛車をもっと愛せる様に、その時代のライフスタイルに合わせたカスタマイズパーツをデザイン・製作し『乗りたい!』と思えるクルマを一台でも多く世の中に増やすこと」とあったが、その想いの核に117クーペの存在がインスピレーションとして大きな刺激を与えているのは間違いないだろう。

「カスタムやドレスアップはしないのか?と聞かれることもありますが、旧車に関してはオリジナルを維持することがじゅうぶんカスタムの領域だと思っています。放置すれば錆びるし劣化するし、それを叩いたり板金したりすればそれはもうカスタムですよね。だから、これからもこの117 クーペを現状維持しながら乗っていきたい。僕にとっては大事なタイムマシンですから」

エンジン音を動画でチェック!

(文: 西本尚恵 / 撮影: 土屋勇人)

[ガズー編集部]

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