ミーティングで知り合った86オーナーが将来の義父になるなんて!トヨタ・86が縁を結んだ新婚カップル【取材地:北海道】
現代の国産車市場で数少ない現行スポーツカーモデルとして人気を博し、全国各地でオーナーズミーティングも頻繁に開催されている86/BRZ。
そんなイベントのひとつ、全国各地を回る車種限定サーキットミーティングイベント『86/BRZ SONIC』の同乗走行をきっかけに知り合い、今年の9月に入籍が決まったという幸せいっぱいの新婚カップルが、オレンジの86オーナーである嶋村純さん(29才)と、妻の日那里さん(21才)。
「実はイベントで知り合う前に、彼女の父親とは先に面識があったんです。それもこの86がキッカケでした」
交際相手、そしてその父親との出会いをつなぐこととなった、まさに恋のキューピットともいえる86のエピソードを掘り下げていこう。
父親がダルマセリカに乗るようなクルマ好きだったということもあり、物心がついたころにはクルマ好きになっていたという嶋村さん。自動車漫画やゲームにハマり、いずれスポーツカーに乗りたいと憧れを抱いていたというクルマ好き青年だ。
86/BRZが登場したのはそんな嶋村さんがハタチのころだった。現86オーナーの嶋村さんにとっては、さぞかし衝撃を受けたデビューだったのではないかと思いきや、実際に当時抱いた感想は「正直、前期は自分の好みとは違うな、と思ってピンとこなかったんです」という嶋村さん。
ところが2016年、マイナーチェンジモデルの後期型が発表されたことで、嶋村さんの気持ちは大きく揺り動かされた。ダクトが大きくリモデルされ、前期と比べてアグレッシブな印象となったフロントフェイス、後期となってラインが強調されるように一新されたテールランプのデザインも嶋村さん好み。
「発表されたときの写真を見てホントに衝撃を受けました。前期で気に入らなかったデザインがすべて自分好みになっていて、すぐに試乗しに行きました」
試乗で感じた初めてのスポーツカーの運転席。シートポジションの深さ、足まわりのしなやかさ、エンジンのフィーリングなど全てが初体験で「こんなに楽しいものなのか!」と感動を覚えたと当時の様子を話してくれた。
そこからの嶋村さんの行動は早かった。後期型発売開始の翌年5月に新車をオーダー。予算的にはかなり無理があったそうだが、86オーナーになりたいという気持ちに勝るものはなく、2017年9月11日に納車日を迎え、ついに念願のスポーツカーオーナーとなることができたのだった。
予算の問題もそうだが、北海道という地で86に乗るにあたって懸念していたのが、FRレイアウトのスポーツカーで北海道の雪道をしっかり走行できるのか? ということ。
そこで購入前にインターネットで解決方法を調べていると、まさに雪国を過ごす86/BRZオーナーのためにカスタマイズメニューを提案している『マルマン・モーターズ』(北海道石狩市)の存在を発見。事前に相談にも訪れることで、納車にあたっての不安は払拭することができた。
「マルマン・モーターズにはそのときからお世話になっていて、86が納車になった当日に早速お店にクルマを持っていきました。そうしたら、たまたま86/BRZ北海道オーナーズクラブの会長がいらっしゃっていて、その場でオーナーズクラブにお誘いいただいたんです」
こういった車種限定ミーティングに参加できるのもオーナーならではの特権。誘いを断る理由もなく、嶋村さんのカーライフのなかで、クラブ主催のミーティングに参加するのが恒例行事のひとつとなっていった。
そしてこの出会いが、嶋村さんにとってのターニングポイントとなる。
「86に乗り始めて翌年の春のミーティングでした。ボクの86と内装色が一緒という年上のオーナーがいらっしゃって、それを話題に顔見知りの仲になりました。それが彼女の父親だったんです」
嶋村さんと義父との出会いのきっかけになったのは、メタリックオレンジのボディカラーとコーディネイトする形で選んだタンカラーのインテリアだったという。
そこから月日を重ねて86/BRZ北海道オーナーズクラブでも『宴会部長』のポジションを任されるような常連となっていた嶋村さんに、運命の出会いが訪れたのは、通算4回目の参加となった2020年9月の『86/BRZ SONIC』。
十勝スピードウェイで開催されたこのイベントで、嶋村さんは自身の86を使って一般ギャラリー向けコンテンツの一部であるミニコースでの同乗走行を任されるメンバーの一人に抜擢されたのだ。
「そのときに父親の86に乗って付き添いでやってきていたのが彼女です。父親から紹介されてボクの86の隣に乗せたのが初めての出会いでしたが、とても気に入ってくれて、同乗走行の時間中はずっとこの86を指名して乗ってくれました」
嶋村夫婦の共通点はなんといっても、「86が好き」ということに尽きるだろう。「父が86に乗っている姿をそばで見ていたら、自分も86が大好きになっていました。クルマ系のイベントにも連れていってもらうようになったらもっと興味がわいてきました。この86は父の愛車ですが、私自身も愛着があって、自分でも運転して出かけるようになっているので、すでに半分は私のものですね(笑)」と話す日那里さん。
86への愛着は並々ならず、父から買い取って名実ともに自分の86にできるよう、来年の夏を目標に資金をためている最中とのことだった。
