「愛車選びは“ビビッ”と来るか否かが決め手」スカイラインGT-Rとの出会いは、たまたま通りかかった中古車ショップ
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日産・スカイラインGT-R(BNR32型)
ボディカラーやグレード、オプション装備など、希望の仕様を自由に注文できる新車とは違い“出会いのタイミング”が大きなポイントとなるのが中古車選び。ましてや、その対象が20〜30年前の世代のクルマともなれば、出会いの機会自体も限られてくるもの。
話は今から7年ほど前に遡るが、そんな数少ないチャンスを見逃すことなく、憧れのクルマ、日産・スカイラインGT-R(BNR32型)を手に入れたのが、熊本県在住の『きーしゃん』さんである。
「若い頃はドリフトにハマっていて、シルビアのS13型と、PS13型を2台乗り継ぎました。それからしばらくして、ミッションをマニュアルに換装したクレスタ・ルラーンG(JZX100)に乗り換えてサーキットを走るようになったんですけど、軽量化を一切していなかったこともあって、思ったほど速くなかったんです。そこでタービンやカムシャフト交換など、エンジンのチューニングを施して、さぁこれから楽しむぞ! と、まずは慣らし運転を始めました」
「その慣らし運転からの帰り道に、たまたま通りかかった中古車店で見つけたのがこのスカイラインGT-R(BNR32型)でした。まだ価格ボードも掲げられてない状態で、お店のスタッフさんに“これは売り物ですか?”と尋ねたら、『売り物です』とおっしゃるので、“じゃ、買います”と(笑)」
せっかく慣らしを終えたばかりの愛車をアッサリ手放し、まるでスーパーで特売品の野菜を買うかのようにGT-Rを手に入れるという冗談のような話だが、紛うことなき事実。とは言っても、きーしゃんさんは気まぐれ的に名車中の名車であるGT-Rを選んだ訳では無い。
スカイラインGT-Rは、中学生の頃から憧れの存在で、中でもお気に入りだったのが、当時人気を博したグループAレースで活躍していたアドバンカラーに彩られた『STPタイサンGT-R』。タイトルこそ獲れなかったものの、高橋国光/土屋圭市の名ドライバーがコンビとなって展開されるアグレッシブな走りは、多くのファンを魅了。きーしゃんさんもその一人で『いつか大人になったらGT-Rを』という気持ちがずっと心の中にあった。
「過去にも何度か欲しいと思ったこともありますが、その頃は中古車でも高価だった時代で、どうせ買えないだろうと諦めていたんです。時は流れて、その中古車店で見つけたクルマは委託販売車で、店員さんが売り主さんに条件交渉を持ちかけてくれて、少し値引きをしてもらえたので即決しました。その時の相場は、現在のように爆上がりする前だったので、そこそこの金額で手に入れることができたのは本当にラッキーでしたね」
そうは言ったが、当時の最先端メカニズムを凝縮した本格的スポーツカーともなれば、過去に手荒く扱われていた可能性は否めないところ。購入を決める前にひと通りチェックは行なっていたものの、改めて走らせてみると修理が必要と思われる点もアチコチに出てきた。そこで、これから長く乗り続けるためには、まずコンディションの回復が先決ということで、北九州のGT-R専門店『ガレージアクティブ』に作業を依頼することにした。
「八代市と北九州って結構な距離があるけど、お店の社長は海外にも頻繁に出掛けている方で『九州なんてどこでも近いモノ。何かあったら駆けつけますよ』とも言ってくださったので、安心してお任せすることができました。エンジンはヘッド周りのオーバーホールを行ない、走行14万kmでガタが出ていた純正タービンはHKS製のGT-SSに。カムシャフトもHKSのハイリフトタイプに変更して、パワー的には500psくらい出ていると思います。腐食が見られたバルクヘッドも鈑金修理してもらいました」
こうして、GT-R専門店による入念なリフレッシュと、プラスαのチューニングにより本来の性能が復活。
