ホイールもスポイラーも性能も! すべてにこだわりが詰まったセブンススカイライン(HR31)

  • GAZOO愛車取材会の会場である呉ポートピアパークで取材した日産・スカイラインR31後期型2ドアクーペGTS-X

    日産・スカイライン(R31後期型2ドアクーペGTS-X)

R30型に対してボディサイズを大幅に拡大し、発売当初は2ドアクーペを未設定とするなど、大胆とも言えるキャラクター変更が行なわれた7th(セブンス)スカイラインこと、R31型スカイライン。

そんなセブンスに『NS31やまさんSS81』さん(以下、やまさん)が魅了されたのは小学4年生の頃、父親と共に訪れた地元の中古車販売店だった。

「そのお店に展示されていた、後期型の4ドアハードトップGTパサージュのカッコよさに衝撃を受けました。特に気に入ったのは横にラインが入ったテールランプ周りのデザイン」

「このクルマは父が買い替え用として検討していたんですが、数日後に再度お店に行くと残念ながら売約済みに…。結局父はC32ローレルを買うことになりましたが、私は諦めきれず“大人になったらぜったいにこのクルマを買うぞ!”と心に決めました」

まさに劇的とも言えるR31後期との出会いをキッカケに、自身もクルマ好きとなったやまさんは整備士を目指し、専門学校へと進学。18歳で免許を取得後、初めての愛車としてブラックとダークグレーの2トーンカラー、R31後期型2ドアクーペGTS-Xを購入した。

ようやく長年の夢が叶ったかのように思えたが、そこから4年後に、クルマを貸していた身内が事故を起こし廃車に…。

あまりにも突然の別れだったこともあり『もう一度R31に乗りたい』という気持ちは収まるどころか日に日に強くなっていき、雑誌やネットを物色する日々を送ったという。
この時点でもR31スカイラインが生産を終えてからそれなりの年月が経過していたため、状態の良い後期型を探す作業は困難を極めたそうだ。

そうして一年がかりでようやく見つけ出して手に入れたのが、現在も愛車として所有している後期型2ドアGTS(HR31)だ。

「当初は父親と共有という形での購入だったけど、乗るのはほとんど私ばかりなので数年後に名義も変更しました。ホワイトとガンメタの2トーンカラーは純正ではなく前のオーナーさんの趣向によるものですが、これはこれで悪くないなと、そのままにしています」

「周りにはR32やR30型のスカイラインに乗っている人はいましたが、R31は私だけ。よく『なんで?』とも聞かれますが、やはり子供の頃に受けたインパクトという点に尽きると思います」

購入したのは2006年11月ということで、これまで17年以上の月日が経過しており、そのあいだにはさまざまな出来事を経験してきたという。

まず小キズや経年劣化部分が目立った車体周りを一新させるべく、同じホワイト/ガンメタカラーで全塗装を敢行。トラブルについてもインジェクターからのガソリン漏れや、ステアリングギヤボックスからのオイル漏れなど大小様々な問題が発生しており、中でも特に深刻だったのが購入後2万kmほど走行距離を伸ばした頃に起こったオーバーヒートだった。

車体からエンジンを降ろし詳しく調査したところ、6番シリンダー内部に異常を発見。さらにシリンダーヘッドの歪みによって冷却水がエンジン内部に侵入するウォーターハンマー現象の兆候も見られた。幸い致命的なエンジンブローは避けられたが、長く乗り続けていくために全面的なオーバーホールを実施。作業を待つ間を利用して、エンジンルーム内の再塗装も行なわれている。

「他に大掛かりなものとしては、トランスミッションをATからR34スカイラインの2リッター用の5速マニュアルに換装しています。購入時は予算の都合でAT車にしか手が届かなかったんです」

「それからスピードメーターは1台目から移植したインパルの260km/hスケールに交換。ブレーキキャリパーはSNSの友人から譲ってもらったZ32型フェアレディZ用に変更しました。乗り出してから3年目くらいの、2010年から11年頃にかけては結構大規模な作業が続きましたね。足まわりの交換とか日常的なメンテナンスは自分でやっていますが、整備関係はSNSで知り合った地元の先輩の工場にお世話になっています」

このように列記すると苦労ばかりが続いているようにも思えるが、すべては理想のカッコよさを追求するため。

外観部分でのこだわりは、当時のグループAホモロゲーションを取得すべく800台が限定生産されたGTS-R用純正リヤスポイラーと、足元に輝く17インチのハセミスポーツS-5ホイール。この組み合わせは一台目の頃から行なわれていたもので、特にホイールは遥か昔に生産中止となっている製品だが「このクルマにはこのホイールのデザインがベスト!」と、スペア用として別にもう1セット保有するほどの惚れ込みようだ。

GTSの装備で自慢ともなっていた『GTオートスポイラー』だが、既に不動となっている個体が多い中、しっかりと実動可能となっているのもポイントだ。

さらに車両への装着は行なっていないが、友人から譲り受けたものだという秘蔵のお宝アイテムとして、当時の日産純正オプションシリーズ『AD three(エーディスリー)』のオイルキャップ、ストラットタワーバーも所有している。

そんなR31スカイラインGTSをこよなく愛し続けるやまさんの姿を見守るのが、同ゴールドプラグカバーを持っている4歳年上の兄である。

「父親がロケットテールの210サニーやB11サニーターボ・ルプリなど、ちょっと変わった車種ばかり乗っていた影響で、まず先に兄の私がクルマに興味を持つようになりました。私は小学生の頃から戦隊ヒーローものより、西部警察やあぶない刑事を観て育ちましたが、まさか弟がここまでクルマ好きになるとはオドロキでした。でも今振り返っても、兄弟揃ってクルマにハマるキッカケとなったのはやっぱり中古車店にGTパサージュを見に行った“あの瞬間”だったと思いますね」と、お兄さん。

ちなみにお兄さんはF31レパード、P11プリメーラ、C32ローレルなどを経て、現在はY50フーガを所有。
独身時代は兄弟で近隣にドライブに出かけたり、R31スカイライン乗りの聖地とされている岐阜県にある専門ショップ『R31ハウス』を訪れたりと、いっしょにクルマ趣味を満喫していたという。

しかし、家庭を持ち、2年前には子供も生まれるなど、やまさんの生活環境は変化していく。愛車に乗る機会は次第に少なくなり、一時はR31を手放すことも考えたという。
とはいえ、手塩にかけてコンディション管理に努めて来た大切なクルマ…。しかし、幸いにも奥様の理解があり、今後も所有を続けて行くことを決意したという。今後は経年劣化が懸念される電装系の予防整備も兼ねて、ハーネス類の全交換を行なう必要性を感じているそうだ。

「子供は女のコでまだ2歳ですが、バスやトラックなどクルマを見かけると喜ぶんです。もう少し大きくなってジュニアシートが使える歳になれば、一緒にドライブに行けたら良いですね。もちろん、免許が取れる歳になった時にはこのクルマに乗って欲しいという気持ちもありますけど…」

“いつの日か我が子に”。そう思えば、整備に要する手間や苦労も、モチベーションのひとつとなり、前向きに取り組んでいくための理由となってくれるはずだ。

(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)

許可を得て取材を行っています
取材場所:呉ポートピアパーク(広島県呉市天応大浜3丁目2-3)

[GAZOO編集部]

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