そんな2人の楽しみは、嶋村さんが愛車の86を運転し、ナビには彼女が乗ってのドライブデートだ。
「道内をドライブするんですが、ボクも彼女も行った先の観光が楽しみというよりも、86に乗っていろんなところに出かけるのが好きみたいで。札幌から洞爺湖に日帰りでドライブするつもりで出発したのに、運転中に会話が尽きずに洞爺湖を越えてどんどん走り続けて、結局函館まで行っちゃったこともありました。日帰りだったので札幌に帰ったのは夜中の2時になりましたが、そんな出来事も彼女とこの86とのいい思い出です」
約1年間の交際期間を経て、今年の9月にプロポーズしたことも、この86と過ごした大切な思い出のひとつだ。「86に乗って知床まで行きました。なぜこの場所かというと、ボクがこの86に乗って一人で初めてドライブに行った先が知床峠だったんです。それだけ思い入れのある場所だったので、もう一度86で来るときは結婚する人と決めていたんです」
そして、嶋村さんにとってドライブやミーティングのほかにも愛車の86に乗って続けている楽しみが、サーキットでのタイムアタックやジムカーナといったスポーツ走行だ。
「手に入れる前はノーマルのまま乗り続けるつもりだったんですけど、いざ乗ってみると色々なパーツを替えたいと思うようになってきました。車高調キットやホイールを付けてドレスアップをはじめたのが最初です。マルマン・モーターズの走行会に誘われてからはそれが楽しくて、自分でもサーキットに行って走るようになって、チューニングも普段乗りからサーキットまでオールラウンドで走れるようなクルマを目指しています」
エンジンはノーマルのまま、油温対策の水冷オイルクーラーを追加。排気系はパワーアップに加えてサウンド向上も狙ってパワークラフト製エキゾーストマニホールドへの交換を狙っている。
最近こだわっているのがタイヤのチョイス。なるべく安くても高性能で使いやすい銘柄を探していて、今年新発売されドリフト競技向けに開発された経緯を持つ『シバタイヤ』を友人の口コミを聞いて購入したばかりだった。
嶋村さんの86のグレードは後期モデルに追加設定された『GTリミテッド ハイパフォーマンスパッケージ』で、その証とも言えるブレンボ製ブレーキが、レイズTE37の18インチホイールの奥で存在感を示している。さらに、サーキット走行でのキャパシティをアップするためにブレーキパッドも強化品へ交換してあるそうだ。
TRDバンパーを装着している義父の86のように「エアロがついていたほうがカッコいい!」と推す日那里さんとは裏腹に、エクステリアはなるべく純正エアロ派という嶋村さんだが、山道でたぬきに衝突したことがあり、それから鹿よけのサウンドジェネレーターをダクトに追加しているとのこと。
樹脂製で柔らかいマッドフラップは雪が固まらないようにするための冬季用。そのほか、冬季には純正ショックに車高上げキットへの交換とクスコ製LSDをマイルドにセッティングしたマルマン・モーターズでは定番の雪国対策仕様への変更も毎年行っている。
左が嶋村さん、右が日那里さんの86。出会いのきっかけになった共通の内装色がこちらのタンカラーだ。嶋村さんはフロアマットもオレンジを貴重とした手入れしやすいコイルマットに交換済みで、当初は運転席、助手席ともにレカロのシートヒーター対応リクライニングシートを選んで付けていたが、スポーツ走行で結果を残せるように運転席はフルバケットシートのレカロPRO RACER RMSに交換した。
2台の共通点はリヤウイングにも。どちらも純正ウイングをベースに、マウント部を数センチアップするウイングライザーを追加している。ドレスアップ目的かと思いきや、そのままだとトランクのスポイラー部の出っ張りに手が入らず洗車が面倒になるからという理由だった。嶋村号はさらにダウンフォース追加のためにL字フラップをウイングに追加。
エンジンはノーマルで、油温が上がりやすい86のスポーツ走行の必需品ともいえる水冷オイルクーラーを追加。今後は排気系のパワーとサウンドアップを狙ってパワークラフト製のエキゾーストマニホールドを狙っている。中間にダンパーが設けられているプローバ製のタワーバーは、雪道でのタイヤ応答性がアップするので雪国で乗る86オーナーにはおすすめのパーツだそうだ。
結婚まで至ることとなった人間関係に始まり、自身の趣味のあり方まで変化をもたらした嶋村さんの86。「この86に乗り始めてから、自分のライフスタイルがガラっと変わったのを実感しています。資金的にもかなり無理をして買ったんですが、そのおかげで今があるから、当時思い切って本当によかったと思います」
今後の目標は、この86で参加して力を注いでいるジムカーナの大会で優勝することと「いずれ昔からの夢だったポルシェを買うこと」ともポツリ。
ちなみに日那里さんは「新型86とGRスープラの2台を持てるようになることです!」と元気よく話してくれた。
嶋村さんに人生を左右するさまざまな出会いをもたらしてくれたこの86。もし嶋村さんが手放す日がきたとしても、間違いなく2人の心の中にはずっと思い出の1台として残っていくことだろう。
(⽂: 長谷川実路 / 撮影: 木下琢哉(マイナーカラーコード))
[ガズー編集部]
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