アイディア満載! 『アクティトラック』をキッズ&ベビーの古着販売車に仕立て週末のフリマに出没中
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ホンダ・アクティトラック(HA8型)
ホンダ初の4輪車として、1963年に発売されたのが軽規格のトラックとなるT360。日本初のDOHCエンジンを軽トラックに積んで市販化してしまうところがホンダらしい。
その後を受け継いだTN360は、大ヒットしたN360のパワートレインを流用したことで、ミッドシップにエンジンを横置きし、リヤホイールを駆動するという、軽トラというより、スポーツカーを思わせる車体構成で1967年にデビュー。この独特なレイアウトは、TN360の後継として1977年にデビューしたアクティにも採用され、令和となった2021年まで受け継がれていく。
アクティは、なんと4代、43年に渡り生産されたロングセラーモデルとなる。前述の通り、その構造はホンダらしい独特のものだが、熱や騒音の源となるエンジンがキャビンから離れているというメリットがある他、腰高な見た目からは想像できないコーナリング性能の高さなどが評価され、アクティを指名買いするユーザーも少なくない。
しかし、残念なことに2021年に生産が終了。バンはFFとなったN-VANが後継車として登場したが、トラックは後継モデルが開発されず、ホンダ4輪車の礎となった軽トラの歴史に幕を閉じてしまうこととなった。
そんなアクティのファイナルモデルと言える、2019年式のアクティ(HA8型)を3年前に手に入れたのが“ぐるぐる”さんご夫妻だ。
「3年前に、電気工事と水道工事の仕事を開業したんですが、パイプなどの長ものを積めるクルマが必須だったんですよ」というのが、アクティトラックを手に入れた理由であった。
軽トラックは、スズキやダイハツ、スバルからもラインアップされているが、ぐるぐるさんにとっては『軽トラを買う=アクティを買う』だったそう。「私自身ホンダが好きで、自家用車は最終型のインサイトなんですよ」と語る、ぐるぐるさん。
奥さまのご両親もN-BOXに乗っているというので、ぐるぐるさんのホンダ好きが影響したのかと思いきや「それは逆ですね。奥さんの家族が元々ホンダ車に乗っていて、自分がそれに影響された感じですね(笑)」。そんなぐるぐるさんなので、軽トラックを買うとなれば、アクティ一択だったという。
アクティを探す際の条件は、AT車であること。その理由は、奥さまも運転ができるようにというもの。
「アクティのATはタマ数が少ないんですよ。だから『簡単には見つからないかも?』と覚悟していたんですが、中古車サイトで地域指定しないで検索したら、自宅から10km圏内に売り物があったんです。これは『出会い』だろうと、購入することにしました」
こうして手に入れたアクティトラックは、しばらくの間、ぐるぐるさんの本業である電気工事や水道工事の現場への足として活躍した。
そんなぐるぐるさんご夫婦が、古着屋さんを開業したのは2024年の12月。
「ベビー服とキッズ服に絞った古着店を始めてみたんです」この時点では、まだ移動販売という話ではなく、実店舗の開店となる。
「店を知ってもらうために、新聞の折り込みチラシを入れたりしたんですが、思うほど反応がなくて、どうやったら店を多くの人に知ってもらえるかを考えたんです。そして思い付いたのが、古着の移動販売車を作って、こちらから、欲しいと思っている人がいる場所に出向こうというものだったんです」
この狙いは当たりだったようで、アクティを現在の状態にカスタマイズしてからほぼ毎週末、フリーマーケットや地域で主催される催し、ショッピングモールなどの催事に出向いているという。そして実際に古着を見てもらったり、現地でビラを配布したりすることで知名度も上がってきており、実店舗への来店も確実に増えているそうだ。
そんな古着の移動販売車となったアクティは、ぐるぐるさんのアイディアが随所に散りばめられたカスタマイズが施された車両となっている。
「荷台に乗せるボックスの部分は、岐阜にあるLANPSさんというメーカーの既製品です。荷台のアオリをそのまま活かせるところとか、内側からロックできるところが気に入って、これをベースに古着の移動販売車を作ることにしたんです」
このボックスに、商品となる古着や、それを陳列するためのハンガーラックを積んで、フリーマーケットなどの会場に行けば移動販売は可能だが、現場に到着してからの設営や、終了後の撤退に結構手間が掛かってしまう。フリーマーケットに参加したことのある人なら、その面倒臭さがおわかりになるはず。頻繁にフリマに参加している人は、その手間を最小限にしようと、各々が知恵を絞った工夫をしているのだ。
