乗るならやっぱり、自分が一番欲しいクルマ! 夢の実現を手助けしてくれた仲間達と共に楽しむセリカライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場である大分大学 旦野原キャンパスで取材したトヨタ・セリカ SS-III (ST202型)

    トヨタ・セリカ SS-III (ST202型)



学生時代からスポーツタイプのクルマに興味を持っていたという『さとちゃん』さん。しかし、18歳で運転免許を取得した後、手に入れたのは実用志向のコンパクトカー。運転に慣れるための練習用としての役割は十分果たしてくれたものの、所有期間は長くは続かなかった。

「父親から勧められるままに買ったクルマだったということもあって、今ひとつ愛着が湧かなかったんです。だから次に買うクルマは私が好きなスポーツタイプにしようと思っていたんです。まず、見た目の迫力に惹かれたのがJZA80型のスープラ。当時はまだ新車で販売されていましたが、小柄な私には車体が大き過ぎて、さすがにこれは無理だなと、断念しました」

「その後、別の候補を考えていた時、たまたま街で見かけたセリカ(ST202型)に一目惚れ! スープラはカッコ良かったけど、セリカは丸目の顔つきが可愛いらしくて、コレだ! と決めました。でも親からは3ナンバーという理由だけで猛反対され『だったらもう何でもいいや』という気持ちになってしまい、こだわりなく手に入れた軽自動車に10年ほど乗り続けました」

その後、さとちゃんさんは仕事のために大分から福岡へと移住。大分と比べて格段に高額な駐車場代の問題が出てきた一方、公共交通機関の利便性が高くなったことから軽自動車を売却。クルマが無くても不自由を感じない生活環境が整い、あれだけ盛り上がったセリカへの想いも、いつしか記憶の隅へと消え去っていたという。
ところが、事態は予期せぬ展開を迎える。

「親が体調を崩してしまったんです。最初のうちは電車で行き来していたけど、時刻表に縛られるし、クルマを持っていれば自分のタイミングでいつでも様子を見に帰れると思うようになりました。ちょうどこの時期、転勤してきた職場の同僚がクルマにとても詳しかったので、買うなら何が良いのか、あれこれ相談していると『今まで乗りたかったクルマは無いの?』と聞かれ、忘れかけていたセリカのことを思い出したんです。その同僚はレパード(F31型)を持っていて、クルマ関係の業者さんに知り合いも多かったことから、思い切ってセリカを探してもらうことにしました」

それから数ヵ月後。さとちゃんさんの条件に合った物件が業者オークションで見つかったとの報せが。こうして長年の時を超え、ついにその昔、街角で一瞬にして心を奪われた“カワイイ丸目顔”のセリカ(ST202型)を愛車として迎え入れる日が訪れる。

「セリカを買うことは家族にはナイショにしていたんです。妹だけには『クルマ買ったよ。今度は私が本当に欲しかったヤツをネ』と伝えたところ『わかった! 白いセリカでしょ!』と、すぐに車種だけでなく色まで当てられました。私がずっとセリカに乗りたがっていたことを覚えてくれていたようです」

かつては3ナンバー車やスポーツカーへの抵抗感を持っていたご両親も、実家へと頻繁に帰省して身体を気遣ってくれる娘の姿に、もはや何も意見を言うことはなく、セリカの存在を容認。クルマを持っていなかった時期に対し、週末の過ごし方も大きく変わり、セリカのオーナーになったらぜひ行きたかったというイベント『セリカday』や『セリカミーティング』に参加すべく山口や岡山にも遠征するようになった。

  • (写真提供:ご本人さま)

念願だった着物姿でのセリカとの記念撮影を行なうなど、まさに“充実”という言葉がピッタリの日々を送っていたさとちゃんさん。しかし、念願だったセリカのオーナーになってから3年ほどの時間が過ぎ去ろうとしたある日、突然の別れが訪れる。

