ラリーサポート活動のために愛車も乗り換え! ダイハツ・ハイゼットトラック・パネルバン
「いつもはラリーカーのほうが注目される立場だけど、今回は逆に”サポートしている側”が取材してもらえてとても嬉しいです」そう話してくれたのは、ダイハツ・コペンのラリーカーで全日本ラリー選手権などに参加しているドライバーの相原さん。
そう、今回の主役は、ラリーカーが毎戦完走できるよう現場で支えるサポート役として活動を続けてきたダイハツ・ハイゼットトラックと、そのオーナーである檜垣智也さん(34才)にほかならない。
大学院時代の同期というふたりだが、檜垣さんの愛車歴を紐解くと、最初に買ったクルマも大学院に通っていた24才のころにすすめられて購入した初代コペン(L880K型)だったという。
「もともと小さいころからクルマ好きで、トミカを集めたりするような子供でした。それで大学へ進学するときもなんとなく自動車業界に就けたらいいなと思って工学系の学部を選んだのですが、就職難の時期だったこともあり、そのまま大学院へ進んで、相原とはそこで知り合った感じですね」
現在のような関係となるのはまだ先の話だが、初めての愛車としてコペンに乗り始めた檜垣さんは「時間があればドライブに出かけるのが楽しみだった」と、オープンカーの楽しみを満喫する日々が続いたという。
岡山県の中山サーキットを舞台に、スポーツ走行デビューの機会が訪れたのは27才のとき。「彼の他にも走り好きな仲間がまわりに多くいて、サーキットのフリー走行に誘われたのをきっかけにチャレンジしました。そこから、年にいちどくらいのペースで仲間のみんなと走りに行くようになりましたね」と檜垣さん。
当時はもっぱら走るほうへの関心が高かったこともあり、29才でコペンからの乗り換えを考えているタイミングで、たまたま友人が手放そうとしていたダイハツ・ブーンX4を手に入れ、そちらが新たな相棒となった。
「通常のブーンと違って、X4はラリーなどの競技ベース車という設定の4WDターボだったので、かなりの暴れ馬といった感じでした(笑)」
コペンと異なり、そのじゃじゃ馬をコントロールして乗りこなすためのテクニックを磨く必要があったというが、それを楽しみにブーンX4を駆ってヒルクライムやラリーの練習会にも参加する機会が増えていったという。
そんななか、檜垣さんが現在のラリーサポートを始めるキッカケとなるできごとがやってきたのは、ブーンX4に乗っていた29才のころだった。
「彼(相原さん)もブーンのX4を買ってラリーに参加し始めたんです。そこでサポートをしてくれないかと誘われて、裏方として趣味で手伝いを始めたのが最初でしたね」
そのころはサポートと並行して自身でもブーンX4でサーキットを走る機会もあったと檜垣さん。コペン時代には普段乗りのムーブ、ブーンX4時代にはテリオスキッド(後にネイキッドへ乗り換え)と2台を所有して走りとサポートで使い分けていたというが、次第にサポートカーとしての役不足を感じる場面が増えていったという。
「ラリーにサポートで参加する回数が増えていくうちに、どうしても積んでいく工具やパーツといった荷物の量が増えていったんです。それで当時軽トラが流行っていたので、それもありかなと中古車サイトを眺めて探していったなかで、このハイゼットトラックのパネルバンという車体を見つけて、一目惚れして購入しました」
2020年の7月に手に入れた檜垣さんのハイゼットトラックは平成21年式のS201C型。トラックに一般的な平ボディ型の荷台の代わりに、カーゴタイプを超える作業性をもたらす上下2分割バックドアと両側スライドドアを備えたハコ型の荷台を純正装備するパネルバンという架装軽トラックだ。
ハイゼットを手に入れたのを機にブーンX4を手放し、エッセとハイゼットの2台持ちとなった檜山さんだが、いまでは普段乗りとしても足クルマのはずだったエッセよりもハイゼットに乗る機会のほうが多くなったということで、購入してから1年半のあいだでサポートのためを中心に様々なカスタムを自分で施してきた。
まずはなんといっても、工具や予備パーツを備えるための荷台部分。ルーフ側には複数のステーを後付けし、フックを介してアイテムを吊り下げられるように拡張性をアップ。
荷物の出し入れでボディにキズがつかないように、側面にはグレーのフェルト生地を切り出してカバーを施している。
バックドア側に配置されている黄色いドーム状のアイテムは、内側にタイヤを収納できるタイヤケース。下側にはキャリーが付いていて、複数本のタイヤを持ち運びしやすい仕組みになっているとのことだ。
満載の荷物で後方を見通せなくなることも多いため、ハッチ部分にはリヤカメラを追加。液晶タイプのバックミラーに配線をつなげ、走行中も常にリヤビューを確認できるモニターとして機能するようにしてある。
遠征時のドライブに必須という座席のクッション。これがあるとないとでは乗り心地が段違いだと檜垣さん。ハンドルもハイゼットらしからぬナルディ製に交換されている。純正シートは「作業着などでも汚れを気にせず乗り降りしても、拭けば汚れが落ちるので、あえてカバーをしたり交換したりはせず、そのまま使っています」とのことだった。
一見すると雑然としたシガーソケットの配線に見えるが、これにもれっきとした理由が。「カメラのバッテリーや携帯電話など、チームが持ち込んだ機材を充電するのに土壇場で対応できない、ということがないよう、ソケットの多さはもちろんできるだけ多くの端子をカバーできるように種類も備えてあります」と檜垣さん。
エクステリアではルーフ部分を赤く自家塗装しているのもポイント。ドレスアップはもちろん、ヒートカットパウダーが配合された塗料を使うことで、車内へ伝わる熱気を遮断する目的があり、かなり効果があった部分だそうだ。
これまでハイゼット以外の愛車歴もコペンをはじめ、セカンドカーにも必ずダイハツ車を選んできた檜垣さん。ダイハツ車への愛情は2020年にハイゼット発売60周年を記念したロゴをモチーフにしたステッカーを自作しているところなどにも表れている。
「ダイハツ車の魅力は、スポーツモデルや商用車などに関係なく自分が乗っていて楽しいと感じる部分が多いことですね。例えば軽自動車もほかのメーカーと比べてちょっと値段が張る場合もあるけど、乗ってみるとその理由がわかる。それがずっとダイハツに乗り続けている理由です」
そして、現在は相原さんが立ち上げた『Copen Rally Project』のチームメンバーとして、檜垣さんはあくまで趣味のプライベートという姿勢は変わらないものの、サービスカーを武器に裏方としてチームを力強くバックアップ。
全日本ラリー選手権を主戦場に、これからもふたりの協力関係は続いていくということだ。
(⽂: 長谷川実路/ 撮影: 稲田浩章)
[GAZOO編集部]
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