夫婦揃って「マニュアル車」オーナーだからこそ生まれた、さまざまな出会いと巡り合い
「自分が1969年生まれで、生後6ヶ月くらいのときに初代トミカの販売が始まったんです。当時の写真を見ると、日産ブルーバードのトミカを握っている自分の様子が写っていましたね。
父に散歩に誘われると、そのついでに220円のトミカをひとつ買ってもらえるのを楽しみについていったような子供でした。小学生のときには家にあるコレクションが300台くらいになっていたと思います」
日産車を中心に車検ごとに乗り換えるような家庭で育ったという丸山浩平さんが、クルマに興味を持つようになったのは自然な流れだったに違いない。
ところが、丸山さんがクルマ好きに育っていく姿を見て、キャビンアテンダントとして働いていた母が海外製のミニカーをお土産に買ってくることもあったそうだが、そちらにはまったく見向きもしなかったという。
「せっかく買ってきてもらったのに自分は興味がなくて、ひたすら国産車が好きな子供でしたね(笑)」
自身が国産車好きになることに大きな影響を与えた父の実家で所有していた愛車の中でも、とくに印象深いのが510型の日産ブルーバード。丸山さんが生まれた際に産婦人科から帰って来るときに『人生で初めて乗った乗り物』であり、当時赤ん坊のころの丸山さんがボンネットに乗っている姿の写真も残っているそうだ。
いっぽうで、そんな丸山さんの愛車遍歴は、22才の頃に意外にも外車から始まったという。
「1982年型のゴルフIで、先輩から車検が切れるタイミングで譲ってもらったんです。タダでいいということで飛びついた1台だったんですが、とりあえず車検を通すためにヤナセに持っていったら修理代がえらくかかって。
交換用のバッテリーもオルタネーターも高いし、そのあとまた修理が必要な部分も出てきて、車検を通したのはその1回だけで、維持費が高すぎて自分も友人にタダで譲って終わりました(笑)」
その後、フォード・フェスティバのキャンバストップ、ホンダ・シビック(EF2)、シトロエン・BX 16TRS、日産・ADバン(Y10)、パルサー(N14)、サニーEXサルーンなどを乗り継ぎ、現在のサクシードに至るわけだが、とくに長く乗っていたのはADバンとサニーの2車種だったという。
「ADバンはマニュアルしか乗れない父が新車で購入して乗っていたクルマで、自分が引き継いで25年間乗り続けました。その間に乗っていたサニーのほうは、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)に出ていた姿にあこがれて、こちらもマニュアルのモデルを手に入れて13年くらい所有していたと思います」
「サクシードに乗り換えたキッカケは、ADバンがエンジンブローしてしまったからでした。これまでもずっとマニュアル車に乗っていたのと、ADバンのようなスタイルのクルマが気に入っていたので、マニュアルモデルのあるバンが良いなと思って、トヨタの130系クラウンバンを第一候補に探し始めたんです」
そうして丸山さんが新たな相棒を探し始めたのは2019年。そのときに頼ったのはSNSで繋がりを持って自身も所属するようになった、車種問わずマニュアル車オーナーが集まってできた『MT会』というグループの仲間だった。
「そのなかに中古車売買の仕事をしている人がいて、クラウンバンを探してもらったものの、マニュアルでもディーゼル車はあったんですが、大阪ではNOX規制に引っかかってしまうのでNGなんですよね。結局ガソリン車のほうはなかなか見つかりませんでした」
「それで他の候補を考え始めたところ、MT会のなかにサクシードの兄弟車のプロボックスを買ってヴィッツのマニュアルミッションを移植した物好きなオーナーがいて、その人から『プロボックスやサクシードなら良いのが見つかるかも』と言われ、このサクシードに出会いました。2014年式でグレードはUL Xパッケージ。当時は5年落ちの6万4000キロ走行の車体で状態も良かったので購入しました」
こうしてめでたくマニュアルモデルのバンを乗り継ぐことができた丸山さん。購入後は商用バンらしさを匂わせないよう、一見してノーマルらしくないスタイルにこだわってカスタムをしているという。
フロントグリルはホームセンターで購入した金網を整形し、100系カローラワゴンに使用されているという大きなトヨタのロゴがデザインされた海外向けのエンブレムを流用してUSスタイルに。
ルーフキャリアはオークションで購入したサビまみれのサクシード用の品物を、DIYでとことん磨いてキレイに仕上げて装備。家族でのキャンプ道具や自転車を載せるといった活躍の機会があるそうだ。
ホイールは一見すると無交換の純正鉄チンホイールに思えるが、こちらもトヨタ・アクアの純正品を流用し、サクシード純正よりもインチアップしているというこだわりのポイントだ。また、ブリッツ製の車高調も導入しローダウンも実現しているという。
インテリアも丸山さんのこだわりが反映されている部分が多く、運転席と助手席はリクライニングタイプのレカロLSシートに交換し、ステアリングも2代目bBの純正品を流用。
荷台はアウトドア用途に汚れを拭き取りやすいようにサクシード純正のファブリックを剥がして、フローリングなどに使われる耐水機能もあるマットを切り出して敷いているという。
そして、「母がオートマアレルギーだったもので、私も18才からずっとマニュアルだけに乗って育ちました(笑)」という奥様のダイハツ・ムーヴとのツーショットがこちら。
街中で走っている姿がカッコいいと気に入って1996年に新車で購入した初代ムーヴは、結婚する以前から25年間も乗り続けているという1台。もちろんミッション形式はマニュアルだ。
そんなお二人の出会いのキッカケとなったのは、奥さんがインターネット掲示板に書き込んだ「マニュアル車に乗っている」というコメントに丸山さんが興味を持って話をしたところから。
結婚10年を迎えた今では、すくすくと育ったお子さんを連れてダイハツ車のイベント『ダイハツ LOVE LOCAL』にムーヴで参加するなど、カーイベントへ出かける機会も多いとのこと。
「MT会もそうですし、運転していて楽しいだけじゃなく、マニュアル車に乗っていることをキッカケにできた人との繋がりが多いのも、ずっとマニュアル車を選び続けてきている理由です」と丸山さん。
お子さんが大きくなって免許を取得する際も、きっとマニュアル車が運転可能な普通免許を選び、愛車選びのタイミングがやってくれば、その最初の条件は『マニュアル車』ということになるのだろう…。
そんな未来を想像しながら、こだわりを持ってカーライフを過ごす幸せなご家族の姿を羨ましく取材させていただいた。
取材協力:大蔵海岸公園
(⽂: 長谷川実路/ 撮影: 稲田浩章)
[GAZOO編集部]
GAZOO愛車広場 出張取材会 in 兵庫
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