JZエンジンのクルマをこよなく愛する スープラ(JZA80)
「両親はクルマにまったく興味がなかったのですが、叔父がスプリンター(TE70)やヴィヴィオ(RX-RA)、ソアラ(JZZ30)に乗っていたりとクルマ好きで、よくその横に乗せてもらっていました。そして、中学校の頃からチューニングカー雑誌『Option』を読んでいるうちに、耐久性が高いというトヨタの1JZか2JZを搭載したクルマが欲しいと思うようになったんです」
マークⅡやチェイサー、クレスタをはじめ、スープラ、ソアラ、アリストなど1990年代に登場したトヨタのスポーツ系車種に搭載されたJZ型エンジン。パワーアップへの対応力や耐久性の高さなどから、いまだに国内はもちろん海外でも高い知名度を誇る名機だ。
現在、JZA80スープラとJZX100チェイサーの2台を所有しているという鹿児島県在住の福元政博さん(40才)も、そんなJZエンジンをこよなく愛するオーナーのひとり。
JZ系エンジンのクルマを乗り継いで20年
福元さんがスープラを好きになったのは「小学校の登下校中に、たまたま走っていたスープラを見て、カッコいい!と思ったのがキッカケですね」とのこと。とはいえ、その頃は学校のそばに停まっていたランサーエボリューションもカッコいいと思っていたりと、スープラだけが特別というわけではなかったという。
そんな福元さんが18才で免許を取得し、最初に乗ったクルマはJZX90型のマークⅡだったという。
「僕が免許を取った2000年頃は、まだスープラが新車で販売されていて、当時の僕が買えるような金額ではなかったんですよね。そしてその頃はちょうどドリフトブームで4ドア車でのドリフトが流行りはじめていたこともあってマークⅡを買いました。4ヶ月で事故をしてしまったんですが、次の愛車として購入したJZX90クレスタには11年間乗りましたね。そしてドリフトをやらなくなったこともあり『そろそろスープラかな』と思ったのが2011年くらいのことです」
そうして、ようやく念願のスープラを手に入れたものの「最初に手に入れたスープラはかなりの改造車で、自分の手には追えない状態だったこともあって1年半で手放してしまいました」と、ちょっと残念な結果となってしまったという。
福元さん提供
「スープラではドリフトもちょっとだけやってみたんですけど、鹿児島ってサーキットもあまりなくて走る機会も少ないし、やっぱり遠くのサーキットまで走りに行くにしても自走で荷物もたくさん積める4ドアがいいなーと、今度はJZX100チェイサーを買いました」
これが現在でも福元さんがもう1台の愛車として所有している1JZエンジン搭載のJZX100チェイサー。
「ところが、チェイサーに乗っているうちにスープラの値段が高騰してきたんです。1台目は残念なお別れになってしまったけれど、いずれまたスープラに乗りたいと思っていたので『買うなら今のうちしかない!!』と、今度は純正に近い状態の車体を探しました」
前回、改造車だったことに苦労した反動から、チェイサーも2台目のスープラも「できるだけノーマルの状態で乗りたい」という気持ちが強くなったという福元さん。なかなかいい条件の車両が見つからなかったものの、ちょうど3年前に2台目のスープラを手に入れた。
基本ノーマルですが、ホイールは48本揃えてます
こうして新たに福元さんの愛車として加わったスープラは、1999年製で6速MTのRZ-Sグレード。
フルエアロで派手な見た目とは対照的に、エンジンをはじめとする機関系はエアクリーナーとマフラーが交換されているくらいで、ボディの状態も良い1台だったという。購入後に純正エアロに交換し、現在はシンプルなスタイルとなっている。
「外装のポイントはいくつかありますが、レアパーツのフロントアクティブスポイラーが装着されていることと、以前『ハイパーレブ』という雑誌でゴールドのAVSを履かせた白いスープラが載っているのを見てカッコいいと思ってマネしたゴールドカラーのAVSホイールがお気に入りです。あとはウイングですね。これは当時の純正形状を模した社外品を装着していますが、気分によって付け替えられるようにTRD製ウイングも保管してあります」
福元さん提供
また、ホイールはYOKOHAMAのAVSシリーズをなんと全部で48本所有しているというから驚きだ。ネットオークションを利用して収集したそうで、ガレージに36本、チェイサーに4本、スープラに4本、部屋で新品未使用品を4本テーブル代わりにしているのだとか。
