憧れだった『インテグラタイプR』が今では居心地バツグンの“動くマイルーム” に
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ホンダ・インテグラタイプR(DC2型)
「乗っていくうちにどんどんハマって好きになってしまって、後戻りができなくなっちゃったんですよね」
そう嬉しそうに笑いながら、愛車への揺るぎない想いを語ってくれたオーナー。子供の頃に一目惚れした憧れのホンダ・インテグラを購入し、その後、数々の車両トラブルを乗り越えて10年経った現在も乗り続けている『ゆき』さんだ。
「通勤から旅行まで、ほぼ毎日一緒にいますが、まったく飽きることがないんです」という彼は、なぜインテグラに惹かれ、この10年を愛車とどんなカーライフを歩んできたのだろうか。
「パパ・ママ」と呼ぶよりも「パジェロ」などの車種名をつぶやくことの方が早かったというエピソードがあるほど、幼少期から自然とクルマが好きだったというゆきさん。中でも父親が乗っていた2代目アコードワゴンの影響は大きかったという。
「父が2代目のアコードワゴンに乗っていて、すごくカッコ良かったんです。高速道路の合流で加速する時に、父が『VTECはエエなぁ!』って、嬉しそうに笑う顔が今でも忘れられません。顔が似ていてVTECエンジンも積んでいるインテグラタイプR(DC2型)に惹かれたのは、そんな思い出が記憶に残っていたのも理由の一つだと思います」
インテグラタイプRに惹かれた理由は、他にもいくつかあったという。
「中学生の頃、父が『ホンダスタイル』っていう雑誌を買ってきたんですが、そこにインテグラ特集があったんです。それを見て『こんな凄いエンジンが載っていて、しかもカッコイイ…なんていいクルマなんだ!』と、この頃からぞっこんになりました。さらには、当時よく遊んでいたカーゲームの『グランツーリスモ』でもインテグラタイプRは速くてカッコ良かったんですよね」
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(写真提供:ご本人さま)
そんな憧れを持ちながら大学生になったゆきさんが、18歳で運転免許を取得して最初に購入したクルマは、ホンダ・シビック(EK3型)であった。
「実はシビックも結構好きだったんですよ。運転免許を取得して最初に乗るクルマだったので、“インテグラタイプRのハイパワーを扱いきれずに壊してしまったら…”という懸念や、学生のフトコロ事情として中古で50万円辺りまでが現実的だったこともあって、シビックにしたんです。実際にシビックのデザインは好きでしたし、荷物も乗る。そしてホンダ車というところも気に入っていました。ただ、大学では自動車部に所属していたのですが、イベント等で、インテグラが走っているのを見た時…中学生の頃に憧れていた想い出が蘇ってきたんです。それで『社会人になったら絶対買ってやるぞ』と改めて心に誓いました」
こうしてインテグラへの想いを強くしたゆきさんは、社会人になると購入に向けての軍資金を貯めることに。それから1年後には、それなりの頭金を払えるところ貯まったので、憧れのインテグラタイプRを愛車にすべく本格的に探し始めたという。
「個人経営のホンダ専門店のようなショップを見つけて『ここなら長くクルマの面倒を診てくれそうだし、理想の一台を探してくれそう』と、飛び込みで訪問したんです。そこのショップさんで『100万円以内、無事故車、ABS付き、白ボディ』という条件で探していただくことにしました。その時に『なかなか見つからないだろうから、半年くらい待って』と言われたのですが、ちょうど半年後に条件通りの一台だったクルマをオークションで見つけてくれたんですよ。走行距離は8万5000kmで内外装も共に良好。まさに理想の一台そのものでした。引き渡しの日にエンジンをかけた瞬間は、頼もしいエンジンの吹け上がりや、想像通りのサウンドに、そりゃあもうキュンとしましたよ!」
ゆきさんが購入したのは、1996年式の3代目インテグラ。グレードは当然、VTEC装備のB18C型エンジンが載ったタイプR。3ドアクーペの5速マニュアル車で、全方位でスポーティなビジュアルと乗り味が存分に楽しめるモデルである。中学生の頃の夢が現実となった瞬間であった。
それから10年間、他の車種には一切見向きもせず、このインテグラを唯一無二の愛車とし続け、約11万kmを走破。
「通勤も旅行も紅葉ドライブも全部このインテグラです。これ一台でどこまででも行きます。冬はスタッドレスタイヤを履いてスノーボードに行くし、旅では南は長崎、北は青森県の大間港まで走破したこともあるんですよ。長崎に行った時は、まだ20代と若かったこともあって、ほとんどが車中泊で移動していましたね(笑)。また、写真を撮るのも好きなので、季節の変わり目には観光地に行って紅葉写真を撮って楽しんだりもしています。あとは年に1、2回はサーキット走行会にも参加するんですよ」
