マツダ・サバンナRX-7(FC3S)を4台乗り継いだ集大成の1台

  • マツダ・サバンナRX-7 GT-R (FC3S)

免許を取得してからマツダ・サバンナRX-7(FC3S)を4台乗り継いできたというオーナー。18年前に自分の理想とする仕様をイチから作り上げたという現在の愛車は、エンジンを5機も載せ換え、ストックパーツのためにガレージを建てるほど、大切に乗り続けている1台だ。

マツダのロータリーエンジンといえば、プラグインハイブリッド車用エンジンとして復活したという話題が盛り上がりを見せているが、やはりスポーツモデルのRX-7に搭載されたエンジンというイメージが強いだろう。
なかでも1985年から1992年までの7年間にわたって発売された2代目のFC3S型は、今でも熱心なファンが多い名車のひとつ。
高知県在住の結城さん(46才)も、ひと目惚れして初めての愛車として購入したRX-7にドップリとハマったオーナーのひとりで、現在は4台目のRX-7を愛車として大切に所有している。

クルマの免許を取る前はバイクがメインだったという結城さん。
「子供の頃から機械モノが好きでしたが、最初からそこまでクルマが好きだったというわけでもなく、まずは自然と原付いじりから始まって、NSRなどレーサーレプリカ系のバイクに乗るようになっていきました」
結城さんがクルマの免許を取ったのは23才のころで、中古車雑誌を見ながら最初に乗るクルマを探していた際に“不思議な縁で”出会ったのが1台目のRX-7だったという。

「まだ免許を取りに行っている最中だったんですが、そのとき気になっていたのは日産のパルサーGTI-Rというちょっとマニアックな車種だったんですよ。それが欲しくて何ヶ月かずっと雑誌を見ていて『もし次の最新号にそのクルマが載っていたら現物を見に行こう!』と決めていたんです。でも、その号でパルサーの横に載っていたFC3Sがなぜか気になってしまい、見に行ったらひと目惚れしてしまって10分くらいで契約書にサインしました(笑)。僕は作中にFCが登場する『よろしくメカドック』という漫画も好きだったので、このクルマに興味がなかったわけではないし嫌いでもなかったけれど、正直ここまでのめり込むとは思わなかったなぁ」
RX-7という伴侶との出会いをそう振り返りながら苦笑いする結城さんだが、なんとこの1台目のFCは、わずか1年で事故で廃車になってしまったという。

「事故の翌日には別のクルマを探しはじめてロードスターを手に入れたんですけど、やっぱりFCのほうが楽しいと3ヶ月くらいで手放して、今度は個人売買で見つけて名古屋まで自分で取りに行きました。その2台目はエアコンも内装も取り外してしまうくらいスパルタンな仕様にして1年半くらい乗っていたんですが、欲しいという方がいたので手放しました。その後に、今度は先輩のFCを譲ってもらったんですが、半月くらいで先輩のさらに先輩に譲ることに…(苦笑)。ちなみにパワーステアリングがなくて乗りにくさでは歴代ナンバーワンの1台でしたね」

その後は雪山でのスキーなどアウトドアを楽しんでいたこともあってレガシィに乗り換えた結城さんだったが、あるとき1つの大きな決断をする。
「28才の時に、一生乗るつもりでイチから自分の理想のFCを作りたいと思ったんです。それを懇意のクルマ屋さんに伝えるとベース車を見つけてきてくれて、自分の要望を伝えて相談しながら形にしていきました。それと、ちょうどこのクルマを買った年の秋に親父が53才という若さで亡くなったこともあって、よりいっそう大事に乗り続けたいという想いも強くなりました」
それまで乗ってきた3台で積み上げてきた経験やノウハウを詰め込んだ集大成が、18年経った今でも美しい輝きを放つこのRX-7というわけだ。

「ボディはだいぶ傷んでいたけれど、外装は全部直してオールペンもするのでそんなに綺麗じゃなくてもよかったんです。でも、内装だけはある程度しっかりした個体をベースにしてもらいました」
ちなみにベース車はベーシックグレードのGT-Rだが、ボンネットはGT-Xのアルミボンネットを流用し、エンジンやミッションなどもすべて載せ換えているという。

