走って楽しいクルマを乗り継いで40年。ついに辿り着いた究極のスポーツセダン『マークX GRMN』を堪能する時間
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トヨタ・マークX GRMN(GRX133型)
香川県での出張取材会に、奥様と一緒に参加してくださったオーナーの『タカ』さん。クルマの話をしていると無意識に顔が綻んでしまう、そんな生粋のクルマ好きだ。
19歳の時に購入した人生初の愛車はAE86型のトヨタ・カローラレビンで、先輩に誘われて山越えのドライブを楽しむようにもなった。
「本当に欲しかったクルマは初代のソアラだったんですけど、父から『お前に2000(2リッター車)はまだ早い』って言われまして、仕方なくAE86を買ったんです。もし、あの時にソアラを買っていたら、今とは全然違うクルマ人生を送っていたかもしれませんね」
AE86で走る・曲がる・止まるの基本操作を覚え、決してハイパワーとは言えないクルマのポテンシャルを引き出しながら、クルマを意のままにコントロールすることに無上の喜びを感じるようになっていったタカさん。
そういったAE86乗りは、当時は日本全国のあらゆる峠にいたわけだが、タカさんもその例に漏れず、運転のスキル向上とクルマのバージョンアップに明け暮れる毎日を過ごしていた。
「当時は若かったですから、走っては壊しということを繰り返していました。それからしばらく経って、いい加減おとなしくしようと思って、AE86からGX71型のマークIIに乗り換えたんです。でも、結局買う時にATでは物足りないと、ついついGTツインターボの5速MT車を買ってしまいました(笑)」
大人っぽい優雅なクルマへの興味は常にありながら、どうしても運転が単調なクルマには食指が動かないご様子。クルマに乗っていない時でもハンドル、シフト、ペダルを操作した時のクルマの挙動をイメージし、実際に思った通りの走りができた時の喜びや楽しさを知ってしまった以上、もう元には戻れなかったということだろう。
「GX71の後も、いわゆる『鉄仮面』と呼ばれたR30型の日産スカイライン、ホンダのシビッククーペ、GX90型とJZX110型のマークIIと、その時その時に興味を持ったクルマにはたくさん乗ってきました。どのクルマにもそれぞれ色々な思い出がありますね」
結婚してお子さんも授かったことにより、クルマ選びにも緩やかな変化が表れていたタカさん。GX90型とJZX110型のマークIIはいずれもAT車だったそうだが、それでもJZX110はホイールをBBS製のLMに履き替えるなど、いわゆる吊るしの状態で乗るほど落ち着いていた訳ではなかった。
「子どもは二人とも男の子です。当時はまだ小さかったですけど、BBSを履いたマークIIをカッコ良いと言って、このクルマで出掛けたいとよく言っていましたね。その子らももう25歳と23歳で独立していますから、今は妻と二人でドライブがてら出かけることが増えました」
そんなタカさんの現在の愛車が、トヨタ・マークXの最終型に設定された限定車、マークX GRMN(GRX133型)だ。2015年に100台限定、2019年に350台限定と、二度に渡って発売されたのだが、タカさんの愛車は19年発売の第二弾モデルの方である。
マークX GRMNは、TOYOTA GAZOO Racingが手がけるGRシリーズの頂点に立つモデルとして開発されたスポーツコンバージョンモデル。2GR-FSE型の3.5リッターV6自然吸気エンジンと、専用の6速MTを組み合わせ、FRスポーツセダンならではのパフォーマンスが追求されたモデルであった。
実は19年の新車発売時にディーラーに注文は入れていたそうだが、限定台数を上回るオーダーが入ったため抽選となり、残念ながらその時の抽選には外れてしまったのだという。だが、それから3年後、たまたま中古車と巡り合い、念願叶って購入に至った。
「どうしても『本物』に乗ってみたかったんです。トヨタが手掛けたメーカーチューニングのクルマに。クルマ弄りは自分でも散々やってきましたけど、メーカーが本気を出して取り組んだFRセダンのハイパフォーマンスがどんなものなのか、生きているうちに是非とも味わいたかった」
マークX GRMNが搭載するV6エンジンは、トランスミッションとのマッチングを図るために出力制御特性に専用のチューニングが施されている。また、快適なシフトフィーリングを得るためにファイナルギヤ比を変更したり、各操作系のチューニングも実施された。
ボディには全252カ所に及ぶスポット溶接打点が追加され、剛性をアップ。サスペンションには新開発のショックアブソーバーが採用され、EPS(電動パワーステアリング)にも専用のチューニングが施されている。
単にエンジンの出力やレスポンスが高いというだけでなく、操作した時の感動や高揚感まで追求された究極のマークXに、タカさんも大満足である。
「これまで色んなクルマに乗ってきましたけど、マークX GRMNの走りには本当にシビれました。速いのはもちろんですけど、コントロールしていて楽しいですし、まさに意のまま、思いのままというイメージ。本当に買って良かったと思っています」
エクステリアにも専用装備を多数備えるマークX GRMN。フロントバンパーにはダークメッキ加飾のモールディング、リヤバンパーには大型ディフューザーとサイドガーニッシュが備わる。
マフラーも本来は専用の4本出しマフラーが備わるのだが、そこは数々のカスタマイズを楽しんできたタカさん。HKS製のマフラーに交換して、さらに迫力のあるリヤビューを実現している。
また、ホイールもマークX GRMNは標準でBBS製の鍛造ホイールを装備しているのだが、同じBBSがリリースしている超超ジュラルミン鍛造ホイールのRI-Dというモデルに変更。フロントブレーキはGR専用となるホワイト塗装の対向4ポットキャリパーと2ピースローターが組み合わせられている。
インテリアもカーボン調のインパネや280km/hスケールメーターなど、専用装備が備わり、小径のステアリングホイールにはスポーティな雰囲気を高める赤いハンドルカバーを縫い付けた。フロントシートも本来はウルトラスエードの専用スポーツシートが備わるのだが、タカさんは運転席にレカロ製のバケットシートを装着している。
奥様にも話を伺うと「私もマークX GRMNの見た目は好きです。黒のボディカラーも締まった印象でカッコ良いと思います。子育てから手が離れて、少し自由な時間ができてからは、よく一緒にランチを食べにドライブに出かけます。友人から、あそこのレストランが美味しかったといった話を聞くと、じゃあ今度はそこに行ってみようかという感じで。多少遠くてもフラッと出かけちゃいますね(笑)」
はい、喜んで! とばかりに、奥様の行きたい場所へ、いつでも連れていってくれるタカさん。ただ、その半分はマークX GRMNの走りを楽しみたいから、というのが理由であろうことは、初対面のわれわれ取材班でもうっすら勘づいた。なので、長年連れそう奥様には先刻承知のことであろう。
「私も来年には還暦になりますから、もういい加減に派手なカスタマイズはせず、シンプルにカッコ良く乗っていきたいですね。若い頃からのクルマ趣味に理解を示してくれる妻にも感謝ですね。これからもお互いを労わりながら、楽しく時間とカーライフを過ごしていきたいと思います」
『サーキットはもちろん、日常の買い物でも熟成されたリズム感のある乗り味を追求した』とは、GRMN開発ドライバーの勝又義信氏の弁だが、タカさん夫妻にとっては、まさに我が意を得たりという感じだろう。
トヨタが生み出した究極のFRスポーツセダン、マークX GRMNは、仲良し夫婦にとって掛け替えのない移動空間である。
(文: 小林秀雄 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:道の駅 恋人の聖地 うたづ臨海公園 (香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁4)
[GAZOO編集部]
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