今も昔も流麗なスタイルにゾッコン! 3代目プレリュードと過ごす第二の青春
1987年にデビューした3代目プレリュードは、スポーツカー並みの運動性能とサルーン並みの快適性能を兼ね備えたモデルとして瞬く間に話題になり、当時、若者を中心としたデートカーとしても名を馳せた。そんなプレリュードに魅せられた今回のオーナー、SHUさんも、25歳の時にこのクルマを愛車として迎え入れたひとりであった。
「当時流れていたコマーシャルが、すっごく良かったんですよ。クラッシックな曲とともに外国の街並みの中を紳士が優雅に運転するプレリュードが走っていて、4WSならではのタイヤがクイッと曲がる映像が映し出される。それがオシャレでねぇ。それで僕は、ちょっと背伸びをしてプレリュードに乗ろうと決めたんです」と、懐かしそうに想い出を話をしてくれた。
購入したのはトップグレードの2.0Si。ベーシックグレードが13インチのタイヤを履くなか、ワンサイズアップの14インチが奢られ、フォグランプやサンルーフも標準装備された、SHUさん曰く“ちょっと気合いの入ったグレード”だったとのこと。
「このクルマを選んだのは、プレリュードの1番の魅力がその“スタイル”にあると感じたからですね。こんなにも芸術的なボディラインをしているクルマは、後にも先にもこのプレリュードだけだと思っています」
先代にあたる2代目プレリュードも、ボンネットフードが低いデザインだったが、3代目はそれより30mm低く、2代目の途中で追加されたSiグレード同士を比べると実に50mmも低く構えたスタイリングだった。
「同じ2000ccDOHC(B20A)エンジンを搭載しているにも関わらず、2代目とここまで差を出せたのは、エンジンの搭載傾斜角を15度から18度にしたからですね。この3度の違いで、吸排気の抵抗低減と同時にエンジンレスポンスの向上を図るなど、よりホンダらしい高回転型パワーユニットに進化を遂げたんです」と、嬉しそうに教えてくれたSHUさん。
「正面から見るとボンネットフード中央からノーズに向けてガクンと傾斜がついて、さらに下がっていくんです。本当に、このボンネットの中に2000ccのDOHCエンジンが入っているのか? と疑うくらい低いんです。数十年ぶりに実物を見た時、あまりの低さに驚愕しましたね。これこれ。プレリュードはこうだったって感じでした」
そして、このボンネットハイトの低さだからこそ引き立つのが、3代目プレリュードの特徴の1つでもあるボンネットディフレクターや、リトラクタブルヘッドライトの個性である。スーパーカーブームが巻き起こっていた中学生時代、クーペスタイルでリトラクタブルヘッドライトというスタイルに憧れたSHUさんにとっては、大のお気に入りポイントだそうだ。
「まぁ、そこだけじゃなくて、この出立ちすべてが好きなんですけどね。ノーズ先端からリヤにいくにつれ上がっていく流線型、ダックテール形状のトランクなど、どの角度から見ても決まっているのがプレリュードなんですよ」
そんなプレリュードを“人生最後のクルマ”として迎え入れたのは、2年前の3月のこと。子育てがひと段落したタイミングで、25歳当時乗っていたのと同じ2.0Siグレード(BA5)を選んだ。ただし、大きく違うのは、かつて乗っていたのはAT車で、今回はマニュアル車を選んだということだ。
ちなみに、5MT車を選んだのは、新しいプレリュードの楽しみ方を開拓するためだという。事実、2台目には1台目の頃にはしなかったカスタムを施し、今まで行ったことがなかった場所へとドライブすることも多くなったと話してくれた。
1台目の楽しみ方は、主に“デートカーとして”だった。夏は海に泳ぎに、冬はアマチュア無線を車内に取り付けてスキー場へ。友達とそれぞれのマイカーで現地に行くそうだが、その際、離れた所を運転している友達と電波を通じて会話するのが面白かったそうだ。携帯電話が無かった当時、それは最先端のツールで「無線機の向こう側から声が聞こえると、訳もなくワクワクしましたね」と目を輝かせた。
