妻とドライブする機会を沢山与えてくれた86は、希少なスーパーチャージャー仕様

  • GAZOO愛車取材会の会場である南長野運動公園で取材した2014年式トヨタ・86GT(ZN6)

    トヨタ・86 Supercharger Produced by Team Netz with TOM'S



2000年に施行された排ガス規制の強化によって、平成の名車であったスープラやスカイラインGT-R、シルビアなど多くのスポーツカーが販売を終了し、その後しばらくは国産スポーツ冬の時代と呼ばれ気軽に楽しめるスポーツカーは中古車でしか選択肢が存在していなかった。
しかし、2012年2月に待望の新型スポーツとしてトヨタ86が誕生。この話題は国産スポーツを待ち望んだユーザーだけでなく、販売するディーラーからも注目されたのは言うまでもない。その結果、全国それぞれ独立しているネッツ店同士がタッグを組んで、新たな86を盛り上げようという試みも各地でおこなわれその一環で、激レアな限定車も誕生している。
オーナーである『まさ』さんが所有するこの2014年式トヨタ・86GT(ZN6)は、ネッツ店が作り上げた『86 スーパーチャージャー』という希少車だ。

86スーパーチャージャーの名前が示すように、その最大の特徴はトムスとのコラボレーションで誕生したスーパーチャージャー仕様であること。さらに、サスペンションもトムス製を組み合わせるなど、トムスコンプリートと呼べるパフォーマンスパッケージとなっている。この仕様を『Team Netz』として展開するネッツ福島、ネッツ高崎、ネッツ千葉、ネッツ多摩、ネッツ神奈川、ネッツ富山、ネッツ東名古屋といった店舗で、86台の限定販売が行なわれていたのだ。もちろん販売されていた地域性もあるため、この限定車の存在を知らない人も多く、オーナーのまささん自身も購入前に調べてみたら限定車だったと知ったくらいであった。

「この86の前は、スバル・インプレッサ(GC8)のタイプRに乗っていたんです。サーキット走行なども楽しんでいたのですが、体調が優れないため体の負担を減らすよう、妻からATへの乗り換えを勧められたのです。そのタイミングで地元の中古車店で見つけたのがこの86で、確認したらスーパーチャージャーが搭載されているじゃないですか! しかも調べたところディーラーの限定車なので、いわゆる改造車ではなくディーラーのサポートもこのまま受けられる。もちろん妻が勧める通りのAT車だったのですぐに契約しました」

この時乗っていたインプレッサは走行16万kmを超え、経年もあって修理代がかさんできていたという。そのため体の負担軽減とともに、修理コストも節約できる86スーパーチャージャーはまささんにとって最良の選択肢。乗り換えを考えたタイミングで出会ったのは、まさに運命の1台だったと言えるのだ。

エンジンは前述の通りトムス製のスーパーチャージャーが組み込まれ、専用ECUや水冷式インタークーラーを搭載。標準モデルがカタログ値で200psの出力に対し、こちらは実測で232psまでパワーアップされている。以前乗っていたインプレッサがターボを搭載して280psだったことを考えると、乗り換えるなら過給機付きのハイパワーは欠かせない。その欲求も満たしてくれ、なおかつ安心して乗ることができるパッケージは魅力的だったというわけだ。

ラジエターコアサポートに貼られたシリアルナンバーは86台中の7番目。シリアルにこだわっているわけではないものの、ラッキー7を引き当てたのは気分も良い。また、エアロパーツに貼られるエンブレムは“Netz with TOM’S”のロゴが描かれ、スタイリングの随所にTeam Netzの限定車であることを主張している。

特徴的な縦型4本出しのレイアウトは、トムスがラインアップするマフラーと同型ながら、こちらは86スーパーチャージャー専用に開発されたアイテムが装着される。コンピューターなども専用セッティングされているため、限定車としてはかなり力を込めて開発された車両といえるだろう。また、このマフラーに合わせるリヤアンダースポイラーも、4本出しレイアウトに対応させたトムス製が標準でセットされている。

サイドステップやリヤアンダースポイラーはトムスの既製品を装着しているが、フロントバンパーは86スーパーチャージャー専用に開発されたオリジナル品を装着。特に水冷式インタークーラーの冷却製を高めるため、開口部の形状をさらに効率化し、同時に純正のウインカーやフォグランプのガーニッシュを違和感なく納める工夫が施されている。