「家庭を持つまでは阿讃サーキットや岡山国際サーキットで仲間と走っていたこともあって、エンジンはすでに5機目です(笑)。ハイフロータービンに交換しているので以前パワーチェックした時には360~370psくらいでしたね。それからマフラーも愛媛県のチューニングショップフィーストさんで性能にも音にもこだわってワンオフ製作してもらいました」
『理想の1台に仕上げたい』というこだわりはもちろん、何があっても乗り続けるという覚悟が垣間見える。

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また、ボディカラーとホイールは、廃車になってしまった1台目と同じ組み合わせだという。当然、これも結城さんが意図したものだ。
「いつかまたこのボディカラーで乗りたいなと思っていたんです。ホイールをブロンズにしたのも、この組み合わせが一番しっくりくるからです」

そんな結城さんは、周りにクルマのコンセプトを聞かれる時にこう答えるそうだ。
「クルマ好きな人がすれ違ったときに『ん? なんか違うな』って振り返るクルマです」
というのも、このクルマを作るにあたり結城さんが一番こだわったのが、パッとみたら純正に見えるようにワイドフェンダー化されたボディラインなのだという。

「GT-Rサイズのホイールが入るようにさりげなくワイド加工してもらったんです。純正は15インチですけど、最初は17インチを履かせていて、現在は18インチを履かせています」

こうしてFC3Sが元気で美しい状態を保ち続けていられるのは、オイル交換や消耗品の交換はご自身でおこなうという結城さんはもちろん、主治医である栃木県のサカモトエンジニアリングや、車検整備などをお願いしている地元のプロショップなどともしっかり連携しながら愛車の面倒を見ているからに他ならない。

そして、結城さんのすごいところは、ご自身のクルマの維持だけでなく、FC3Sに乗る仲間たちのことまで考えた行動をとっていることだろう。
「最近だと部品をディーラーで買おうと思っても、廃盤になっていると言われることが多いんです。でも実際には商品コードが変わっているだけで、廃盤になっていないものも結構多くて。だから梱包に書かれているパーツコードなんかは一通り撮影してSNSとかにアップするようにしています。そうしておくと、ほかの人もそのパーツが手に入るって分かりますから」
これまでの整備やチューニングの記録もすべて整理してファイリングされているというから感服する。さらに純正部品もストックしていて、仲間が困っている時には必要なパーツを提供することもあるという。

「たとえばキャリパーのスプリングがないと言われたら在庫の中から譲ったり、コイルに不具合が出た時には検証用として貸し出したりしているんですよ。元々は実家に部品を置いていたんですが手狭になり物置を借りていたんです。それでも入りきらなくなってきたので、敷地内にガレージを建てることにしました。僕の仕事も設備関係なので今は組み立てるための基礎の図面を自分で書いています。基礎工事は友達にやってもらって、ガレージは自分で建てるつもりです」

愛車とのカーライフをさらに充実させてくれるに違いないマイガレージについて楽しそうに話す結城さんには、もうひとつ願望も。
「僕には娘がふたりいるんですけど、どちらかがこのクルマを乗ってくれたらいいなと思っていますね。今のところ6才になる上の子は乗ってくれて、加速も喜んでくれている感じですね(笑)」
立派なスポーツカー好き女性に成長しそうな兆候は、父親として今からとても楽しみなことだろう。

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結城さんは愛車やカーライフについて「FCオーナーはすごい方がたくさんいるので僕なんかまだまだ…」と遠慮気味に話されていた。
しかし、ご自身だけでなく他のオーナーさんのカーライフの充実まで考えながら過ごしているという彼は、きっと“すごい方"の1人なのではないのだろうか。そしてそんな生き様は、とてもカッコいいと思う。

取材協力:高知工科大学 香美キャンパス(高知県香美市土佐山田町宮ノ口185)

(⽂:西本尚恵 / 撮影:平野 陽 / 編集:GAZOO編集部)