「僕とプレリュードにとって、スキー場への道中は格好の見せ場でした。ほかのクルマが頼りなく走っているなか、ちょっぴり大袈裟にお尻を振りながら力強い走りを披露するというが快感だったんです(笑)。とまぁこんな風に、1台目はプレリュードと過ごす仲間との時間に重きを置いていましたね」
当時、流行となっていた映画『私をスキーに連れてって』の世界観を、リアルに実践していたというわけだ。
一方で、2台目はというと「贅沢にも、1人でプレリュードを堪能しています。納車されたときからローダウンされていたので、ホイールをBBSに履き替えて、理想の仕様にしたんですよ」
というのも、ただただ思いのままに走っているのが面白いのだそうだ。週末には海岸線をユッタリ流したり、山道でエンジンを高回転域まで回すのがお決まりのコースだという。中でも、ワインディングは特に気に入っているそうで、速度に合わせてシフトチェンジをしたり、ハンドルを切って後輪がクイっと曲がるのを、誰もいない車内でひとり噛みしめるのが至福の時だと、幸せそうに語ってくれた。
“クイっと曲がる”というのは、プレリュードを語る上では外せない機械式4輪操舵システム(4WS)が効いているからだ。前輪と後輪が、同方向や逆方向に操舵する舵角に合わせて動く、まさにプレリュードの代名詞のような機能である。この4WSに心を奪われ、どこまでも深く吸い寄せられてしまったからこそ、再びハンドルを握ることを決めたのだと言う。
正直なところ、SHUさんはプレリュードを購入すべきか迷っていたという。維持できるのか? そもそも良い個体が見つかるのか? いくつかの心配事がぐるぐると頭を巡り何年かが経った時、出張先の九州にプレリュード専門店があることを知ったそうだ。
「いや、たまたまね〜。なんか、そんなお店があるというのは知っていてね〜。実はね、良い個体が入ったという情報があって、確認しに行ってみようかなと。チョットね、チョットだけ」
筆者は年間100人以上のクルマ好きさんを取材しているが、“たまたま”を装う人ほど確信犯なのである。当然SHUさんも、どうしてもプレリュードに乗りたくて、出張を理由に見に行ったに違いない。
「小回りがすごく効くから狭い道でのUターンも楽々だし、高速道路でレーンチェンジする時に、スッと平行移動するかのような挙動もすごく気持ち良かったです。というか、全部が良かった…」
案の定だ。このプレリュードと対面した時も、血液が沸々と湧き上がるほど感動し、即決しますと言いたいところだったそうだが『1日考えます』と伝えたという。きっと店主には見透かされていただろうけど…。
そうして2度目のプレリュードライフがスタートし始めたわけだが、改めて気付いた良さがたくさんあったという。
「車内も洒落ているんです。ガラスサンルーフは標準装備、薄いブルーに光るメーターは車内をムーディな雰囲気に演出してくれます。シートやボタンの質感など、どれを取っても安っぽくなく“らしさ”を感じることができるんですよね」
体を包み込んでくれるサイドが張り出したシートに座ると「ホッとため息が出るくらい心地良いのは今も昔も変わらないですね!」と、満足気な表情だった。
「ひび割れたテールライトの修理を、まだまだ子供だと思っていた息子がしてくれるようになりました。そう考えると、時間は確実に流れているんです。変わったこと、変わらないことのそれぞれがあるけど…。一つ言えるのは、3代目プレリュードが、僕にとっては史上最高のクルマだということです」
今後、どんなスタイルでプレリュードを楽しんでいくのだろうか?
「思い描くと、頬が緩んでしまいますね」と、いい笑顔を見せてくれた。
プレリュードにゾッコンのSHUさんを想像すると、この先もず~っと、素敵な時が流れていくことは間違いないでしょうね。
(文: 矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)
許可を得て取材を行っています
取材場所:呉ポートピアパーク(広島県呉市天応大浜3丁目2-3)
[GAZOO編集部]
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