スバル愛と北米仕様へのこだわり、そして仲間との絆で作り上げたレガシィアウトバック

  • GAZOO愛車取材会の会場である千葉県の『さんばしひろば』で取材したスバル・レガシィアウトバック(BPE型)

    スバル・レガシィアウトバック(BPE型)


「親戚の中で初めての男の子だったこともあって、小さい頃からみんながミニカーをくれるのでいろいろな車種名を覚えて、3歳くらいには対向車線のクルマを全部当てられるくらいになっていました。それと、祖父が中島飛行機で設計をしていた関係もあって家族中のクルマがスバル車だったので、自然とスバル車が好きになりましたね」

今回ご紹介する『Tom Hasegawa』さんは、これまでスバル車だけでも10台以上、それ以外のメーカーも含めれば40台以上のクルマを乗り継いできたというカーマニアである。
そんな彼が『集大成』と語るのが、このレガシィアウトバック(BPE型)。取材を通して見えてきたのは、家族や仲間に支えられながら、想像以上に濃密な“クルマ遊び”を積み重ねてきた日々。そして、深すぎるスバル愛だった。

子供の頃からクルマに囲まれた環境で過ごし、高校生の頃にはすでにクルマの外装カスタマイズなどを楽しめる環境に身を置いていたというTom Hasegawaさん。18歳で運転免許を取得すると、まずは新車購入時からずっと実家で所有されていた3代目スバル・レオーネに乗ることになったという。
「レオーネってモディファイパーツが全然なくて、カスタムしたくてもできなかったんですよね。それに加えて、当時はアメリカに輸出されていたモデルに憧れていたこともあって、身近にあるクルマを自分なりに北米仕様へとカスタムしてみることにしたんです」

こうして愛車を北米仕様に仕上げる楽しさに目覚めたTom Hasegawaさんだが、その後、レガシィLSiとの出会いに新たな衝撃を受けたという。
「レガシィLSiはスバルの子会社が正規輸入してスバルディーラーで限定販売された左ハンドル車だったんですが、試乗した瞬間、それまで自分がこだわってカスタムしてきたレオーネの北米仕様が霞んでしまうほどの衝撃を受けて、乗り換えを決意しました。それから結婚するまで乗っていましたね」

現在では株式を保有するほどスバルを愛し『スバルは家族』という彼にとって、もうひとつのこだわりである“北米仕様”とは何なのかを伺ってみると「僕にとって北米仕様はスパイスなんです」と、答えてくれた。理想とするスバル車は“北米仕様のスバル車”であり、自身が考えるベストな状態に仕上げて乗りたいのだという。

そんな北米仕様に仕上げたスバル車を『自身の核』として据えながらも、サブカーについても様々な車種を手に入れて乗ってきたというTom Hasegawaさん。その理由は『駆動方式の違いを実際に走って体感したかったから』だと言う。

「よく『駆動方式の違いによる走りの特性』について耳にするけど、それって本当なのかな? と思って。レオーネはFFだったんですけど、今思えばドアンダーだったんです。その後、レガシィに乗ったら四輪駆動車なのにすごく曲がるな! と思って。そこから駆動方式の違いに興味が出たんですよね。例えばRRならば、ポルシェは高価で手が出ないけど、スバルにもRRのサンバーがあるから乗ってみようとか、MRのクルマはどうなの? と思えば、ホンダのバモスがMRベースの四駆ターボだから試してみるといった感じで、FF、FR、MR、RR、AWDの全駆動方式と、MT車、AT車のすべてを試してきました」
こうして自ら実体感してみた結論は「やはり四輪駆動車が最も安定する」というものだったそうだが、その探究心を満たすために費やした時間と台数は並大抵ではない。

結婚が決まった際にはさすがにクルマ遊びを自重せざるを得ず、3台を手放してゼロからの再出発を試みたものの、やはりクルマのない生活は耐えられず、結婚と同時に仲間から譲り受けたレガシィ(BF5型)を北米仕様に仕立て直して乗っていたのだという。
それ以降も『メインは北米仕様のスバル車、サブは気まぐれで選ぶ』というスタイルは変わらなかったものの、メインカーに関しては奥様やお子様も乗るファミリーカーを兼ねるようになったため、安全性に関わる車検や整備等はプロショップに任せているという。