ぐるぐるさんも古着の移動販売を始めるにあたり、そんな面倒を減らそうと、車両製作の段階から独自のアイディアを盛り込んだ。
「ハンガーなどを、全てクルマ側に作り付けにして、ボックスのパネルを開いてハンガーを伸ばせば、商品が陳列された状態になるようにすれば設営も撤収も楽になると思ったんです」
そうして、搭載するボックスの寸法に合わせ、まずは収縮するアームを使い、作り付けのハンガーの設計図を書いたそうだ。
「収縮して寸法内に収まれば、一応用は足りるんですが、走行中にハンガーや商品となる古着が動いてしまわないように、収縮するアームはロックが付いているものを選ばないとダメだな、とか試行錯誤いろいろ考えましたね」
ボックスの取り付けという大掛かりな作業は、近所のクルマ屋さんに依頼したという。
「クルマ屋さんは同い年の方ということもあり、仲良くしてくれて、製作についてもいろいろ相談にのってもらいましたね」と、ぐるぐるさんがおっしゃるように、クルマのプロからのアイドバイスも注入して、移動販売車を形にしていったそうだ。
ボックスを装着する以外は、基本的にぐるぐるさんご自身のDIY。電気工事や水道工事の現場仕事の合間で作り、1ヵ月半ぐらいで完成したそうだ。
ちなみに古着屋さんを始めたからといって、ぐるぐるさんは電気工事や水道工事の仕事を辞めることはなく、現在でも平日はそれぞれの工事現場に赴く日々だそう。ちなみに本来、電気&水道工事用であったアクティを、移動販売車にカスタマイズしてしまったので、もう1台、アクティトラック(こちらはブルーのMT)を手に入れたそうだ。
このように、電気工事のプロでもあるぐるぐるさんは、そのスキルを移動販売車にも活かしている。「夜間の出店もあるので、モバイルバッテリーを搭載して、照明も点灯するようにしてあるんですよ」と話す。
高性能なモバイルバッテリーが普及し、省電力で明るいLED照明もたくさんあるので、電気に詳しくない人でも照明を付けることは可能だが、ぐるぐるさんは使用電力やバッテリー容量をしっかりと計算して装着。10時間は点けたままにできる仕様で製作されている。
バッテリーと電気器具を繋ぐコード類の取り回しも、電気工事のプロならでは。「別に大したことはしてませんけどね(笑)」と、ぐるぐるさんは謙遜するが、収縮式のハンガーでもコードが絡んだり挟まったりしないようにパイプの中を通したり、可動することを想定した取り回しがなされているのだ。もちろん、余った配線がゴチャゴチャになっているなんていう部分も皆無。さすがはその道のプロである。
その他にも、例えばキャビンと荷台の間のリヤウインドウにも面白い工夫が施されていた。
「ペット用のドアを嵌め込んで、キャビンから荷台のモノを取ったりできるようにしてあるんです。軽トラですからキャビンが狭いので、荷物を荷台の方に置きたい。でも例えば移動中に、荷台に置いたカバンの中から財布を出したいなんて時があるじゃないですか? そんな時にこの扉がないと、一度車外に出て、パネルを開けて取り出さないといけないんですけど、これだと車内からサクッと取り出すことができるんですよ」
移動販売車となったアクティは、平日は実店舗前に停めて、看板代わりに使っているという。フリマなどに出向いた時も、店舗で通常営業している時も、ぐるぐるさんのアイディアが詰まったアクティは、古着店の知名度を高めるという目的のためにフル活用されているようだ。
古着の移動販売も軌道に乗せつつあるぐるぐるさんが、今考えているのが、ワンオフで作り上げた、作り付け部分のシステム化だそうだ。
「キッチンカーを作るキットやシステムはたくさんありますが、アパレルとか農産物とか食品の移動販売用とかは見たことがないんですよ。それなら商品にして事業化できないかと思っているんです」
そんなアイディアマンのぐるぐるさんの夢は、これからもアクティと共に進んでいくのであろう。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:道の駅 恋人の聖地 うたづ臨海公園 (香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁4)
[GAZOO編集部]
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