2台の日産・エクサを我が子のように慈しむ夫婦のカーライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場である群馬県 群馬大学 桐生キャンパスで取材した日産・エクサ(KEN13)

    日産・エクサ(KEN13)



『1台のクルマでクーペとキャノピーという2タイプのボディスタイルを楽しめる』という、エポックメイキングなクルマとして登場した日産・エクサ(KEN13)。

バブル景気に沸いていた1980年代の勢いが感じられる遊び心あるコンセプトで、北米市場を中心に投入されると米国工業デザイン優秀賞やカナダ・カー・オブ・ザ・イヤーなどを次々と受賞。日本国内では残念ながら法規上の兼ね合いで脱着交換こそ認められなかったが、リトラクタブルライトやTバールーフなど当時の若者たちの心を掴む攻めたパッケージで、1986-1987日本カー・オブ・ザ・イヤーやグッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得たモデルだ。

そんなエクサに魅了され、一家で2台のエクサを所有しているのが『それもまたよし』ご夫婦である。

「エクサのデザインはもちろん、唯一無二の面白みを持ったコンセプトに惚れました。運転免許を取得した21歳の時には、すでにエクサが欲しいと思っていたのですが、学生だったので予算の都合もあって、そのタイミングでは買えなくて…。でも、社会人になってから、やっぱりどうしても乗りたいと思って、中古車を探して購入しました」

そんな旦那さんが28才の手に入れたのは「2ドアのステーションワゴンみたいな雰囲気で、リヤがストンと切り立ったスタイル、雰囲気が素敵だなと感じたんです」というキャノピー仕様のエクサ。
“黒いボディカラー”と“キャノピー”という条件は絶対で、本当はMT車が欲しかったものの、当時の中古車価格との折り合いの都合で後期型のタイプSでAT車を購入したという。このエクサで、はじめてミーティングに参加したことをはじめ、数十万円をかけてATのオーバーホールをしたこと、プラモデルと交換で手に入れた白いTバールーフを装着していたことなど、さまざまな思い出が詰まった1台だったそうだ。

いっぽうの奥様は、もともとクルマに興味はなく免許は持っていなかったものの、旦那さんと結婚して群馬県で生活することになったのがキッカケで、通勤などに使用するマイカーが必須に。

「じゃぁどんなクルマを買おうかしら? と考えた時に、やはりスーパーカー世代ということもあって、リトラクタブルヘッドライトのクルマがカッコ良いなと思ったんです。それと、以前にエクサのミーティングに連れていってもらったことがあって『面白い人が多くて、ここに参加できるんだったら私も乗ってみたいな』と感じたのもエクサを選んだ理由のひとつですね」と振り返ってくれた。

そんな思いを抱えながら中古車情報誌を見ていたところ、発見したのがこの『空色くん』と呼んでいる、ライトブルーメタリックの1987年式エクサ クーペ タイプB(KEN13)だったという。
「雑誌に載っていた写真で、このボディカラーを見た時に素敵だなと思って、実車を確認に行ったら写真よりもさらに好みの色だったんです。同じくリトラの3代目プレリュードも良いなと思っていたんですが、最終的にはこのボディカラーが決め手になりましたね。購入したタイミングでは、まだ私は免許を取得している最中だったので、旦那さんに運転してもらって私は助手席に乗り、二人で群馬県まで連れてきたのも良い想い出です」

「旦那さんから『最初にマニュアル車に乗らないと乗れなくなっちゃうよ』と言われてマニュアル免許を取得して、それ以来このクルマを運転しているので、逆にオートマ車は怖いって感じちゃいますね。マニュアル車は“自分で動かしている”感があって安心感があるんです」という奥様。通勤メインに使用していたこのエクサの走行距離は14万5000kmに達するというが、免許を取得して以来、ほとんどこのエクサしか運転したことがないという。

もともと旦那さんの影響を強く受けて乗ることになったエクサではあったが、そのうち奥様もエクサの深みへと陶酔していくことに。
既製品で見つけたエクサのペーパークラフトを見つけて『ココは正しくない』と、自らペーパークラフトを自作してしまっているほど。今ではすっかり筋金入りの“エクサ乗り”であると言えよう。

オーナーズクラブのミーティングやイベントなどに一緒に参加するのはもちろん、2台の愛車とともに雑誌に掲載されたこともあるという。

ちなみに旦那さんは『やっぱり自分もマニュアルミッションのエクサに乗りたい』という思いを抑えきれず、20年ほど前にワインレッドのエクサ タイプSEを増車し、もともとクーペだったボディをキャノピー仕様へと変更。最初に乗っていた黒のエクサは2010年に諸事情で泣く泣く手放すことになってしまったものの、現在はクーペの『空色くん』と、キャノピーの『ワインくん』というエクサ2台体制(プラス普段乗りのルノー・トゥインゴ)で充実したカーライフを満喫しているそうだ。

生産から30年以上が経過した昭和車だけに、ドアのゴムモールからの水漏れトラブルに見舞われたこともあるというが、「少なくとも我が家の3台のエクサを面倒見てもらっていたから、他の整備工場よりも経験値が豊富なのでは?」というディーラーに、メンテナンスをお願いしていて、2台とも快調な状態を保っているとのこと。

「純正ホイールが14インチなもので、最近はこのサイズのタイヤラインアップが少ないのが難点ですね」と、苦労はあるものの基本的には純正のスタイルが好みということで、ホイールまで含めて純正の状態を維持。
また、1600ccのCA16DEエンジンも同様に快調を保っているという。ちなみに、ラジエターに関しては純正品を作っているメーカーに相談して製作してもらったというリビルト品に交換されているそうだ。

そんなエクサで唯一、手を加えているのがオーディオ。レクサスやブガッティにも純正採用されるなど、ハイエンドブランドとして一世風靡した『ナカミチ』のヘッドユニットに、『DYNAUDIO(ディナウディオ)』製スピーカーという組み合わせで、スピーカーボードもプロショップでワンオフ製作してもらったものを奢っているという。

ちなみに、デンマークの家庭用オーディオメーカーとして知られるディナウディオ製スピーカーは、ご自宅でも愛用しているというから、おふたりがいつも素敵な音楽に包まれながら生活しているという、優雅な様子が想像できる。

「実はエクサは、特徴的なテールランプをはじめ、ペダル、そしてリヤスピーカーグリルのデザインが統一されているんですよ。そんな細部のこだわりも、このクルマの好きな部分なんですよね」と、微笑みを浮かべながら話してくれた。

最初の黒いキャノピー仕様も含めると、エクサとの付き合いは30年以上。エクサを『ウチの子』と呼ぶご夫婦が、愛車について語ったり触れたりする様子は、まさに可愛い我が子を自慢するかのようだ。

そして、実は今回の取材会場となった群馬大学の桐生キャンパスは、旦那さんが大学生活を送った思い出の場所だそうで、「授業を受けていたのはあそこの建物で、昔はあそこに小さな池があってさ…」と、当時の様子を奥さまと“我が子”に紹介している様子も微笑ましかった。

これまで1度も車検を切らすことなく維持し続けてきたという2台は、これからも家族の一員として愛され続けていくことは想像に難くない。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

許可を得て取材を行っています
取材場所:群馬大学 桐生キャンパス(群馬県桐生市天神町1-5-1)

[GAZOO編集部]