たくさんの仲間と出会うキッカケを作ってくれた相棒。25年乗り続けるNA8Cロードスター

歴代モデルの中でもいまだに高い人気を誇る初代NA型ロードスター。専門ショップやオーナーズクラブが数多く存在し、アフターパーツもいまだ豊富にラインアップされているなど、乗り続けていく上でのサポート体制も手厚い。

いちど愛車にするとその魅力にどっぷりハマり長く乗り続ける人も多く、2019年にはマツダがNAロードスターのレストアサービスを立ち上げたことでも話題となった。
今回ご紹介する新潟県長岡市在住の真保哲行さん(49才)も、NA8Cを25年間大事に所有し続けている1人だ。

小さい頃からチョロQやラジコンで遊んだりスーパーカー消しゴムを集めたりとクルマが好きだったが、仕事自体はもうひとつの趣味だったゲーム関係に進んだという真保さん。

東京で仕事していたときは23区内に住んでいて、駐車場代のことも考えるとクルマはとても買えなかったという。そんな真保さんがクルマに乗るきっかけとなったのが、移動手段としてクルマが必須となる地元新潟に戻ることになった25年前のこと。

「仕事で預けられたクルマがトヨタ・スプリンターカリブのマニュアル車だったので、プライベートもマニュアル車に乗ろうかなと思って。僕は2シーターでいいなと思っていたのと、そんなに大きなクルマは嫌だなと思っていたので、MR2とFTO、そしてロードスターで悩んでいたんです。

そしてその中では1番パワーがなくて安全かなと思ったのがロードスターでした。MR2は当時ペーパードライバーだった自分の運転技術では危ないなと(笑)」

こうして真保さんがロードスターを探しにいったお店では、1台がハードトップ、もう1台はエキマニ交換がされていて、どちらも同じくらいの金額で売りに出されていたという。

悩んだ結果、選んだのはエキマニが交換されている方の車両だったそうで、それが現在まで愛車として乗り続けている1994年式ユーノスロードスターSスペシャルだ。

「3年落ちで走行距離3万kmの中古車でした。屋根が開くのが気に入っていて、当時は天気のいいときは通勤でもオープンにしていましたね。

東京からこっちに来たばかりの頃は友達も少なかったんですが、いろいろ出かけたりクルマの雑誌を読んだりしているうちに、RSファクトリーSTAGEの田畑さんと知り合いまして。それをキッカケにクルマ仲間が増えていきました。今思うと、人との繋がりを増やしたかったのかもしれないですね」

RSファクトリーSTAGEは真保さんが在住する長岡市にあるロードスターのテクニカルショップ。一般修理はもちろんサーキット車両のメンテナンスやチューニングにも対応するだけではなく、オリジナルパーツも多数販売し、走行会の主催やレーシングチーム活動も行っているなど、ロードスターオーナーにとって頼れるショップとして全国に知られている。

しかし真保さんが代表の田畑さんと知りあった当時はまだ正式に開業する前の間借り状態だったとか。
「その頃からの付き合いですが、この人がいなかったら乗り続けていなかったと思う」というほど真保さんがロードスターを乗り続けていく上で大切な存在だ。

「乗り始めた当初の20代後半から30代前半で結婚する前までは、よく仲間とツーリングにいっていましたね。それにステージさんがよくイベントを主催するので、それにくっついていってサーキット走行やジムカーナを練習をしたり、バーベキューなんかもやっていました。

ロードスターのミーティングなんかも北陸や軽井沢で開催されるときにはショップ側の手伝いでよく行っていましたね」

そんな真保さん、実は1997年にこのクルマを買った当初はそこまで長く乗るつもりがなかったという。しかしSTAGEさんとの出会いもあり同じクルマを所有する仲間やロードスターのいろんな楽しみ方を知ったことで、すっかり手放せない存在となっている。

