好きすぎて気づけば3台を所有、夫婦で楽しむセリカXXとのカーライフ
1981年7月、当時国内最強とされていたソアラ譲りの6気筒DOHC・5M-GEUエンジンを搭載し、華々しいデビューを飾ったトヨタ・セリカXX。端正なノッチバックスタイルのソアラに対し、リトラクタブルヘッドライトを備えたスポーティなデザインが採用されていたセリカXXはオトナから子供たちまで幅広い世代の自動車ファンを魅了。近年の国産ネオクラシックカーブームの中においても、アタマひとつ抜けた人気を誇る1台となっている。
このGTスポーツの名作をなんと3台同時所有しているのが山口県在住のバツマル下関さん。
最初の1台を購入したのは今を遡ること33年前のこと。
「高校3年生の頃に24バルブエンジンを積んだXXの後期型が発売されて、あまりのカッコ良さに『免許を取ったら絶対買うぞ!』と心に決めたんです。社会人になって就職のため静岡に引っ越して2年目くらいから、中古車雑誌でXXを探し始め、東京の環八沿いにXXを専門に扱うトヨタ系の中古車販売店を見つけ、電車を乗り継いで出向きました」
展示場には発売されてから間も無い70スープラの中古車も展示されていたが、バツマル下関さんの狙いは『2000GTツインカム24』一択。走行距離が少ないサンルーフ付きモデルを条件に数台を物色したところ、スーパーホワイトⅡの1984年式、走行距離4万1000kmという個体(GA61)を発見。まったくのフルノーマル状態だったため純正のリヤスポイラーを別途注文し、コミコミ100万円でハンコを押したという。
「1991年頃の話です。人生で初めてローンというものを組みました。周りからは『7年落ちで査定もゼロのクルマになんで100万円も払うの?』と散々言われましたが、自分としては学生の頃から憧れ続けたクルマを手に入れることができたので大満足でした」
しかし、幸せの絶頂期にある中、突然災難が降りかかる。神奈川の市内某所で信号待ちをしていたところ、後方から居眠り運転のクルマが追突。そのまま前方に押し出される玉突き事故となり、宝物だったXXは車体前後に大きなダメージを負うことに…。
「とにかくショックで、その時は自分の身体よりクルマが心配でした。もちろん、ローンもたっぷり残っていましたし」と、当時を振り返る。幸いクルマは保険で綺麗に修理されたものの、それから数年後、バツマル下関さんに再び災難が訪れる。
「1999年に台風18号が山口県に上陸した時に、契約していた駐車場に高潮が押し寄せてきたんです。大家さんが早めに知らせくれたおかげで水没だけは避けられましたが、溢れる水の中をジャブジャブ走って高台に移動させた後、すぐに洗車したけど塩害の影響は深刻で、その年の秋にマフラーが腐食して落ちてしまいました。70スープラからは車体の防錆対策が大幅に高められたようですが、この辺りの年式はサビに弱いですね。今でもサビの防止には気を配っています」
このように2度の大きなアクシデントを受けながらもXXへの愛着はまったく色褪せることはなかった。各部の経年劣化が顕著になったため、2006年には内外装のレストアを敢行。1991年の購入当時を上回るほどの、素晴らしいコンディションに仕上がったXXとの生活をリスタートさせたバツマル下関さんだった。
しかし、ある時、インターネットで1台のクルマに目がクギ付けに。そのクルマとはXXが現役だった時代に400台限定で発売された精悍なブラックカラーの特別仕様車『スーパー2000GT』であった。
「すでに家庭を持っていただけに自分の一存だけで衝動買いするワケにもいかず、写真を眺めては『いいなァ、カッコいいなァ』と毎日のようにつぶやいていました。そんな姿を見かねたのでしょうか、妻は『そこまで欲しいんなら、買っちゃえば』と言ってくれたんです。XXの2台持ちというワガママを許してくれた妻には本当に感謝しているんですよ」
バツマル下関さんのワガママ(失礼!)はさらに続き、スーパー2000GTの購入から3年後には、なんとXX仲間を通じてアメリカのウィスコンシン州からセリカスープラを逆輸入してしまう。こうして現在の3台体制が確立されることとなった。
「3台とも基本的にノーマルですが、オルタネーターの容量を高めたり、ドアロックをリモコン式にしたり、見えない部分に普段乗りでの不便さを解消させるためのモディファイをしています。もちろん、ドラレコも付けました。事故はもうこりごりですからネ。車検整備は地元のトヨタカローラさんと、周南市のGRガレージさんにお世話になっています。それ以外に、他県に名医がいるのでメンテナンスに関する不安は意外と少ないです。ただ、ちょっとしたプラスチックパーツや内装生地など、美観に関する部品の調達には苦労も多いので、SNSでの情報交換は欠かせませんね」
好きなクルマを所有するだけでなく、走らせることも大好きなバツマル下関さん。これまでも東京、新潟、宮城、北海道などで開催された旧車イベントへの参加や、名所を巡るツーリングも頻繁に楽しむようになり、3台を乗り分けながらの年間走行距離は2万5000kmに及んでいった。
「北海道へのフェリー以外は基本、自走です。長距離を運転するのが好きなんです。想い出はたくさんありますが、中でも愛知のトヨタ自動車博物館で行なわれたクラシックカーミーティングは楽しかったですね。館長さんはXXのデザイン開発の現場にいらっしゃった方で、誕生までの秘話を色々と聞かせて頂きました」
さらにバツマル下関さんは地元界隈のセリカファンの輪を広げるべく、東北、東海、関西などで行われているミーティングイベント『セリカDAY』の山口、九州版を2013年から主催。ドライブスポットとして知られる山口県の角島と、北九州の門司港を舞台に毎回多くの参加者を集めているそうだ。
このような活動を陰ながら支えているのが奥様。当初は旧車に対してまったく無関心で『クルマって20年以上も乗れるの?』というくらいだったが、イベント会場まで2台のXXを運ぶ際のドライバー役を務めるべく、教習所でマニュアルの感覚を取り戻す講習を受けたり、ノベルティ用の手芸マスコットを作ったりと、今ではセリカ仲間との交流の場に欠かせないパートナーとなっている(この日も取材現場までスーパー2000GTを運転する大役を務めて頂きました。感謝!)。
最後に、所有する3台のうち、一番のお気に入りはどれか? と尋ねたところ、やはり30年以上に渡って苦楽を共にして来た、白い『2000GTツインカム24』との答えが。
「なんと言っても、初めて自分がお金を出して手に入れたクルマ。購入当初4万1000kmだったオドメーターは35万8000kmを超えて、月まであと3万kmを切りました(笑)。車齢的にはもうすぐ40歳になりますが、これに代わるものは見つかりません。6年前には長年の懸案事項だった3台が入れられるガレージを建てることもできました。それまでは強風の日には家内と2人で捲れ上がっていたカバーをかけ直しに走ったり、いろいろと大変でしたからね」
自身の努力や根気はもちろんだが、奥様の内助の功によるところも大きいバツマルさんのXXライフ。(いろんな意味で)何かと気苦労が多いクルマ好きの間からは『羨ましい~!!』との声が聞こえて来そうな、そんな充実したカーライフなのである。
(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)
許可を得て取材を行っています
取材場所:秋吉台展望台(山口県美祢市秋芳町秋吉秋吉台)
取材協力:美祢市観光協会/秋吉台観光交流センター
[GAZOO編集部]
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