人生の2/3を共にしたスバル・レガシィとは、これからもまだまだ一緒です
「このBH5型レガシィツーリングワゴンは、もともと2002年に父が購入したクルマなんです。当時、小学6年生だった私も契約に立ち会ったのを覚えています(笑)。父にとってはDOHCエンジンであることと、マニュアルミッションであることが決め手だったみたいですね」
エンジンがDOHCであることがクルマの購入動機になる時代も、そう言えばあったのだったなと、なんだかホッコリした気分にさせられる逸話を披露してくれたオーナー。それはオーナー自身のおっとりとした性格と、素朴で優しい口調のおかげもあったかもしれない。
父親が買ったレガシィツーリングワゴンが家族のクルマとなってからは、次第にWRCにも興味を持つようになったオーナー。「ラリーで培った技術が、うちのクルマにも活かされているんだな」と、ますます“我が家のレガシィ”が好きになっていった。
「父にずっと欲しい欲しいとは言っていたのですが、私が2013年に就職することになったのを機に『大事に乗ってね』と譲ってくれました。子供の頃からいつも後ろに乗っていたクルマを、仮免練習中に初めて自分で運転した時、いよいよ自分のクルマになるんだなと実感しましたね(笑)。父はクルマを通勤に使うこともありませんでしたから、あまり走行距離も伸びていなくて、11年間で走った距離は6万8000kmくらいでした」
このように親子二代で所有されることとなったレガシィツーリングワゴンは、TSタイプRという2.0リッター水平対向4気筒の自然吸気エンジンを搭載するグレード。レガシィと言えば、一般的にはターボ車の方がよく知られているが、オーナーは「NAにはNAなりに素直さがあって、私は好きです。マニュアルミッションを操っていると自分が主体的に運転しているという実感も湧きますし、自分にはこの組み合わせが性に合っている気がします」と朗らかに言う。
父親が所有していた時はあまり伸びなかった走行距離だが、オーナーが所有してからというもの北は北海道、南は沖縄と日本全国を走り回り、47都道府県を制覇。行った先々の名所と一緒にレガシィの写真を撮ることもひとつの楽しみとしており、この時代にあえて紙焼きにした写真を収めたアルバムを何冊も保存している。
実際に見せてもらうと、一目でどこの名所かわかるよう上手に撮られた写真ばかり。これはこれで風情があるなと思うと同時に、その瞬間どこでどう写真を撮ろうかと思案しているオーナーの姿も想像されて、なんだか微笑ましかった。
そしてもうひとつ、オーナーがどハマりしてしまったのが、道の駅巡り。2017年には東北に当時あった道の駅156駅をすべて回り、スタンプラリーを完走した証明書まで手に入れている。
「今は期限が設けられていないんですけど、当時は決まった日までにスタンプラリーをコンプリートして提出しないと、証明書を発行してもらえなかったんです。ただ、まだ震災後で道路が工事中のところもあったりしたので、少し猶予が与えられたんですよね。でもその分、駅数も当初の153駅から156駅に増えちゃいましたけど(笑)。最初は旅行のついでに寄れる時に寄ろうという感じで気楽にはじめたのに、最後の方は意地になってきて、だんだん何のために回っているのかわからなくなっていきました(笑)」
一度始めたことは最後までやり遂げないと気が済まない性分。その粘り強さは東北人気質の表れなのかもしれないが、そんなオーナーを陰に日向に支えてきたのがレガシィだった。
「水平対向エンジンはよくオイル漏れすると言われますが、それも最初は滲む程度の症状なので、その段階で対処すれば、そんなに大したことではないですよ。馴染みの南相馬のディーラーが、ちょっと異音が出るだけでも持って来てって言ってくれるほど、手厚く対応してくれている面もありますが、私自身はこれまであまり大きなトラブルには遭ったことがありません」
定期的なオイル交換を欠かさないのは言うに及ばず、これまでにタイミングベルトは合計3回交換しているというオーナー。最近『もう10万km乗る覚悟』でリフレッシュを行い、オルターネーターや燃料ポンプなど、不具合が出る前に予防処置的な意味も含めた部品交換を行なったそうだ。
「子供の頃から乗っていますから、リヤサスが抜けて乗り心地が悪くなってきたな〜とか、月イチで洗車していると、この辺がオイルっぽいなあとか、だいたい自分で気がつきますね。燃費はおおむね14km/リッターくらい走りますし、南相馬から大阪までだったらワンタンクで行けますよ。人も荷物も乗せられて、本当にオールマイティなところが一番気に入っているポイントです」
カスタマイズはほとんどしていないが、自分の強い意志で交換したのがクリア仕様のリヤガーニッシュ。これは当時の純正アクセサリーで、中学生の時にカタログで見てからずっと欲しくてたまらなかったこのアイテムを、就職してクルマを父親から譲り受けてすぐに購入して交換したそうだ。
「本来は“LEGACY”ってロゴが入るんですけど、これを付けるとロゴが“SUBARU”になるんです。どこにもLEGACYのロゴがないのは寂しいかなと思って、BP用のLEGACYのエンブレムを右下につけました」
オドメーターに刻まれた現在の走行距離は40万4734km。本人は『もう10万km乗る覚悟』なので、少なくとも大台の50万kmまでは現役を続行する予定だ。最近はさすがに昔のような無茶な旅行は減って、友人に会いに行くのを目的に出かけることが増えてきたと言う。
例えば、郡山にあった大学時代の同級生で、地元に戻った友人の家を訪ねてみたり…というので、ちなみにそれはどこですか? と聞くと「宮崎です」とオーナー。ああ、この人はきっと何も変わらなさそうだな、と思うほかなかった。
「4つ下の妹がいるんですけど、妹もこのレガシィには想い入れはあるはずなのに『いつまでこんなに古いクルマに乗ってるの?』と言われたりもするんですよね(笑)。シートだって当時のまま変えていなくて、毛羽は出ますけどヘタリはしてないんですよ。もう10万kmは乗ろうと、一応心には決めていますが、果たしてその後どうするかは自分でも決めていません。さて、どうしましょうかね(笑)」
かつて自分が子供だった時に乗せてもらった親のクルマを譲り受け、今では逆にそのクルマを我が子のように慈しみ、共に歩を進めるオーナー。
その旅路はもう10万kmと言わず、20万kmでも30万kmでも伸ばしていってもらいたいものだ。
(文: 小林秀雄 / 撮影: 中村レオ)
許可を得て取材を行っています
取材場所: 四季の里(福島県福島市荒井字上鷺西1-1)
[GAZOO編集部]
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