探しに探した12年。ついに子供の頃から乗ると決めていたレガシィのオーナーに
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スバル・レガシィGT B-specⅡ(BG5)
クルマが憧れだった時代から、身近なものに移り変わってきたことで、これまでオーナーが主体となった様々なブームが巻き起こってきている。例えば1980年代中盤のRVブーム。パジェロやハイラックスといったクロカン四駆の人気が高まり、各メーカーともに様々なモデルをラインアップしていった。そうして四駆ブームがひと段落すると、また新たなトレンドが発生するのは市場の原理でもある。
1990年代に入ると次のターゲットとして白羽の矢が立ったのは、クロカン四駆よりも取り回しがよく、なおかつユーティリティスペースが広大なステーションワゴンであった。中でもクロカン四駆並みの走行性能を保持し、スタイリッシュなフォルムをも併せ持つ、スバル・レガシィは、スキー/スノーボードブームの高まりとともに一躍ステータスシンボルにまで上り詰めるほどだった。さらにミニバンなどの選択肢がなかった時代には、その使い勝手の良さはファミリーカーとしても十分に満足できるパッケージとして高い人気を誇っていた。
そんなスバル・レガシィが子供の頃に家のクルマとして存在し、その頃の楽しかった想い出を蘇らせるべく、1995年式スバル・レガシィGT B-specⅡ(BG5)のオーナーになったのが『46ぬこ』さんである。
RVブームからの流れを受け継ぐ形でステーションワゴンブームを牽引したレガシィ。46ぬこさんが所有するBG5は、2代目として1993年にデビューし爆発的なヒットをおさめたモデルだ。これ以前のステーションワゴンの多くは「ライトバン」と呼ばれ商業バンの印象が強いモデルが多かった。
しかし、1989年に初代レガシィが誕生するとそのイメージは一変。特に4WDを活かした高い走破性は雪道での信頼性が高く、取り回しにくい大きな4WD車から乗り換える人が続出した。以降、トヨタ・カルディナや、日産・アベニールサリューなど、リゾートエクスプレスの異名を持つモデルが多数登場したことは、レガシィが時代を動かしたクルマであった証とも言えるだろう。
18歳の頃からBG5を探し求めていたという46ぬこさん。グレードやコンディションは決め打ちだったため、希望通りのクルマに巡り合うまで12年もかかってしまったというのだから、そのこだわりは尋常ではない。特に驚いたのは地元の北海道よりも、コンディションが良いBG5が見つかると踏んで、関東へと移り住んでまで探したという徹底ぶりだ。
「僕が子供の頃、父がBG5レガシィの『GT B-spec』に乗っていたんです。その時の楽しかった想い出が忘れられず、免許を取ったら僕もBG5に乗るって決めていました。でも、父が乗っていたネイビーのボディカラーとGT B-specというグレードは外せない条件だったので、なかなか見つけられなかったんですよ」
「地元の北海道よりも見つけやすいんじゃないかって、高校を卒業してそのままスバルに入社して群馬にやってきちゃいました(笑)。とは言っても、このクルマも2年前にようやく見つかったんですが、GT B-specではなく『GT B-specⅡ』ですから、本来の狙いとはちょっと違うんですよね。でもこれを逃したらこの先出会える可能性は限りなくゼロかなと思って、コンディションも良かったので手に入れたんです」
46ぬこさんが探し求めていたGT B-specは、スバルの代名詞とも呼べる水平対向4気筒に、シーケンシャルツインターボを搭載したEJ20Hを搭載する。その出力は2リッターエンジンのステーションワゴンとしては当時最高出力だった250ps。スカイラインをはじめとしたスポーツカーにも引けを取らないパフォーマンスを実現していたのだ。
さらに4WDの駆動力は、ハイパワーながらも路面を確実に捉えることで安定感も抜群。スキー/スノーボードブームの到来と共に、ゲレンデへと向かうオーナーが続出したことは言うまでもない。
ちなみに46ぬこさんのGT B-specⅡは、ツーリングワゴン誕生15周年を記念した特別仕様車だという。
長年かけてコンディションを吟味しながら選び抜いた車体だけあって、フルオリジナルのボディは約30年が経過しているとは思えないほどのツヤ。また購入時は4万2000キロしか走っていなかったが、タイミングベルトやヘッドカバーのパッキンなどエンジン周りもリフレッシュ済みだったという。
ちなみにグリルに装着されるエンブレムはGT B-specⅡ用は赤に替えられていて、他のBG5とはひと味違うアイキャッチになっているのはお気に入りなのだとか。
内外装だけでなく、46ぬこさんが特に注目したのがボンネット裏のインシュレーター。若干のめくれなどはあるものの、原型をとどめていたのは驚いた点なのだとか。
「断熱材がボロボロになってしまい、取り外されているのはBG5界隈での常識(言い過ぎ?)なんです。それなのにこのBG5にはしっかりと残されていて、もちろんボディや内装の状態もこれまで見てきた中で最高の状態だったんです。中古車として出回っているどんなBG5と比べても、これ以上の車体は見つけられないと思いました。さらに、前オーナーさんともXで繋がっているから、クルマの来歴と言った面でも安心感は高いですね」
そんなグッドコンディションの愛車において、唯一の変更点はアルミホイールだ。本来は5本スポークが装着されているのだが、お父さんが乗っていたGT B-specの純正に合わせ、16インチのBBSへと交換されている。この辺りはGT B-specⅡではなく、GT B-specこそが本命だった46ぬこさんのこだわりアレンジだ。