天気の良い休日には阿蘇、瀬の本高原へのドライブに出掛ける他、静岡県の富士スピードウェイで行なわれるGT-Rオンリーのイベント『R’sミーティング』にも自走で参加するなど、スカイラインGT-R、そしてRB26DETTエンジンのパフォーマンスも存分に楽しんでいるおられる様子だ。
「そうそう、バンパー越しに見えるHPI製のインタークーラーは、2019年のR’sミーティングでのじゃんけん大会でもらった景品なんですよ(笑)。チューニングもメンテナンスもしっかりできているんですが、まだこのクルマではサーキットを走ったことが無いんです。いつか機会があれば走らせてみたいですね」
きーしゃんさんのお仕事は、八代市にあるカフェ『ゼペット』のオーナー。時には近県のGT-R仲間が訪れたり、バイク乗りにも人気だが、いわゆる観光スポットの名物店的な立地環境では無いため、普段からドタバタ混み合うようなことはないという。
「その方が良いんですよ。来られたお客様にゆっくりと過ごして頂ける環境を提供できれば」と、マイペースに徹している。ちなみに、お店のおすすめメニューは、ガーリックライスの上にカットしたステーキが乗った“ステーキライス”や、豊かな泡立ちが特徴の“ドラフトコーヒー”等だそうだが「なぜか、ほとんどのお客様はチキン南蛮を食べて行かれます」とのことだ(笑)。
さて、話をクルマに戻そう。前述した通り、エンジン部分については吸排気系からECUまで、広範囲に渡って手が加えられているきーしゃんさんのGT-R。一方、外観での変更点と言えば、リム幅10.5JのRAYS製のボルクレーシング21Cホイールを履いている程度。至ってシンプルに徹した、シックな佇まいを見せている。
「R32GT-Rってノーマルのカタチで完成していると思っているんです。もちろん好みは人それぞれあるでしょうけど、僕はエアロパーツが苦手で、定番とされているニスモのサイドステップでも着けたくはないかな。強いて変更した部分と言えば、アクティブ製の小型リヤスポイラーを追加している程度です。車高も現状がベストで、これ以上下げるとカッコ悪くなっちゃう。過去の持ち主さんは結構低めの車高で乗っていたようで、フロア周りの状態は酷かったですね。ちなみに僕のGT-Rは、リヤ斜めから見たアングルが好きです」
ノーマルが完成形というこだわりはインテリアにも見受けられる。レカロ製シートや赤いスウェード調素材で張り替えられたドアの内張りなど、経年劣化部分を補うための変更が加えられている中、さりげない存在感を放っているのがGT-R純正のステアリング。多少の擦れや傷も見受けられるが、握り易さやサイズ感など、これを超えるステアリングはなかなか見つけられないという。
「僕のクルマの買い方って、いつもシンプルなんです。いくつかお店を見て回ることもあるけど、いくら程度が良さそうな物件でも直感的にビビッと来ないと買いません。不思議とそのやり方で失敗したことは、これまでも無いですね。GT-Rもあのタイミングを逃していたら買えてなかっただろうし、そのままクレスタに乗り続けていたと思います。(購入の)決め方があまりにも唐突だったので、嫁さんには怒られましたが、今では“あの時、買っといて良かったね”と言ってくれています。やっぱり、家族の理解は大事ですネ」
クルマ選びはいつも“直感が決め手”だと語るきーしゃんさん。それだけに、この先また別のクルマにビビッと来る瞬間があるのでは? という懸念もあるが、R32GT-Rに関しては購入7年目を迎えた今も愛着は日々深まるばかり。
今後は、ブレーキやECUのセッティングなど、さらなるアップグレードを計画中とのこと。目移りへの心配は、まったくの余計なお世話だったと言えそうだ。
(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三角西港(浦島屋、旧三角簡易裁判所ほか)(熊本県宇城市三角町三角浦)
[GAZOO編集部]
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