AT車で十分という気持ちは一掃。日産 ノートNISMO Sが教えてくれるMT車の魅力
「MT免許を取ろうとしてるのって、もしかして女子で私くらいじゃないの!? 全然上達しないし、やっぱりAT免許にすれば良かった…」と、何度も教習所で後悔したと話してくれたちなつさん。
クルマ好きのご両親の『もちろん、MT免許にするんでしょ?』の質問に、反射的に「うん」と返事をしてしまったのがそもそもの始まりだったそうだ。
「両親はクルマ好きでしたが、当時の私はクルマにまったく興味がなかったんです。なんとか免許は取ったものの『MT車なんて一生乗らないだろうし、母のお下がりの日産・モコがオートマチック車ですごく乗りやすかったので、MT車を運転できる免許も無意味だったな…』とさえ感じていました」
教習所で乗ったっきり、約1年ぶりとなるMT車に何故乗ろうと思ったのかを尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「乗りたくなってしまったんです。運転が楽なのは圧倒的にAT車のモコだったけど、教習所ではクラッチの操作が下手くそでエンストをしまくって心が折れたくせに“楽しかった”のは教習車の方だったんですよね。自分でも不思議です(笑)」と、少々困惑気味の顔をしていた。これを聞いて喜んだのはご両親で、『ついに、お前も…!』と嬉々としていたそうだ。
そうと決まればと、各メーカーのMT車を調べ始めたというちなつさん。家族が日産党だったこともあり、まずはメーカーを日産に絞って探し始めたそうだ。お母様が免許を取って初めて乗ったというシルビア、お父様が大好きだったというスカイラインやフェアレディZ、そして180SXなど。デザイン的には古いクルマが好みだったが、お財布的には優しくないため却下。そこで、もう少し新しめのクルマに絞って検索をかけると、コロナ禍の真っ最中ということもあって、中古車価格が高騰していて手頃な個体が無かったのだという。
そこで、ちなつさんはあることに気が付いた。MT車はそもそも新型車の中にラインアップがほぼ無く、中古車市場でもその流通量はかなり少ないこということに。と同時に、以前の自分と同じように、MT車に苦手意識を持っている人が多いということにも。
「今だから言えるんですけど、MT車って“下手”でも楽しいんですよ。そして、これが最大の魅力なんです。回転数が上がってくると変わるエンジンの音、2速から3速に引っ張ってギヤを入れるタイミング、ギュッと踏まなくちゃいけない重めのクラッチ、扱い慣れてくると自分の思うように曲がってくれるようになることなど、いま私がこのクルマを動かしているぞ! というのを目一杯感じられるんです」
だからこそ、もしも初めからMT車が自分には無理だと諦めている人がいるなら、モノは試しで1回は挑戦してみてほしいとちなつさんは言う。
通勤のために仕方なく運転するという単なる移動時間が“楽しみの時間”に変わると、勤務後の締めくくりを最高の気分で迎えられるし、週末のドライブを心待ちに仕事を頑張れるなど、充実感がかなり変わってくるからだそうだ。
さて、そんな ちなつさんがノートNISMO Sの存在を知ったのは『○○万円以下で買える、マニュアル特集』というWeb記事を読んだからだ。そこには、スイフトスポーツ、コペン、ヤリスなどが挙げられており、その中にノートNISMO Sが載っていたのだという。
走りに特化したマニュアルミッションを搭載したモデルで、スポーティな見た目にも関わらず、お財布に優しい車両価格というのが購入の決め手となったそうだ。また、雪の積もる地域なのでFRより安心感のあるFF車というのも良かったと思えるポイントで、気兼ねなく友達とスノーボードに行けるのだという。
愛車として迎え入れるからには、自分のライフスタイルが変わっても乗り続けたいと思っていたそうで、走りの楽しさと日常使いが両立しているということが重要だったのだ。
前期型にこだわったのは、内外装ともにメッキなどの華飾が付いておらず、シンプルで機能美が感じられるデザインだったことと、e-POWER NISMO SというATのグレードが存在しなかったからだという。
