初めてVTECエンジンが搭載されたインテグラを愛し、当時をリスペクトしながら平成感を維持していく醍醐味と苦労

  • GAZOO愛車取材会の会場である埼玉県の『埼玉スタジアム2〇〇2』で取材したホンダ・インテグラ(DA6型)

    ホンダ・インテグラ(DA6型)


元号が昭和から平成へと移り変わった1989年。日産はスカイラインGT-R(BNR32型)、トヨタは初代セルシオ、マツダはユーノス・ロードスターと、後世に名を残す名車を発売し、今では『日本車の当たり年』とも呼ばれている。
ホンダはと言うと、翌90年に、今ではバブル景気の象徴として取り上げられることも多い初代NSX(NA1型)を発売。世間的なニュースバリューはそちらの方が大きかったが、その一方でインテグラのフルモデルチェンジも行われた。

1989年に2代目へと進化したインテグラは、3ドアクーペと4ドアセダン(ハードトップ)が設定され、テレビCMには『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでスターダムを駆け上がったマイケル・J・フォックスが出演。カタコトの日本語で「カッコインテグラ」と言うCMは大いに話題となり、日常会話の中でなんとなくモノマネするのが流行ったりしたものだ。

そんな2代目インテグラの中で、B16A型の直列4気筒VTECエンジンを搭載したのがDA6型。“エンジンありき”という理由で、インテグラ(DA6型)のXSiグレードを購入し、愛車として所有しているのが今回の主人公となる『シブサワ』さんである。21歳と若く、愛車との年齢差は12年と、ひと回りも離れている。

シブサワさんがクルマに興味を持つようになったのは『グランツーリスモ』などのカーゲームがキッカケ。それから整備士を養成する自動車専門学校に進学すると、そこで出会った無二の親友から影響を受け、古いクルマへの興味を高めていったという。

「その友人はFC3S型のRX-7に乗っているんですけど、やっぱりあちこち壊れるので、ある程度自分で直せるとはいっても、維持することは大変なんですよね。それを側で見ていて自分には無理だと感じて、もう少し手が掛からない乗り物を趣味にしようと、50ccで2ストロークエンジンのオートバイにハマっていきました。それから50ccのオートバイばかり8台を乗り継いだんですけど、ホンダというか、ホンダのエンジンに興味が湧いたのは、それがキッカケです」

シブサワさんが最初に購入したオートバイは、ホンダ以外のメーカーだったそうだが、サーキットに走りに行くと「同じ50ccでも、こんなに違うのか!」と周りにいるホンダ勢との違いを痛感。それ以来、ホンダ党に生まれ変わったシブサワさんは“NSR50”や“NS-1”などホンダのオートバイばかり乗り継ぎ、徐々に四輪車も所有したいという欲を昂らせていったそうだ。

「最初はホンダ・CR-Xが欲しくて探していたんですけど、なかなか条件に合うクルマが見つからなくて。その流れで、たまたま見つけたのが今のインテグラなんです。2代目インテグラは元祖VTECのB16Aエンジンを最初に搭載したモデルでしたから、それはそれで惹かれるものを感じました。熊本の中古車屋さんで売られていたんですけど、結局現物を一度も見ることなく購入してしまいました(笑)」

低回転用と高回転用の2種類のカムを使い分け、スポーツ性能と燃費を両立させるホンダ独自の可変バルブタイミング・リフト機構“VTEC”。それを初採用したエンジンこそが1.6リッターのB16A型だが『リッター100馬力』という当時ハードルの高かった開発目標を、様々な技術でクリア。DOHCの新たな可能性を広げた名機として、今もホンダ好きの間で語り継がれている。

そんなB16Aを初めて搭載した車種という理由で、人生初の愛車にインテグラを選んだシブサワさん。
「世代は全然違うんですけど、ハンドルを握ると不思議と落ち着くんですよね(笑)」と、今では手足のように扱い、片道30kmの通勤路をほぼ毎日乗っているそうだ。

購入後に全塗装を行ない、リフレッシュが図られたインテグラ。ボディサイドの『VTEC DOHC』のステッカーなどは当時物をオークションサイトで探し出し、あらためて貼ったものだそうだ。リヤバンパーの『ホンダベルノ』のステッカーは当時を再現したリプロダクションだが、そういった“昭和感”ならぬ“平成感”を彷彿とさせるアイテムを見つけることも、今ではひとつの趣味になっているという。

