クルマ好きの大学生を虜にしたトヨタ・プラッツに隠された魅力

  • GAZOO愛車取材会の会場である群馬県群馬大学桐生キャンパスで取材したトヨタ・プラッツ

    トヨタ・プラッツ



昔も今も、カスタムを楽しむベース車として人気があるのは、アフターパーツが充実したスポーツモデルが主流となるもの。しかし、経済性や使い勝手の良さなど実用性を重視したコンセプトのクルマでも、オーナー自身の心意気次第で十分楽しいカスタムベース車になることがある。

コンパクトながら広い車内と大きなトランクを有し、実用性や経済性に優れた4ドアセダントヨタ・プラッツ。筆者からすれば、小学生だった頃に母親が日常の移動手段として使っていたクルマというイメージが強く、カスタムベース車としての認識はまったく持っていなかったクルマだ。
しかし大学の自動車部と学生フォーミュラ掛け持ちするほどクルマが大好きなヤムチャさんは、自身の初めての愛車としてこのプラッツをチョイスした。1年経った今では、自分なりのカスタマイズを楽しみながら、非常に充実したカーライフを送っている様子だ。

それにしても彼はなぜ、カスタムも前提とした愛車としてプラッツを選んだのか。その魅力も含めてお話を伺っていこう。

「クルマは物心ついた時から大好きだったので、きっと生まれた時から興味があったんだと思います(笑)。それと祖父が『家電はナショナル、クルマはトヨタ』という人だったので、家族みんながトヨタ党で、自分もその影響を受けていましたね。だから大学に通い始めて生活にクルマが必要になった時、買うならやっぱりトヨタ車だなって思っていました。あとは絶対にマニュアル車が良かったんです」

普通ならスポーツカーが好きでトヨタのマニュアル車となると、今時のクルマなら86やヤリス、中古で探すならセリカやアルテッツァ、MR-Sにヴィッツ、カローラ系やツアラー系といったところが候補に上がりそうなものだが…。

ヤムチャさんも例に漏れず最初は86(ZN6)が好きだったのだという。しかし「大学生でお金がないし、最初は練習も兼ねてもっと現実的なラインで探そう」と切り替え、中古車を探し始めることになったという。

「“トヨタ・マニュアル・安い順”で検索してみると、検索の上位にプラッツが多く出てくるんです。プラッツは昔祖母が乗っていたのでその存在も知っていたし、母親が乗っていたヴィッツと内装も一緒だったから、小さい頃は不思議だったこともあって気になって。そしてカスタムベースとしては稀有なクルマのはずなのに、パーツも結構あるし、見れば見るほど良いなって思うようになりましたね。それにヴィッツの方がマニュアルのタマ数はあるけど、それだと僕と同じような大学生も乗っていたりするので、面白くないなぁと思って『プラッツ指定』で探すことにしたんです」

そう、ヤムチャさんがプラッツに目をつけた理由の一つが、プラッツがヴィッツと同じプラットフォームに、独立したトランクルームを追加したモデルだったことだ。スポーツカー好きで同じ条件なら、当然人気のあったヴィッツを求める人の方が圧倒的に多い。しかし独自性を狙うならヴィッツから一部のパーツ流用ができるプラッツという選択肢も出てきたワケだ。

「プラッツを探すにあたり、北海道稚内の実家の両親にも相談をしました。そこで両親が馴染みの旭川トヨペットに相談したところ、その社員の方のご家族が、免許返納で手放したプラッツがあるというんです。僕の希望はプラッツのマニュアル車という以外にはなかったので、そのクルマの車検を取り直してもらって50万円ほどで購入。2024年の3月に稚内から群馬まで自走して帰ってきたんです」

ちなみに、プラッツの駆動方式は、FFと4WDの2種類があり、搭載されるエンジンはFFモデルには1リッターと1.5リッター、4WDモデルは1.3リッターの、計3種がラインアップされている。さらにすべてのエンジンに4速ATと5速MTが用意され、グレードもベーシックタイプと上級タイプの2種類があるなど、新車で買うときのバリエーションは充実していた。ヤムチャさんは、その点も面白いと感じた魅力の一つだという。

また中古市場にMT車の個体が多い点については「ハッチバックのヴィッツよりもセダンが好きで、カローラだとちょっと大きいと感じる人の要望に応えていることと、MT車に馴染みが深かいベテラン世代の方にも需要が多かったのかなと思っています。免許を返納された前のオーナーさんも、ウチの祖母もMT車でしたし」と独自の見解も話してくれた。