そんなTom Hasegawaさんが、現在の愛車であるレガシィアウトバックを手に入れたのは2019年9月のこと。
「このクルマは従姉妹のお姉さんが乗り換えるときに譲ってもらったんですよ。スバルって4気筒ターボのイメージがあって、これまでもEJ20やEJ22、EJ25型などいろんなエンジンを搭載したスバル車に乗ってきたんですが、ATでも良いから3リッター6気筒エンジンのクルマにも乗ってみたいと思ったんです。ただ、当時まだ30代だった僕にとって、グリーンのボディカラーはちょっと“おじさんっぽい”って感じがしまして…部品取りとしてエンジンだけインプレッサ(GDB型)に載せ換えようと思っていたんです。けれど、結局そのまま何もせず数年寝かせているうちに40代を迎えた今、敬遠していたボディカラーも不思議としっくりきたので復活させることにしたんです」

このレガシィアウトバック(BPE型)は2003年式の5速AT車で、水平対向6気筒の3.0リッターエンジン、EZ30を搭載した4輪駆動車だ。
「最初はクルーザーってイメージだったんですが、実際に乗ってみると思ったよりも走ってくれて、トルクフルな走りと高回転域の伸びに驚かされました。これには奥さんも同意見でしたね」

もちろん、北米仕様へのカスタマイズに関しても抜かりはない。
「これまでメインカーはすべてスバル車で、すべて北米仕様にしてきました。そんな僕が、まず交換するのはサイドミラーです。北米仕様にはコーションが入っており、それが欠かせないんです。また、日本仕様ではラゲッジ部分がプライバシーガラスなんですが、敢えてクリアな素ガラスに交換した点もお気に入りです」
灯火類やエアロパーツ、さらには虫除け用のバグガードなども現地仕様としているほか、ガソリンタンクのキャップを日本製と北米仕様を組み合わせて使用するなど、ぱっと見ではわからない細かいところにも手が尽くされているのである。

もちろん一人の力ではここまで仕上げられなかった。アメリカ駐在経験のある、スバルの部品関係の仕事をしている友人が、現地のジャンクヤードを巡ってパーツを探し、帰国時に荷物と一緒に運んできてくれたという。
「僕のマニア具合も良くわかっている大事な友人です」と話す、仲間の協力があったからこそ完成した北米仕様アウトバックは、まさに“絆の塊”と言える一台になったのだ。
取材会当日も、そんな仲間と共に会場に訪れるなど、彼のカーライフは仲間なくしては語れないということが伝わってくる。

  • (写真提供:ご本人さま)

そんな愛車はファミリーカーとしてもしっかり活躍しているそうで、夏休みの恒例行事となっている奥様の実家(和歌山)への帰省旅行での出来事についても嬉々として語ってくれた。
「家族一緒にクルマで帰省して、自分は仕事のため先に飛行機で帰り、妻と子どもたちは2週間くらいのんびりしてからクルマで帰ってくるんです。今年もレガシィアウトバックで行ってひと足先に帰ってきたのですが、妻が運転して帰って来た時のアウトバックの“相棒感”が半端なくて、なんだか嬉しくなりました」
ちなみに奥様は、Tom Hasegawaさんのオタクとも言えるほどのクルマ好きについて「あなたからクルマを取ったら何もないでしょう?」と、諦めてくれているのだそうだ。幸い(?)なことに、Tom Hasegawaさんのお仕事は、車検や整備関係に関するフロントマン。クルマ関係のプロであることも功を奏している様子である。

「このクルマは10年ぶりに、妥協せずに手を入れて北米仕様に仕上げた一台で、これまでの集大成といって良いくらい気に入っています。そして譲ってくれた従姉妹のお姉さんやクルマ仲間にも支えられて作ってきた、仲間との思い出が詰まった一台なので大事にしていきたいですね」と、取材の締めくくりとして話してくれた。

が、しかし。そう語りながらも最後に付け加えたのは「実は次のおもちゃを見つけてしまって…。欲しい人がいれば譲るかもしれません」という一言だった。
心の赴くままにクルマ遊びを楽しむ、その自由さこそが彼らしさなのであろう。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 中村レオ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 千葉みなと さんばしひろば(千葉県千葉市中央区中央港)

[GAZOO編集部]