GRヤリスに設計者の魂を感じ、早く乗りたいと待ち望むこと3年「やっぱり最高でした!」
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トヨタ・GRヤリス(GXPA16型)
「小学生の頃は、ディーラーに入り浸っていた」と笑いながら教えてくれた、GRヤリス(GXPA16)のオーナーである『ブルーなおじん』さん。なんでも、当時のディーラーには、ペラペラのカタログと、厚さ1cmはありそうなしっかりとした紙で作られた豪華なカタログがあったそうで、後者をもらいに足を運んだというのが始まりだったと話してくれた。
「なんだ坊主、これが欲しいのか?」と、ディーラーマンが快く渡してくれたカタログを、隅から隅まで熟読した。その結果、パーツ名やその役割、グレードやオプション、価格帯などが自然と頭に入ってしまったということだ。
「私は、少々めんどくさい子供だったと思います。ボンネットが空いているとサッと駆け寄り、この部品の名前は? 役割は? エンジンにどういう作用を及ぼす? など、ディーラーマンを質問攻めにしていましたから。それくらい、私の頭の中はクルマでいっぱいでした。まぁ、それは今もですがね…(笑)」
ディーラーに顔を出すと「今日は何だい?」と、ディーラーマンがお菓子を片手にヤレヤレといった表情をしながら寄ってきてくれる。そんな光景が放課後のお決まりだったと、頭をかいた。
その後も、クルマに対する探究心は止まることを知らず、カタログはもちろん自動車専門誌なども読み漁るようになる。その頃には、家の前を通るクルマのエンジン音を聞いただけで車種が当てられるようになっていったそうだ。また、ディーラー店長が「免許を取ったらうちにアルバイトにくるか? 就職するか?」と、ヘッドハンティングをしてくるようになったと、自慢気に話した。
そんなブルーなおじんさんの愛車は、GRヤリス RZハイパフォーマンス。このクルマが発表された瞬間に、久しぶりに“乗りたい!”と胸を揺さぶられた1台だったという。
「スペックをチェックすると、シャーシの設計やエンジン性能など、小さい排気量をものともしない、しっかりと走れそうなクルマだなと、パソコンにへばりついていました。見れば見るほどほどワクワクしてきて、なんて尖っているクルマなんだ! トヨタが本気を出してきたな! って、乗ってもいないのに嬉しくなったんです。乗ってもないのに…(笑)」
おそらく、自分のように感じているクルマ好きは沢山いるはずだと予想し、実車を見ることなく発表と同時に抽選に申し込んだそうだ。抽選ページには、なぜこのクルマに乗りたいと思ったのか? という旨の質問があったそうで、自分がクルマ好きになった経緯から始まり、今までの生い立ち、クルマに対する熱い思いを、これでもかというくらいびっしり書いたという。
『後にも先にも、あんなに自分をアピールしたのは初めてだった』と、自分に呆れたような顔をしていた。しかし、そんな頑張りとは裏腹に、抽選に外れてしまうことに…。納得できずに市内のGRガレージを3軒ほど回ったそうだが「こればっかりは…」と、どのディーラーマンも答えは同じだったそうだ。
「それでも、どうしても乗りたかったんです。トヨタのクルマですから、当然生産ラインで組み立てられているのですが、どこか“手作りのようなこだわり”を細部に渡って感じていたんです」
高校を卒業したブルーなおじんさんは、自動車メーカーに就職したあと、設計や製造について何ヵ月も勉強し、クルマを作る側としての社会人となった。何年にも渡ってそういった仕事をしていると、いつの間にかクルマが“好きなこと”から“仕事”へと変わっていくのを感じたが、それでもクルマを作り続けたという。
「その昔の加工技術や精度は今ほどではなく、他の部品と組み合わせた際にバラツキがあったりして、その帳尻を合わせるのも仕事でした」と、懐かしそうに目を細めて笑った。それから数十年…技術の進歩に伴って、そういった部品の公差は無くなっていき生産性が上がっていく。そして、その反面、面白いクルマが登場していないことに気付いたそうだ。
そう感じている最中でのGRヤリス RZハイパフォーマンスの登場だったからこそ「余計に期待してしまったのかもしれない」とおっしゃっていた。それから片想いすること3年、やっと納車の順番が回ってきたそうだ。
ディーラーに停まっている姿を遠目から眺めていると、スポーティーではあるものの、そこら辺でも見かけるような外観と感じたそうだ。しかし、乗ってみると血が湧き立つほどドライバーに語りかけてくるクルマであったという。