そんな中ヤムチャさんが購入したのは、1.3リッターエンジン搭載のMT車(NCP16)。北海道で乗られていただけあって、4WDの寒冷地仕様だ。また、グレードは上級のXで2002年式の後期モデル。ボディカラーはホワイトであった。

「色はなんでも良かったんです。ちなみに祖母のプラッツは縁起が良いからとゴールドでした。あとは北海道だったので4WDモデルなのは分かるんですけど、プラッツで最上級グレードを買う人はそんな多くないので、そこはなぜだろうって思いましたね(笑)。買ってから今日まで、まったくトラブルもなく走ってくれているし、燃費も良い。しかも誰とも被らないこともあって、とにかくメッチャ気に入っていす。そして、4WDですが車重も1トンぴったりと軽いので、パワーがなくてもキビキビ走ってくれるところも好きです。あ! あと自分も2002年生まれで、このクルマと同い年なんで、愛着も湧くんですよ」

目を輝かせながら本当に楽しそうに話してくれるヤムチャさんを見ていると、心底このプラッツに乗ることを楽しんでいることがよくわかる。

「見た目もこのセダンスタイルが気に入っているし、オーディオ周りも雰囲気を変えたくないのでノーマルのままにしています。普段は長渕剛とか古い曲が結構好きでCDを聴いていますね。あと空中に浮いているようなメーター周りも結構好きなんです」

そんなヤムチャさんだが、自動車部に所属しているだけあって、当然カスタムにも興味津々。すでに自動車部の仲間と一緒に、車高調整式サスペンションやアルミホイールなど、できるところからいじり始めているという。

「今までにカスタム箇所は、車高調とホイール、フルバケットシートくらいです。車高調はヴィッツ4WD用の共有できるタイプに変え、ホイールは友達が2万円でネットオークションで買った15インチのものを4本6000円で買いました。本当はもっと小さいホイールが良かったんですけど、履いてみたらタイヤもムチムチで可愛くて意外と似合ってて。ちなみに、群大の仲間たちは『スペーサーを使ってホイールをもっと外に出してツライチにした方がカッコいい』と言うんですけど、僕はスペーサーを挟んで剛性が落ちるのが嫌なんで、今の状態で満足しています。そして、ドライビングシートはネットオークションで買った、ブリッドのARTISⅡという昔のフルバケットシートを入れました。サイズ的に入るものが限られているので、色々調べてコレにしたんです」

「ヴィッツからの流用できるパーツも多いので、夢が膨らみますね!」と、カスタムについてはこれからやりたいことが沢山あるというヤムチャさん。今後はタコメーターの追加や、フロントブレーキの強化、さらに剛性が低いという弱点を補強するためタワーバーの追加など、実用的なチューニグパーツでのカスタマイズを検討中だ。また、ワンオフで作るしかないマフラーについては、学生フォーミュラの施設にある溶接機で自作することも選択肢となっているそうだ。そんな中で、ヤムチャさんが目指しているのは『通だなと思えるクルマ』とのこと。具体的にはどういうことか、詳しく伺った。

「このクルマにはエアロパーツが存在しないんです。だったら割り切ってノーマルの見た目も面白いなと思っていて。と言うのも、例えばこのクルマで車高が下がっていても、重たい荷物を積んでいるんだな~くらいにしか思われない。でも、フルバケットシートが装着されているのを見れば、判る人が見れば『なんか一味違うぞこのクルマ』と思ってもらえるはず。そういう“通”なクルマにしていきたいんです!」

ちなみに、この日一緒に取材した“デミオ”オーナーのカネゴンさんは、ヤムチャさんの1つ上の先輩にあたり、共に自動車部と学生フォーミュラの掛け持ちをしている上、アルバイト先も同じガソリンスタンドという大の仲良しなのだそう。『見た目的には大きなカスタムをしていなくても見る人が見れば判るこだわりを持っている』という愛車の特徴にも通じる点があり、お互い刺激し合える良い関係を築いているそうだ。

「洗車やオイル交換は、バイト先のガソリンスタンドで自分でやっています。タイヤも社員価格で安く手に入れることができました。フルサービスで忙しいですけど、結構楽しいですよ!」

この愛車を購入からもうすぐ1年が経過し、そろそろ初心者マークも卒業というヤムチャさん。大好きなプラッツを相棒に、先輩や自動車部の仲間たちと笑顔でいられる最高のカーライフを過ごしていってほしいと強く思う。楽しめ! 若人!!

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

許可を得て取材を行っています
取材場所:群馬大学 桐生キャンパス(群馬県桐生市天神町1-5-1)

[GAZOO編集部]