そしてそのロードスターをさらに長く維持する方向へ舵を切ることになったキッカケが、2006年に敢行したエンジン載せ替えだ。

「その頃ちょうど3代目のNC型ロードスターが発売されたときで、しょっちゅう買い替えたいという欲求に駆られていたんです。でも『買い替えるくらいだったらお金をかけてこのクルマを長持ちさせよう!』と頭を切り替えて、NB型の1800ccエンジンに純正コンピューターと合わせて載せ換えてもらったんです。

もともとのエンジンはNA8Cシリーズ1という初期のものだったので、可変バルタイ付きのエンジンになってだいぶ変わりました。パワーもトルクも上がって乗りやすくなって、すごく楽しくなったんですよ。今はもうエンジンが手に入りにくいので、あの時期にやったのは良かったと思っています」

ちなみにエンジン載せ換え作業は、秋にエンジンを買って、冬の間にお店に預けて作業してもらい、春になって雪解けとともに受け取ったのだとか。そのあたりは実に雪国の新潟らしいエピソードだ。

こうして真保さんが手放す気が無くなるくらいさらに楽しいクルマとなったこのロードスターの走行距離は、現在10万5000kmに達している。
ただ、12年前に家を建てた頃からは、車庫に収まっている時間が多くなっているという。

「家を建てる時に『紫外線が当たる窓なんて駐車場につけるもんじゃない』などとアドバイスをもらいながら、このロードスターを入れる前提で車庫も一緒に作ったんですよ。それからはその車庫内に入っていることが多くなってきて…。

車検は一度も切らしていないですけど、今の職場は歩いて行ける距離なので、一番乗っているのは仕事用のCX-5ですね」

乗って楽しい仕様ながら、さらに長く維持していくための方向に移行し、環境も万全となった真保さんのNA8Cロードスターは、「僕の中では見た目はほぼ完成している」と話すだけあり、シンプルでスポーティな外装に気品すら感じさせる大人のロードスターという雰囲気だ。

ボディカラーは純正色です。幌は別のオーナーさんが外した程度のいいものを手に入れて、1回だけ骨ごと交換しました。ホイールは15インチのエンケイで軽いところが気に入っています。

フロントバンパーはM-1028という車種を真似たエアロです。本来だとここに正式なフォグランプが入るんですけど、僕がこのバンパーをつけた時には製造されていなくて、ステージさんのほうで『ちょうどいいから』とラパンのフォグランプをつけてくれたんですよ(笑)」

一方の内装も純正ベースにスポーティな仕上がりだ。運転席は肩幅の狭いクルマのオーナーに人気のエスケレートバケットシートを愛用。また助手席には「たまたま中古で助手席だけが余っていた」というマツダスピードのバケットシートを手に入れて装着。

「エアコンの吹き出し口は削り出しでホイール形状になっています。重量増パーツですね(笑)。あとボディを固めようと思って、当時ロードスター乗りの間で流行した『ど~だバー』というサイドバーを装着しました。ロールバーは、何年か前にレースでロードスターが横転しているのを見て、あわてて装着しました」

そんな真保さんに、ロードスターに関わる今後について伺うと…?

「昔よく遊んだ仲間たちもそれぞれ環境が変わってしまって、だいぶ離れてしまったので、ここ10年くらいはツーリングをやっていないんですけど、またやりたいんですよね。ラーメン食べに行ったりとかね(笑)。

それにここまできたら手放す理由がないかな。だからロードスターから浮気しそうになった時に『売って手放すよりは増車しよう』と思って、ちょっと前にミニクラブマン(R55)を買いました。家族みんなでの買い物の際はこのミニが活躍しています」

オーナーご本人も買った時にはまさか25年も所有し続けるとは思わなかったというロードスター。
しかし、その魅力を増大させてくれたショップや仲間との出会いもあり、今では手放すことのできない一生モノの1台となっているのだ。

取材協力:万代テラス

(⽂: 西本尚恵/ 撮影: 金子信敏)

[GAZOO編集部]

MORIZO on the Road