ラゲッジのアンダートレイには純正工具や発煙筒、三角表示板などに加え、予備のLEDバルブも用意する。室内灯などもストックしておくことで、常に万全の状態で万が一に備えているのは、BG5を最高のコンディションで楽しみたいがため。
厳密に言えばホイールは異なるが、フルオリジナルをキープするBG5はこれが理想の形。とは言ってもカスタマイズ欲求を満たすため、BG5とは別に日産・マイクラC+Cをカスタム&オーディオマシンとして所有しているのだとか。こちらはイベントなどに参加するための車両として使用し、BG5は通勤などのメインで活用しているという。
また、両親を北海道から呼び寄せて同居しているため、BG5とマイクラC+C以外にもお父さんのスバル・WRX S4と、お母さんのスバル・ステラも使用できるという羨ましい環境なのだ。
「レガシィに乗り換える前の父の愛車はDR30やR31スカイラインで、子供ができたから使い勝手の良いレガシィに乗り換えたと聞いています。そんな話を聞くと、クルマ趣味よりも自分が大切にされていたんだなって嬉しく感じますね。ただ、無難なファミリーカーではなくレガシィGT B-specだったというのは、多少の葛藤があったんじゃないかな。むしろスカイラインよりもパワーが出ているんですから、計画的なアップグレードだったのかもしれませんね」
「もちろん僕自身もそのクルマで北海道・十勝24時間耐久レースなどに連れて行ってもらったりしたので、いろんな想い出が詰まっていましたし、母もラゲッジでオムツ替えができると重宝していたみたいですし。結論として我が家のファミリーカーとして最善の選択だったみたいです」
ボディ同様に内装も色褪せや擦り切れなどのない美しい状態をキープしている。オーディオなども純正CDデッキをそのまま活用しているが、現代との技術的な違いがあるため音質的には今ひとつ納得できないのだとか。その解決策として社外ウーファーへの出力ラインを製作し、シート下にウーファーを組み合わせている。この辺りはマイクラC+Cをオーディオマシンに仕立てた経験が活かされているといえるだろう。
シート表皮も擦り切れたり色あせたりすることなく、GT B-specⅡ専用ファブリックがそのまま残されている。前オーナーも大切にしていたことがわかる各部の状態は、12年間探し続けた46ぬこさんにとってこれ以上の車体には巡り合えないと決断させるだけある。
想い出のクルマとして乗り続けていくという夢も、このBG5なら実現させることができるというわけだ。
ラゲッジには当時純正オプションとして用意されていたCDチェンジャーが搭載される。もちろん実働品な上、この他にも予備で6連装と12連装タイプもストックしている。今でこそスマホで様々なアーティストの楽曲を手軽に楽しめるが、ひと昔前の不便な中の便利さを楽しむのもBG5の楽しみ方なのだとか。
現在はテレビやナビを搭載していないものの、リヤゲートには当時の雰囲気を味わうためのアクセサリーとして、懐かしのTV用ロッドアンテナが残されている。
ちなみに、過去のブーム時にはキャリアを載せて雪山に向かうリゾートエクスプレスの筆頭だったレガシィ。しかし46ぬこさんが取扱説明書を確認したところ、キャリアを装着していたルーフレールはアクセサリーであって、メーカー的にはキャリアを装着するのはNGだったとのこと。こんな意外な事実も発見できたのは、取扱説明書を隅々まで熟読し、もはやBG5マニアと呼んでも過言ではない知識を蓄えているからに他ならない。
そんな46ぬこさんは、取扱説明書だけでなく、整備マニュアルやカタログも網羅。さらに今後何があっても対処できるように、ストックパーツは6畳の部屋を占拠するほど集められている。ヘッドライトやグリルなどはもちろん、メーターは5セット、さらにスイッチ類やクリップと言ったショートパーツに至るまで、BG5用部品は手当たり次第買い揃えているそうだ。
「時間が経過すると、いろいろなパーツが製造廃止になっちゃうじゃないですか。ついこの間まであったパーツも、ある日突然オーダーできなくなってしまったり。ですからパーツを買い揃えておくことは、これからもBG5に乗り続けていくための準備だと思っています。こういったパーツを買うためにもしっかりと働いてお金を稼ぐ。もはやBG5は働くモチベーションに直結しているって感じですね。給料が入ったらどんなパーツを買おうって考えちゃっていますから」
「レガシィを手に入れたら父を誘ってドライブに出かけようと考えていたんです。だから北海道から両親を呼び寄せましたし、希望に近いレガシィを手に入れ、完璧なメンテナンスも行ないました。子供の頃は父がレガシィのステアリングを握っていましたが、これからは僕がレガシィのステアリングを握って、家族の新しい想い出を作っていこうと思っています」
家族との楽しかった想い出を懐かしむだけでなく、その想い出をさらにアップデートし両親に恩返しをすることこそ、46ぬこさんがレガシィを手に入れた本当の目的だったのかもしれない。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 中村レオ)
許可を得て取材を行っています
取材場所:群馬大学 桐生キャンパス(群馬県桐生市天神町1-5-1)
[GAZOO編集部]
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