「昔、ドリフト用もスペアタイヤもすべてAVSっていう人がいて、凄いなぁと思って同じように揃えてみたんです(笑)。いまは安くていいブランドホイールもたくさんありますが、僕はこれが一番好きですね」と、福元さんの所有欲を満たすアイテムとなっている。
そして、彼が特に気に入っているのが、JZ系の中でも最強モデルであるターボ仕様の2JZ-GTEエンジンだ。直列6気筒で排気量3000cc、最高出力は当時の自主規制いっぱいの280馬力を発揮する。
「エアクリーナーとマフラーだけ変わっていますが、ほかはノーマルです。本当はすべてノーマルがよかったんですけど(苦笑)。直列6気筒エンジンのサウンドとフィーリングと耐久性が好きですね」とこちらも極力純正を維持するよう心がけているという。
また、内装に関してもステアリングを含めて純正のままだが、シートだけはRZグレード純正のレカロシートを愛用しているそうだ。
「これは叔父の影響ですね。叔父は腰痛持ちだったんですけど、このシートだと全然大丈夫だったみたいで。ぼくのスープラのグレードはRZ-Sなんですけど、レカロシートの設定がないのでRZに採用されていたシートを購入しました。長距離を走ってもまったく疲れないので重宝しています」
仕事も趣味もクルマ漬け
昔から乗り物自体が大好きで、これまでにもトラックドライバーなど運転に関わる仕事に就いてきたという福元さんの現在の職業は観光バスの運転手。
「最初の仕事は農業機械の整備をして、軽トラックで農家を回る仕事でした。その後、4トントラックの運転手になり、トレーラーにも乗ったりしました。さらに大型に乗りたいなとバスに、その後大型二種免許を取って現在の観光バスに乗るようになったんです。東京パラリンピックで参加選手を乗せて運行したこともいい記念になっています」
福元さん提供
仕事では大型バスを走らせるプロドライバーである福元さんだが、プライベートでスポーツカーに乗っていることで役立っていることなどはあるのだろうか?
「そうですね、大きさも車重も違うのでなかなか比べるのは難しいんですが、バスもスープラもチェイサーもマニュアル車なので、普段からお客様を乗せているときにいかにお客様を不快にさせないようにスムーズなアクセルワーク、ブレーキ、ギアチェンジができるかを自分の中で考えていますね。たとえば、減速しつつエンジン回転を合わせてスムーズなシフトダウンをする『ヒール&トゥ』というテクニックはスポーツカー乗りだとお馴染みだと思いますが、それをバスでも使っていますよ」
福元さん提供
また、愛車のオイル交換など、メンテナンスは自分でできるものはDIYで行っている。
「ついでに家族のクルマの管理も僕がまとめてやっていますね(笑)。自宅ガレージは親がストアーをしていたスペースを改装して使っているのですが、僕の所有欲を満たすものがいっぱい揃っているので気に入っています。クルマ好きだった幼馴染と一緒にラジコンをしていた頃のスープラボディも飾ってありますよ!」
「スープラもチェイサーも、僕にとってはこれ以上ないスタイルですよ。今のクルマも含めて、あのJZエンジンが載っているこの形は、もう2度と出ないだろうというくらい素晴らしい組み合わせだと思っています。それにオーナズクラブの仲間も話しやすくていい人ばかりですし、このスープラに乗っていると、若い子から『あれはなんだ?』って振り向かれたり、幼稚園くらいの子に指さされたりと、めずらしがられるのもいいなと思っています」
この取材の最中にも、公園内を散歩する人や、クラブ活動中の子供などから熱視線を浴びる場面を何度か目にすることができた。
「チェイサーの方は伊佐市にある鹿児島県唯一のHKSプロショップであるツァオバークラフトさんにコンピューターセッティングなどでお世話になっているんですが、ゆくゆくはスープラもブーストアップなどをしたいという気持ちもあるんですよね」と話す福元さん。ノーマルのまま大事に乗りたいという気持ちと、チューニングやカスタムをしてより自分好みに近づけたいという両方の想いが交錯している様子だ。
大好きなJZエンジンのサウンドを響かせながら、街中を走らせているだけでも十分な存在感を放つスープラ。純正を維持するにしても、さらなる理想型を目指してカスタムするにしても、その存在はこれからも彼に喜びと刺激を与え続けてくれるに違いない。
取材協力:鹿児島県立吉野公園
(文: 西本尚恵 撮影: 西野キヨシ)
[GAZOO編集部]
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