「ハイマウントストップランプに『INTEGRA』ってロゴが入っているなど、細かいところで意外と凝った作りになっているんですよね。ホイールは、あえて前期型用の純正ホイールに交換して、自分なりにちょっとした代わり映えを楽しんでいます」

古いクルマに興味を持つ同世代の友人は意外と多いそうで、時々集まってはツーリングに出掛けることもあるそう。皆それぞれにカスタマイズを楽しんでいるので、シブサワさんも最初はインテグラをローダウンさせたのだが、サスペンションのゴムブッシュが負荷に耐えかねて損壊してしまい、それをすべて新品に交換するのに予想以上の出費を強いられたため「これからはノーマルのまま現状維持に励みます(笑)」と話す。

ただ、現状維持といっても、やはり部品を探すのに苦労することは多く、ウインドウ周りのゴムモールなどは、海外のショッピングサイトを頼りに輸入したそうだ。
「お世話になっているディーラーからも、部品さえあれば面倒見ますよとは言われているので、そこの部分はひとまず安心していますが、どこまで乗り続けられるのか不安がないわけではないですね」と、少し本音も漏らすシブサワさん。
しかし、イベントなどに行くと、新車当時を知っている世代の人たちから『懐かしいね〜』とか『若いのに大事にしているねえ』と言われることが励みになるそうだ。

「ダッシュボードに置いてあるミニカーは友人が誕生日にプレゼントしてくれたものなんですけど、その下についているのが当時物のレーダー探知機なんです。そういったものをきっかけに、年上の人たちと話題が広がることもあって楽しいですね。自分もその時代に生まれたかったと思うこともあるくらいです(笑)」

ちなみにB16A型のエンジンは、本来は黒いヘッドカバーが標準仕様なのだが、購入した際の納車前整備でタイプR用の赤いヘッドに交換されていたそう。シブサワさんはノーマルの黒の方が好みなだったので、既に部品は購入し、時間がある時に交換しようと考えているそうだ。

「理想を言えば、フルレストアできると最高ですね。同世代でDA型に乗っている人は、今っぽいU.S.カスタムとかローダウンとかを好むと思うんですけど、自分は可能な限り当時の時代感を残したまま、ノーマルを維持していきたいです」
実年齢から考えると、やや老成した価値観を持っている印象のシブサワさん。本人も「周りの人とは違うクルマやモノを欲しくなりがちです(笑)」と自覚があるようだが、インテグラの動態保存を目指す一方で、もうひとつ、別の出会いもあったと打ち明けてくれた。

「実は念願が叶って、CR-Xも購入することができたんです。今はインテグラとCR-Xの2台持ちで、乗る頻度も半々という感じ。インテグラはエンジンがVTECなのに、トランスミッションがATというところに多少後悔もあったので、CR-XはMTにしました!」
おお! ということは、同じB16Aを搭載する2代目CR-Xの「SiR」か、はたまた時代をさらに遡ってZC型エンジンを搭載する初代バラードスポーツCR-Xの「Si」か!? 趣味的な遊びはCR-Xで楽しめるから、インテグラはノーマルを維持しようと、そういうことですか? と聞いてみたら…。

「いえ、どちらでもなくて、2代目CR-Xの1.5リッター車なんです。D15B型というSOHCのエンジンで、キャブレターなんですよね。やっぱりあちこち壊れて、むしろインテグラの方が手間が掛からないくらいで(笑)。キャブレターは年内にオーバーホールに出そうかと思っているんですが、いや〜いつまで続けられるのかなあ」

繰り返しになるが、シブサワさん自身も『人とは違うモノが欲しくなりがち』という自覚をはっきりとお持ちだ。インテグラだって、一般的に人気が高いDC2型やDC5型のタイプRなどを欲しがるのが年齢的にも妥当なのでは? と外野は思いがちだが、シブサワさんの感性は、それとはまた別の『沼』を欲しているのである。

令和の世に平成を求め、憧れのホンダ2台持ちを実現させたシブサワさん。その行く手には困難が待ち受けているかもしれない。だが、他人になんと言われようと、自分はこれが好きだと言い切れることこそ人生の勝利! 果敢に我が道を行く若人に、幸多からんことを。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 埼玉スタジアム2002(埼玉県さいたま市緑区美園2-1)

[GAZOO編集部]

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