そう楽しそうに笑うゆきさんを見ていると、インテグラと共にした10年間は、大切な想い出が積み重なっているのだと改めて感じた。
しかし、旧車に毎日長く乗り続けるには、しっかりしたメンテナンスは必要不可欠。それを意識していても、故障に見舞われることもあるのは致し方ないといったところか。このインテグラも例外ではなく、ポツポツとトラブルが散見された。そんな時も、彼は都度しっかりと対応してきたそうだ。
「車検は毎回クルマを購入したショップにお願いして、しっかり整備してもらっています。ただこのクルマ、それでも高圧ホースから液体を吹いたり、パワステのベルトが切れて重ステになったりと、年に数回はトラブルが起きるんですよね(苦笑)。そんな際も、購入したショップで修理してもらっています。それと一応、自分が対応できる範囲の修理はできるようにと、最低限の工具はトランクに積んでいます」
「そうそう、サイドに貼ってある『SPOON』のステッカーは、購入して2年後くらいにクラッチが壊れてミッションに悪影響を与えたことがあって、その際にSPOON製のリビルトミッションに交換した時に貼りました。他には、昨年、総走行距離が25万kmに達したのを機に、滋賀県にあるインテグラに強いショップにて、思い切ってエンジンのオーバーホールも行いました。これでまたしばらく安心ですね!」
ゆきさんがしっかりと可愛がっている甲斐もあり、今日まで元気に走り続けているインテグラ。そんな彼の愛車はこの10年間で彼の『好き』が詰まった仕様に進化している。
以前使用していた無限製のマフラーは、下回りを打った時に穴が空いてしまったため、5ZIGEN製に変更。ホイールはお気に入りのRAYS製CE28の16インチ仕様に。さらにリヤの灯火類は“カッコイイから”という理由でUS仕様が装着されている。
そして彼の『好き』は車内にも溢れていた。
「運転席のレカロ製フルバケットシートは、3年前に新品で購入したものです。レカロシートは長時間運転していても疲れにくいのでとても気に入っています。ステアリングはMOMO製に、サーキット走行で使用する4点ベルトは友人から譲ってもらったTAKATA製のものを愛用しています。あとはエンジンをオーバーホールした際に、今後のことも考えてDefi製の追加メーターも取り付けてエンジンの稼働状況をチェックしています」
自分の好みを盛り込みつつ、トラブルフリーなカーライフを送るために正常進化させていった道程が伺えるが、質実剛健なカッコ良さを追求しているだけではない一面も。
「今日は撮影があるので控えてきたんですが、いつもは運転席や助手席のシートに、大好きな滋賀県彦根市のゆるキャラ『ひこにゃん』がプリントされた毛布やブランケットを被せたり、カエルのぬいぐるみを置いたりしているので、実はもっとファンシーなんです。リヤシートに被せているこのリラックマのタオルも、純正シートが日焼けしなくて良いし、可愛くなって一石二鳥ですね! ボディやリヤクォーターガラスに貼ったステッカーも、自分で作ったものやインテグラ仲間を通じて知り合った友人の自作だったりします。このクルマは、好きなものを詰め込んだ“動く自分の部屋”そのものなんです。だから、最高に居心地がいいんですよ(笑)」
ちなみに、駐車場でタイヤやパーツ交換などをする姿を見た家族からは『1/1プラモデル』や『大きなオモチャ』と呼ばれているのだとか。それでも、クルマのそばで過ごす時間が一番落ち着くという。
現在は、毎年モビリティリゾートもてぎで開催されるタイプRミーティングに参加することで、同じ車種の仲間を増やし、整備やチューニングの情報交換を楽しんでいるというゆきさん。
「エンジンをオーバーホールしちゃったし、ミッションも足も変えちゃったし…、乗り続けているうちにどんどん好きになっていくばかりで、もう後戻りできなくなってしまいましたね。これからも、もっともっとハマっていくと思います。このクルマがあるから毎日頑張れる。クルマが何度トラブルを起こしても、僕かクルマか、どちらかが耐えられなくなるまで付き合っていきたいですね」
10代の頃に憧れたエンジン音を今も聞きながら、彼は今日もゆっくりと愛車のハンドルを握る。父の笑顔に重なるように「やっぱりVTECはエエなぁ!」と。
(文: 西本尚恵 / 撮影: 中村レオ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 千葉みなと さんばしひろば(千葉県千葉市中央区中央港)
[GAZOO編集部]
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