そして、まささんの86はフルオリジナルの状態をキープしているのではなく、ヘッドライトをBRZ用に交換したり、トムス製のテールランプやサード製のリヤウイングをセットし、自分色を高めるコーディネートを図っている。またブレーキは同じ長野県発祥のエンドレス製パッドを組み合わせ、地元企業を応援しているという。

「自分がカッコ良いと思うスタイルでパーツを選択していますが、特に気に入っているのはサード製のリヤウイング。トランクリッドに穴を開けたくなかったので選択したのですが、これを付けてから燃費が少し悪くなったんですよ。本来なら残念に思うのかもしれませんが、逆に空力パーツとしてしっかり機能している証拠だなって、自分としては満足感が高まりましたね」

リヤバンパーに関しては大雨の日に水圧で半壊してしまったため、トムス製のバンパーを組み合わせている。スリットが刻まれたスタイリングは、サイドステップとの相性もよく、チームネッツの限定車でありながら、トムスコンプリートの雰囲気も醸し出している。

「インプレッサは妻が気に入って購入したのですが、7年ほど乗り続けていました。それまでは乗りたいクルマを片っ端から乗り継いでいたので、所有期間が短いものだと1ヶ月なんてクルマもありましたから、かなり長い間所有していたことになりますね。この86スーパーチャージャーは購入して4年が過ぎましたが、2年目にエンジンブローをしてしまい…。そのまま廃車するという考えもあったのですが、希少な限定車だったこともありエンジンを作り直して乗り続けています。新しいエンジンにお金をかけちゃったので、ひとまずの目標はインプレッサの7年を超え、10年を目指して乗り続けていこうかなと考えているんですよ」

ちなみに、2020年に購入した時の走行距離は5万7000kmほど。まだまだ距離も浅く、これから存分に楽しめると考えていた。しかし走行距離が7万kmに差し掛かったところで、朝の通勤中にコンロッドが折れてしまいエンジンブローをしてしまったそうだ。サーキットでの走行会などにも活用していたため、疲労が蓄積していたことも考えられる。そこで新たなエンジンは、ドリフトなどで有名なショップにオーダーし、耐久性を高めながら長く楽しめるクルマへとカスタマイズしているそうだ。

運転席はサーキット走行も楽しむためレカロのリクライニングバケットに変更している。このシートは以前乗っていたプレオやインプレッサなどで使っていたものを移植。クルマは変わってもシートは使い続ける、まささんの定番装備というわけだ。

ブルーのシートに合わせ、室内もブルーのアクセントを組み合わせる。シフトゲートのカーボンパネルをはじめ、ステアリングを握ったままAT操作ができるパドルスイッチなど青色の製品を見つけては交換する。細かいアイテムながらも徐々に広がっていく青いエリアは、楽しみのひとつにもなっているのだ。

「インプレッサもクーペだったので、室内のパッケージ的には変わっていないのですが、リヤシートの居住性は86の方が劣りますね。だからインプレッサの頃は子供も一緒に遊びに出かけていたのですが、86に乗り換えて、しかも子供も大きくなってきたので、家族で出かける機会は減りました。けれどその分、妻と2人でのドライブが増えましたので、楽しみ方が変化しましたよ。季節によってはビーナスラインとか、長野はドライブスポットがたくさんあるので、これから2人で色んな想い出を作っていこうかなって計画しているんです」

ATへの乗り換えを勧めた奥さんの助言から、存在を知らなかった希少な限定車と出会った『まさ』さん。新たな車歴として加わった86スーパーチャージャーは、サーキットでのスポーツ走行から奥さんとのドライブ、そして自分好みのスタイリングを作るカスタマイズと、これまでの歴代愛車の中でも特に満足度が高いのは言うまでもない。クルマ好きが考えるあらゆる楽しみ方をこの1台で満喫できる『まささん』にとっての最適解。現段階では10年乗り続けることが目標ではあるというが、この楽しさをできる限り長く堪能したいと考えているのは当然なのかもしれない。

(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:南長野運動公園(長野オリンピックスタジアム)(長野県長野市篠ノ井東福寺320)

[GAZOO編集部]

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