一生乗り続けたい愛機『チェイサー』と共に、止まぬエンジニアリング魂で進化を遂げていく25年目の愛車ライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場である香川県の『道の駅 恋人の聖地 うたづ臨海公園』で取材したトヨタ・チェイサー ツアラーV TRDスポーツ(JZX100型)

    トヨタ・チェイサー ツアラーV TRDスポーツ(JZX100型)


これまで、人生の半分以上を愛車であるトヨタチェイサー ツアラーV TRDスポーツ(JZX100型)と過ごしてきたオーナーの『ヒデノリ』さん。このクルマを購入したのは、ヒデノリさんが大学院を修了する直前だったそうだ。

「大学生の頃に買った人生初のクルマは、日産シルビアQ’s(PS13型)でした。それで2ドアのNA車には乗ることができたので、次は4ドアのターボ車に乗ってみたいなと漠然と考えていたんです。当時はカー用品店でバイトをしていたので、いろんなクルマのエンジンルームを見る機会があったんですけど、スカイラインGT-Rやスープラなどのターボエンジンを見て、いいな〜と思うクルマはいくつもあったんですけど、どれも高くて手が出ませんでした(笑)」

「そんな時に、アルバイト先の先輩がチェイサーを買ったんです。ディスチャージヘッドランプを搭載するなど、先進的なイメージもありましたし、気がついたら自分も“社会人になったらチェイサーを買いたいな”と思うようになっていたんです」

社会人になってから…。そうのんびり構えていたヒデノリさんにとって、寝耳に水の噂が届いたのが大学院を卒業する直前。チェイサーが生産終了(マークIIが100系から110系にフルモデルチェンジをするのに伴いチェイサーは廃止される)という話がまことしやかに囁かれ、『今買わないと絶対に後悔する!』と、居ても立っても居られなくなったそうだ。

そうして、まだ学生の身分ながら72回(6年ローン)を組んで、新車のチェイサー ツアラーV TRDスポーツを購入するに至ったそうだ。

TRDでエアロパーツの架装を行ったコンプリートモデルとして知られているTRDスポーツ。バンパー、サイドスカート、リヤスポイラーがTRD製の専用アイテムになっているのが特徴だ。ヒデノリさんが乗る後期型はフロントバンパーの形状が従来のものから変更され、両サイドのエアロ形状が強調されている。

「学生時代の専攻も、社会人になってから仕事として取り組んでいるものも“エンジニアリング”なんです。そう振り返ってみると、自分はやっぱり『物作り』が好きなんです。無い物は作ってみたいし、今ある物は全部使ってみたい。24時間エンジニアをやっている感じですかね(笑)」

チェイサーの整備書を入手するなどして、基本的には整備も自分で行っているというヒデノリさん。それと同時にカスタマイズも楽しんでおり、チェイサーを購入してからすぐにマフラーを交換して、車高調整式サスペンションを使ってのローダウン化も実現している。

最近取り組んだ力作と語るのがブレーキで、レクサスLS600hのキャリパーを流用して装着している。本来は赤のブレーキキャリパーをシルバーにリペイントし『GAZOO Racing』のステッカーチューンも施した。それに合わせて、5ZIGEN製のプロレーサーZ1というアルミホイールのセンターキャップもGRロゴに意匠替えしている。

『できないことが、できるようになると楽しくて仕方がない』と、エンジニア魂を刺激され、エンジンの燃料マップや点火時期のマップを任意に変更できるAPEXi製の『パワーFC』というコンピュータも導入。「エンジンを壊さない程度にセッティングを楽しんでいます」という。

「将来的に、このチェイサーでやりたいと考えているのが、ターボチャージャーとインタークーラーを交換して450psを達成することですね。JZX100型のチェイサーは、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)でも活躍したイメージがあるので、自分の中では『GT450化計画』と呼んでいます(笑)」

いかにもエンジニアらしいポイントは内装にも現れ、最近のクルマに採用されているような技術をDIYで実現させているところにも注目したい。

そのひとつが、プッシュボタン式のエンジンスターター。本来は鍵を物理的に差し込み、鍵を捻ってエンジンをかける古式ゆかしい始動手順が標準だが、ボタンと電気配線がセットになっているキットを購入して装着。そこだけ見ると急にモダンなクルマに様変わりした印象となる。

また、左右のドアミラーの下とフロントグリル、リヤの4カ所にカメラを装着し、センターコンソールに装備したAndroidの車載ディスプレイに360°カメラ映像を表示できるようにカスタマイズ。これまた最近のクルマのように、駐車する時などに車両周辺の状況をモニターしながら運転できるようになっている。

そしてメーターの照明色も、本来は後期型のツアラー系はアンバー、その他はホワイトが標準なのだが、バックライトを変更してグリーンに発光するようにカスタマイズ。ダッシュボードとピラーに追加したDefi製のメーターと表示色を合わせているのである。

さらに、オーナーでなければ気づかないようなポイントが、本来は純正のデジタル時計が収まっている場所に、バッテリーの電圧計をインストールしているところ。自ら電装系をいじっているので、各機器に異常が無いか等を常時確認できるこの装備は安心にも繋がっているという。

「購入してから25年、ずっと青空駐車です。普段はあまり洗車しないんですけど、やる時はポリッシュをかけてピカピカにし、コーティングも施工するなど徹底してやっています。その甲斐もあって、年式の割にはキレイなのかなと思います」

そうヒデノリさんが語る通り、隅から隅まで磨き上げられているチェイサー。シートなどの内装も年式を忘れさせるくらいクリーンな状態を保っている。

「このチェイサーは一生所有し続けようと思っていますので、今後もメンテナンスと自分流の進化を楽しんでいきたいですね。次に挑戦したいと思っているのがBSD(ブラインド・スポット・ディテクション)の装着です。斜め後ろの死角にいるクルマをレーダーで検知して、インジケータで注意喚起するシステムなんですけど、チェイサーに付いていたら面白いと思いませんか?(笑)」

「所有してから四半世紀が経ちましたけど、色褪せないエクステリアのフォルム、ヤマハがシリンダーヘッドの開発に携わった直列6気筒ターボエンジンの味わいなど、トヨタならではのトータルクオリティは今でも尊敬に値すると思います。正直、修理する箇所も年々増えてきていますが、愛情が薄れることはまったくありません。これからもチェイサーとのカーライフを楽しんでいきたいですね」

エンジニアとしての深い探究心と、プロフェッショナルとしての英知を活かしたカスタム&カーライフ。その意気は、ほとばしるチェイサーへのリスペクトはもちろん、チェイサーとともに歩める至福のカーライフを熱く感じさせるもの。愛機チェイサーを愛おしく語ってくれたその姿勢は、颯爽として清々しい。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 西野キヨシ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:道の駅 恋人の聖地 うたづ臨海公園 (香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁4)

[GAZOO編集部]