「まず、一般車では考えられないほどのボディ剛性と俊敏さに驚きました。阿蘇や天草辺りにドライブに行ったのですが、くねくねしたワインディングも安定して走ってくれるから、ついついアクセルを踏みたくなっちゃうくらい(笑)。乗せられているんじゃなくて、自分で操って、なおかつクルマと一緒に走っているという感じがするんですよね」
「エンジン出力は300psもあるから、どんな道でも思ったスピードで行けるし、その動力性能の高さにも感動しましたよ。僕は愛車のことを“1/1プラモデル”と思っているから、基本的に購入後は自分の好きなようにカスタムをするんです。だけど、このGRヤリスだけは、それをしなかった。なぜなら、もう現時点で完成されているクルマと感じたからです」
ということだったが、フロント周りのグリルメッシュを指摘すると、そういえば…というような表情をして筆者に説明してくれた。
木枯らしの季節になると枯葉、夏になると昆虫類がラジエーターに挟まって掃除が大変になるため、バンパーを取り外しグリル部分に金網を貼っているのだそうだ。しかし、これはクルマを綺麗に保つためのメンテナンスのようなもので“イジる”には入らないとのこと。コンライト(オートライト)の感度調整もその類で、ヘッドライトがそんなに暗くないのに点灯するのが自分的に気になってしまうからだという。なるほど、と納得しかけていると「それと…」と、イタズラがばれた子供のような顔をして、次々に“イジった箇所”を教えてくれた。
「あとは、剛性を上げるためにフロントとリヤにタワーバーを取り付けて、リヤの挙動を少し落ち着かせるためにリヤバンパー内にウエイトを装着、ついでに、コーナリングの安定感向上を狙ってフロントにも付けて。あとは、あっ! これが最後! 最後だから!」と、懐疑的になっていた筆者の顔(笑)を見て、捲し立てるように教えてくれたのは、ボディ剛性向上のために、フロントメンバーブレースを取り付けたことだった。
「本当はもっと手を加えたいところだけど、あくまでも自分好みに調節する程度に留めている」との一言を添えて。
ブルーなおじんさんは、こういった取り付け作業をするのが大好きだと笑った。剛性が上がるとサスペンションが良く動くようになって、そのクルマの魅力を最大限活かした走りが可能となる。そうすることでコーナリングを楽しめるようになり、それがクルマに負担をかけずにできたなら、カーライフはどんどん楽しいものになるのだという。
ただ、市販のカスタムパーツだと満足いかないこともあるそうで、そういった場合は、なんと自分で作ることもあるそうだ。あくまでも自己満足のためにだが、そういうことを考えている時間もかけがえのないもので、この先もずっと変わらないと、この日一番の笑顔を見せてくれた。
「こうして取材を受けて改めて感じたのは、やはり、クルマは僕にとって無くてはならないもので、生活と人生の一部ということなんですよ。いつかは免許返納をする時がくると思いますが、迷惑をかけない程度に、できればギリギリまで乗っていたいと思います」
そんなブルーなおじんさんは、現在オーナーズクラブイベントのお手伝いをしているという。イベントを手伝うキッカケとなったのは、熊本から100kmの場所にあるランチが美味しいというお店に行き、写真を撮ってSNSにアップしたら『自分も行ってみたい』という反響があったからだという。
「気になっていたけど、遠いからいくのを躊躇していたとか、行くなら誘って欲しかったなどの声を頂いて、意外と一歩を踏み出せない人が多いんだなと気付いたんです。それなら、多くの方とその楽しさを共有したいと思って、オーナーズクラブのお手伝いを始めました。ドライブスポットもですが、おそらく、人よりは少〜しだけ詳しいカスタム方法なんかも、分かる範囲でアドバイスしていきたいと思ったんです」
「人と違うクルマに乗ることに喜びを感じる人、速く走りたい人、ノーマルのまま大事に乗っていきたい人など、カーライフは人それぞれ。ひとつ共通点があるとすれば、それはみんなクルマが好きだということです。そんな人達がもっとカーライフを楽しめるように、これからも私らしく、クルマも人も見守っていきたい」と、優しく穏やかな表情で語って下さった。
(文: 矢田部明子 / 撮影:平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三池炭鉱 万田坑(熊本県荒尾市原万田200-2)
[GAZOO編集部]
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