「どうせなら、MT車に乗っているんだぞ! ということをアピールしたかったんです(笑)。後期型だと、同じNISMO SでもATの設定があるから、この子はどっちに乗っているんだろう? ということになってしまうじゃないですか。けれど、前期型なら間違いなくMT車を運転しているんだなと、分かる人が見たら分かるというところが良かったんです」
というのも、ちなつさんは、MT車を運転している自分が好きなのだという。『MT車を運転できるんだ』ということが自信に繋がり自分にとって大きな一歩になっていると頬を赤らめながら話してくれた。
2022年8月1日、ちなつさんが20歳の誕生日であったこの日。彼女の元に日産・ノートNISMO S(E12改)のMT車が納車されることとなる。
「その日は友達と遊びに出掛けていたのですが、家に帰ってくるとモコが停まっていた場所にノートNISMO Sが停まっていたんです。中古車屋さんは、誕生日付近に納車になるとは言っていたものの、私をビックリさせるために父が色々手配してくれていたみたいです。まさか、初めて自分で買ったクルマが家にあるなんて!! と、泣いて喜んだのを覚えています」
すぐさまハンドルを握って公道へと繰り出したが、父からのダメ出しはそれなりにされてしまったと苦笑いしていた。坂道を下る時のギヤ落とし始めるタイミング、全体的にブレーキを踏むのが遅いこと、カーブを曲がる時のハンドルの切り方など、クルマの挙動を感じながら走るコツを優しく指導してくれたという。そして帰路はお父様が運転する横で、その手と足の動きを目に焼き付けながら帰ったということだった。
そんなお父様は、ちなつさんが産まれる前は、足まわりを固めたスカイラインで走りを楽しみ、自分でクルマいじりもしていたそうで、カスタマイズにも協力的なのだとか。シフトノブをNISMO製のものに交換してくれたり、スタッドレスタイヤに履き替える時も、お酒とおつまみを引き換えにお願いすると、文句を言いながらもやってくれるそうで『持つべきものはクルマ好きの父だ』と腕を組んで深く頷いていた。
「シフトノブの握り心地が良いと、自分で操縦してる感が増して、ギヤチェンジをする楽しみが倍増するんです。例えば、高速道路などの長い直線で加速させていく時に、ギヤをどんどん上げていくでしょう? その時に、“あ〜これこれ!”となるんです」
お父様の頑張りもあって、ちなつさんがしっかりカーライフを楽しめていることを、ここに記しておこう。
ついでにもう1つ追記すると、お母様もかなり頼れるのだ。つい先日点検に行った際に、整備士さんに『ドラシャ(ドライブシャフト)が〜』と言われたが、何のことか分からず話を理解できずにいたそうだ。すると、お母様が「ココの部品のことを言っているんだよ」と細かく教えてくれたそうだ。
こうしてご両親の力も借りながら知識を増やし、自分好みに進化させていくと、クルマが自分のパーソナルスペースとして変わってきたのだという。車内に入ると落ち着き、ハンドルを握るとワクワクし、目的地についてもまだ乗っていたい、走っていたいと思わせてくれるようになったとのことだ。
「納車して2年になりましたが、全くもって飽きないですね。ずっと寄り添っていきたいし、人生重ねていきたいと思えるくらい好きです。夢は、納車された時の写真を見ながら、こんなに前から乗ってたんだっけー? と家族で笑うことなんです」
今後、もしもMT車が無くなったとしても、自分だけはクラッチを踏んで、シフトノブを操るクルマに乗っていたいという。あと10年、20年後、ちなつさんにそういう日が来ることを願って…。
(文: 矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)
許可を得て取材を行っています
取材場所: 四季の里(福島県福島市荒井字上鷺西1-1)
[GAZOO編集部]
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