アクアGRスポーツ、幸せな時間をありがとう
定年退職を機にトヨタ・アクア G GRスポーツ17インチパッケージ(NHP10) を購入し、ホイールやマフラーなど自分好みに仕上げるためのカスタムを積み重ねてきた。そんな愛車は、オーナーさんにとって、子供のような、友だちのような存在だという。
「お父さん! そんな走りにこだわったクルマなんて、卒業ですよ! 年齢を考えてください」
そう奥様と娘さんに言われた松原さんが購入したのが、トヨタ・アクア G GRスポーツ17インチパッケージ(NHP10)。42年間勤務した会社の定年退職を機に、このクルマを愛車として迎え入れたのだという。
若い頃から趣味はクルマだけだったという松原さんは、これまでの車歴もセリカリフトバック2000GT、TE37のカローラレビン、スターレットターボなど、走りを楽しめるクルマを多く選んできたという。
だからこそ、本音を言うと次はGR86やGRヤリスにしたかったそうだが、平日はオートマ限定の免許を持っている娘さんが乗るため、運転しやすくてコンパクトなクルマである必要があったのだそうだ。そうなると、アクアという選択肢が1番しっくりくるというわけだ。
それでも、GAZOO Racingが手がけたスポーツコンバージョンモデルに乗っているということや、カタログに書かれた『モータースポーツで得られた知見を生かし、トヨタ屈指の凄腕の匠が〜』という文言を見ると、所有欲が満たされていくのだという。
GRスポーツは標準グレードよりもスポット溶接を増やすことでボディ剛性が向上している。さらに17インチパッケージだけは、フロア下に補強ブレースが追加されているこだわりのグレードだ。
サスペンションについても、17インチパッケージにはローダウン&専用チューングが施されたアイテムが装着されているのも特徴となっている。
「グレードによってタイヤのサイズが違うんですけど、僕のは17インチパッケージというやつなんです。16インチもあったんやけど、この1インチの差は、気持ち的に大分違いますよ」
“1インチ"にこだわるのは、松原さんが走りを楽しむ上で、タイヤのグリップ感を大事にしているからだという。コーナーを曲がった時にタイヤが路面に吸いつく感覚や、タイヤがぎゅっと路面を蹴りながら進み、ざらつきや速度によって変わるフィーリングを楽しみたいのだという。
そしてホイールは、6本スポークでスポーティーな重厚感のあるデザインが気に入っているというボルクレーシングのTE37 SAGAに交換。
「持ってみたら分かるんですけど、鍛造やからめっちゃ軽いんです。やから、ハンドリングや乗り心地の向上なんかも期待できると思っています」
ほかにも、専用サスペンションからさらにダウンサスに交換し、ボディ剛性を上げるためにアンダーバーやドアスタビライザーを取り付け、エンジンのパワーを引き出すためにエアクリーナーを交換するなど、操縦の安定性やコーナリング性能の向上のためのカスタムを施しているという。
「それを付けたら良くなったか?と言われれば、良くなった気がする…みたいな(笑)。少なくとも悪くはなってないです。そもそも、それが分かるような速度で走っていないんですよ。だから、付けられるもんは全部付ける、みたいな感じですね(笑)」
そういうわけでボンネットを開けると装着されたエアクリーナーが目を引くが、それ以上に見るたびに満足感を与えてくれるのはレスサスのものを流用して取り付けたインバーターカバーだという。なんでも、松原さんのイメージでは少々値の張るクルマにこういったカバーが付いているイメージがあり、あると嬉しいアイテムなのだそうだ。
「ボンネットを開けて『おっ!付いてる付いてる』って自己満足するだけなんですけどね(笑)。僕だけが知っている秘密という感じで、すごく気に入っているんです。でも、これはとても大事なことだと思うんです。自分が気に入ったクルマに乗れた方が、楽しいカーライフになるからね。」
それは納得の答えで、確かにアクアにはフロントリップスポイラー、リアスポイラーなど松原さんのやりたかった色々なことが施してある。
なかでも絶対にやらなくてはいけないカスタムだったと教えてくれたのは、センター出しのガナドール製マフラーに換えたことことだ。「エンジンがかかると、ブルルという音を立てながらマフラーから排気ガスが出ますよね。自分の中ではあれがクルマっぽさを感じさせる匂いなんです。だから、僕の中でマフラーは重要なアイテムなんです」
アクアの純正マフラーは後ろから見た時に見えにくいデザインなのだが、松原さんにとってのクルマらしさを象徴するアイテムとしてマフラー交換は必須のカスタムだったというわけだ。
「ホイール然り、マフラー然り、他の箇所然りですけど、とにかくスポーティーなんが好きなんです」とのことで、ワイパーやピラー部分には、自らの手でカーボン調ステッカーを施工したという。その仕上がりには大満足で、ピアノブラックだった箇所がカーボン調になることによって、スパルタンな雰囲気になったという。
ちなみに1番貼るのが大変だった箇所は意外にもルームミラーで、取り外すまでの工程が多かったので手こずってしまったという。「大変だったのに、車内からも外からもカーボン部分が見えないんですよ。あの苦労は何だったのだろうかという感じですね。」と松原さんは言うものの、こうしてクルマにまつわるエピソードが増えていくのだから、思わぬアクシデントが起こるというのは“DIY"の良いところと言えるのではないだろうか。
松原さんはアクアだけではなく、昔乗っていたギャランやプリメーラにも“お手製"カスタムを施していたそうで、奥様のタントカスタムにもテールランプをスモークにするなどの施工を行なっているという。
「愛車たちには、納得するまでやってしまうんです。こうしたいと思い描いたクルマになっていく過程と、やっている時がすごく楽しいんです」
カスタムだけではなくメンテナンスについても、フロントガラスに油膜がついていたらポリシャーで磨きコーティングするし、バッテリー交換も時間をかけて行うそうだ。
「バッテリー交換って慣れてしまえば簡単な作業ですし、そんなに時間もかからないんです。そのまま交換して終わりでも良いですけど、僕は受け皿を洗うなど、手間暇かけて行うんです」
そうするたびに、愛着がどんどん湧いてくるのだという。
サーキットを走る、アウトドアへ行くとか、それぞれ色々なクルマとの関わり方があるなか『DIYで自分好みに愛車を仕上げていく』というのが松原さんのカーライフなのだ。
アクアは松原さんにとって、子供のような、家族のような、友達のような存在だという。
ストレスが溜まれば、スピーカーから大音量かつリアルなサウンドで流れる矢沢永吉の曲が癒してくれる。ドライブに行って楽しく、クルマいじりしている時間も幸せな気持ちにさせてくれる。アクアというクルマは、確実に松原さんの人生を豊かにしてくれているのだと話してくれた。
「妻のタントカスタムを、もうすぐ買い替えようかいう話になってるんですよ。アクアはやりたいことをやり尽くしたから、次は…」と、不適な笑みを浮かべた。おそらく、次はそのクルマの番である。松原さんらしい、個性的なクルマが仕上がるはずだ。
取材協力:萬翠荘(愛媛県松山市1番町3丁目3-7)
(⽂:矢田部明子 / 撮影:平野 陽 / 編集:GAZOO編集部)
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