大震災を機に防災時にも役立つ『住居』の重要性を体感。中古車屋からキャンピングカー専門店となったダイレクトカーズ
東京オートサロン2022で、女性の目を惹きつける可愛らしくおしゃれな軽キャンピングカーを展示していたのが、キャンピングカー車中泊専門店のダイレクトカーズ。
同社は2009年創業時には普通の中古車販売業だったが、2011年の東日本大震災でのある出来事をきっかけにハイエースをベースとしたキャンピングカーのカスタムに特化するようになる。
そして現在ではそのノウハウを活かし、ハイエースだけでなく大小さまざまな車中泊可能なカスタムカーを製作・販売しているのだが、その目的や見つめる将来の先にはなにがあるのか? 代表取締役の百田雅人さんにお話を伺った。
「うちはもともと普通の中古車屋さんでした。でも2011年の東日本大震災の時に、南相馬市で被災されたお客様にベッド仕様のハイエースを買っていただき、それが車中泊にとても役立ったというお話を聞きまして。喜んでもらえたのならもっと本格的に楽しいクルマを作りたいなと思うようになり、さまざまなハイエースキャンパーを開発してきました」
「今ではその製作時のノウハウを活かして、需要に合わせてこの大きなキャンピングカーと軽キャンピングカー、ほかにも日産NV200とホンダN-VANのコンプリートモデルなど5種類を展開しています」
ダイレクトカーズが取り扱う5車種の中から、東京オートサロン会場に持ち込まれていたのが、カムロードベースのキャンピングカーと、ハイゼットトラックをベースに「よりクルマ旅や車中泊を楽しめるキャブコン」をコンセプトに開発された可愛らしい軽キャンピングカー『AMAHO(アマホ)』。
「アマホのベースはダイハツの軽トラ・ハイゼットにシェルを追加したオリジナル車両で、何年か前からコンプリートモデルとして販売しています。基本的には女性向けで、このクルマで生活ができて、さらに外遊びを楽しみたいなと思ってもらえる仕様のクルマにしています」
実はお話を伺うまで、シェルとの一体感があまりに自然すぎて、軽トラックがベースだとは気づかずに驚いたほど、違和感のないルックスだ。
「ちなみに軽トラのなかでもハイゼットをベースにした一番の理由は、純正カラーが豊富でこの車両のアイスグリーンをはじめ、オレンジやカーキなど7色もある点ですね。上に追加するシェルとの色も合わせやすいですし、コンセプトに合っているんです」
ベースが軽トラックなだけにもともとルーフもないため、ソーラーパネル付きのポップアップルーフを備えたシェルになっているのもポイントだろう。こだわりは他にもたくさんある。
「このクルマは4名乗車8ナンバーのキャンピングカー登録なので、リアシートの横座りができます。寝るときはポップアップルーフ内のベッドに2人、車内のベッドに1人と複数人で車中泊できるようになっています」
「また室内には水タンクと水道、ミニキッチンもあるし、お水は外でも使用可能です。キッチンテーブルはボディのサイドや後ろに取り付けできるので、外でコーヒーや軽食も楽しめますよね。キャンピングカーってどうしても室内で完結してしまいがちじゃないですか。でも、せっかくなら外でバーベキューを楽しんだりして欲しいなと思っているので、こういう工夫をしているんですよ」
たしかにこれなら、移動販売のキッチンカーのように、クルマのまわりまで広く使ってアウトドアを楽しむことができそうだ。
他にも着替えの際などに便利な隠し部屋が作り出せる“マルチカーテン”や、虫の侵入を防ぐ網戸付きのリアドアなど実用的な気配りも抜群。リチウムイオンバッテリーやソーラーパネルによってコンセントとUSBの電源も2箇所ずつ装備しているので家電も不安なく使用できる。
まさに軽自動車ながらキャンピングカーとしての機能は申し分なし!
そしてこれらのノウハウは百田さんがハイエースでの様々なキャンピングカーカスタムで積み重ねてきたノウハウが活かされているのは、いうまでもないだろう。
実際、アマホは飲食店の女性経営者や、キャンプ場に遊びに行きたい女性などにも人気なのだという。
ちなみにもう一台の展示車両、カムロードベースのキャンピングカーは、長旅を快適に、そしてスタイリッシュに楽しめるオリジナルモデル「トリッププレミアム」。
センターベッドを大人ふたりがゆったり寝られるセミダブルサイズにできるほか、そのセミダブル常設2段ベッドを横向きに設置することで、さらにゆったりくつろげるインテリア空間を実現しているのがポイントだ。
そんな百田さんが中古車販売からキャンピングカーのカスタムへと事業の舵をきった大きなきっかけは、前述した通り大災害時にも車中泊ができるクルマの重要性を感じたから。
だからこそ、百田さんの防災に対する意識はとても強く、所属している『一般社団法人 日本RV協会』では災害対策部部長も務めているという。
「自治体との提携や防災に役立つキャンピングカーの広報などを担当しています。日本は地震や津波、噴火などの危険性が伴う災害大国なので、災害時にでもキャンピングカーが活用できるような体制がとれるように、さまざまな活動をおこなっています」
現在は三重県にショールームとパーツショップを内包した広大な店舗を保有し、昨年2021年7月には神奈川県厚木市にもショールームをオープンさせたダイレクトカーズ。
コロナ禍でキャンプや旅に注目が集まる中、その移動手段として大活躍するキャンピングカーに対する需要はとても高く、車中泊・キャンピングカーの企画開発や販売を手がけるダイレクトカーズはまさに時代にマッチした事業展開といえるだろう。
だが、だからこその課題もあるという。
「実際需要は増えましたね。やっぱり密を避けたい人たちがたくさんいますので。海外旅行には行けない分、自分たちで動きたいという人もとても増えているんですよ。ただ、車両製作が追いつかないんです。例えばいまキャンピングカーをご注文いただいても納車できるのは1年半くらい先になってしまうという状況です。本当に需要と供給が逆転していて、それくらい必要とされているのは嬉しいことなのですが…」
ダイレクトカーズという社名は「お客様と直接接点をもちたい」「クルマを通じて地域に貢献したい」という願いを込めたものだという。
実際、ハイエースでのノウハウをもとにハイゼットトラックをはじめさまざまな車種で車中泊やキャンプを楽しめるキャンピングカーを世に送り出している同社は、十分それを実践しているといえるだろう。
そしてキャンプやアウトドアといった楽しみだけでなく、災害時でも住宅の代わりに役立つキャンピングカーは、百田さんが見つめる先の未来で必ず役に立つに違いない。
取材協力:ダイレクトカーズ
(文:西本尚恵/撮影:土屋勇人)
[GAZOO編集部]
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