「事故で廃車になっちゃいました。大きな怪我はなかったけど、ピラーって言うんですか? 側面の真ん中部分がベッコリ曲がって、修理は難しいという結論でした。せっかく仲間のみんなに探してもらったクルマだったのに、私の不注意で事故ってしまったことが申し訳なくて。もっともっとセリカに乗っていたかったけど、もう無理なんだろうなと、本当に落ち込みました」

そんな悲しみに暮れるさとちゃんさんの姿を見て、再度結集したのが、同僚を筆頭とするクルマ仲間たち。各方面に手を尽くしてセリカの情報を物色。すると、ネットの個人売買サイトの出品車両の中に白いセリカを発見。詳しく調べたところ、持ち主は福岡の隣県、長崎に在住ということが判明。早速積載車を所有する仲間に協力を呼びかけ下見に行ったところ、予想以上に良好なコンディションにビックリ。めでたくその場で即決、そのまま積載車で持ち帰ることとなった。

「本当に絶好のタイミングで見つけることができました。しかも私が乗っていた1台目はベーシックグレードのSS-I(140ps・3S-FEエンジン)でしたが、今度は上級グレードのSS-III(200ps・3S-GEエンジン)。サンルーフが付いて、リヤウイングも大きくなりました。見た目的に女の子にはちょっとイカツイかな? という気もしますが、会う人会う人、皆さん『前のクルマより絶対にコッチの方がイイよ!』と言ってくれるので、嬉しくなっちゃいます」

まさにどん底からの起死回生。今度こそしっかり気を張って、大切に乗り続けることを誓ったさとちゃんさん。
購入後は同僚の知り合いが営む長崎、島原市の整備工場で入念なメンテナンスが行なわれたこともあり、走りは絶好調。購入時の走行距離は19万kmに達していたが、27年前という年式から考えればむしろ相応。乗り始めて丸1年が経過しているが、これといったトラブルの発生はナシ。整備工場に任せきりにすることなく、さとちゃんさん自身も暇を見つけては福岡・筑紫野市のパーツ共販店を訪ね、今後何かあった時の備えのためにと、新品で入手が可能な純正部品の収集に励んでいるという。

「この部品は出ますか? じゃ、これは? という具合に、車検証を提示すれば、純正パーツの有無を調べてくれるんです。ただ、年式が年式なので、ゴム系パーツの欠品が多いのが悩みではありますね。大掛かりな作業の際には島原まで行きますが、オイル交換などのメンテは近くのトヨタディーラーさんでお世話になっています。先日も若いサービススタッフさんから『初めてこの型のセリカを触りました』と言われました(笑)」

現在も、レパードのオーナーを中心としたクルマ仲間達と共に写真を撮りに行ったり、ツーリングにも出掛けているというさとちゃんさん。ちなみにレパードのオーナーさんは『あぶない刑事仕様』をイメージしたモディファイを楽しんでいるようだが、彼女はシンプルなノーマル派に徹している。

「基本は純正で、気になるところには手を加えています。シートは買った時にかなり劣化が進んでいたので、1台目のものを移植しました。普通の人はまったく気づかないけど、セリカdayに行った時などは『あれ? 車体周りはSS-IIIなのに、シートはSS-I。どっちが正解なの?』と、諸先輩からの鋭いツッコミ(笑)が入ることもあります」

「最近手を加えたところと言えば、社外のカーナビを外して、当時ものの純正2DINのMDデッキに交換しました。今はMDが聴けるクルマが少なくなったので、いろんな方が『もうウチじゃ聴けないからMDあげるよ』って、ディスクを持ってきてくれるんです。だから最近は、初期のB’zやGLAYを聴きながら走っています。やっぱりセリカ、最高です!」

数々の難題に直面しながらも諦めることなく、セリカオーナーへの夢を叶えたさとちゃんさん。その嬉々とした表情から、自分にとって一番欲しいクルマに乗ることの大切さを、改めて教えられた次第である。

(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)

[GAZOO編集部]

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